第15話 背後に潜む者
「さあて、そろそろ屋上行かないとな」
破部ヤマトが、ニカと約束した屋上へ向かうため職員室を出て、1階の階段を登ろうとした。
「破部先生」
「ん?」
5人の不良グループが破部の前に立ちはばかった。
破部
「……」
第二体育館、柔道部更衣室ー
室内は薄暗く、窓からの西日がその部屋を照らす。
鬼竜くんが近づいてきている。
私は、背を床に、倒れたまま、逃げ場がない…。
ドアの鍵はかけられている…。
開けるには鬼竜くんの向こう側に行かないと開けられない。
鬼竜くんの目が、何か変…。怖い…。
「鬼竜くん!どうしたの?!気をしっかりと持って!」
「うぐぅぅ…そのまま、じっとしてろ」
どんどん近づいてくる。
私は倒れたまま、両肘を後ろについて、後ろに下がった。
「無駄だよ。ここには俺とニカちゃんしかいない…。道場も閉めてあるから、今日はもう誰も来ない。離れの第二体育館じゃあ、声も届かねぇだろうよ」
「本当にこんなことしたいの?!鬼竜くん!!そんな人なの?!!気を取り戻して!!」
「!…うおおおおお!うるせぇ!俺は!俺はぁ!」
鬼竜くんが急に頭を抱えて座り込んだ。
「鬼竜くん!気をしっかり持って!!」
「ぐぅ…うぐうう〜!!うおおお!」
突然、鬼竜くんが襲いかかってきた。
「破部先生!!!助けて!!!」
「ふん!破部かぁアイツは来ねぇよ…。俺の手下どもがいまごろボコってっからな。助けてなんて誰も来ねぇ…。破部、あの野郎、簡単に…ニカちゃんと仲良く歩きやがって…!」
私の肩を抑えつけながら鬼竜くんの顔が怒りで満ちてきている。
「はぁ…はぁ…どうやったって、ニカちゃんは、俺のものにはならねぇ….わかってるんだ。だから、だから…もう…こうするしかねぇえんだよ!!」
バリッ!
「……!!ぐわぁ!」
その時、急に一瞬声をあげ、鬼竜くんが私の上でそのまま気を失って動かなくなった。
その後ろには、山威先生が立っていた。
「山威先生!」
破部先生じゃない、でも、助かった…。もうダメかと思った。
「先生…助けに来てくれたんですね……」
「大変だったなぁ暮井。そんな図体でかい野郎に乗っかられて」
山威先生の手には…スタンガン??
「山威先生、もしかしてそれで…」
「ああ、これな、まあそんなとこか?使い慣れてねーが、こうなるのことはお試し済みだ。なあ鬼竜、ご苦労様さん、ちょっとどいてろ」
山威は、ニカから気絶している鬼竜をどかした。
「ありがとう…ございます…。もうダメかと思いました…」
山威先生は、スマホをいじったあと、その辺にある柔道着の帯で、気絶してる鬼竜くんの手足を、きつく縛りだした。
「何してるんですか?」
「しばらく目ぇ覚めねぇだろうけど、一応な」
「一応?」
「コイツは元々柔道部だったんだが、皮肉なもんだ。…これでのよしと。さあ、続き始めようか。鬼竜、あとは代わりにオレがやっといてやるからな。みっともなかったなぁ鬼竜。ストゥーピットの影響とはいえ、ダッセーな、ぶわっはっはっ笑」
「え?!ストゥーピット?!何を…言ってるんですか…?」
ドアに目をやると、まだ鍵が掛かっている。
「先生…もしかして…」
「ああ、いまごろ気づいたか?はじめっからこの部屋にいたよ俺は。あのロッカーに隠れて。コイツ、自分のスマホ仕掛けて動画撮ってやがったから笑。襲いかかるの待ってたんだ」
「な、何のために…?」
「決まってんだろ、コイツが暮井を襲ったことにするためにな」
「え?何を…」
「助けにきたとでも思ったか?くっくっく、さあ続きを楽しませてもらうぜ」
「そんなっ…」
私はとっさに立ち上がろうとした。
「おっと、動くな。鬼竜の二の舞いになりたくなかったらな」
山威は鬼竜くんを一撃で気絶させたスタンガンみたいなものを差し出してきた。
「なんで?なんでこんな真似を…」
「コイツと同じだよ」
「同じ?」
「わかんだろ、もう我慢できねぇ、おしゃべりは終わりだ」
山威が襲いかかってきた。
バァン!!!
出入り口のドアが勢いよく開いた。
山威
「何だ?!」
「すまん。遅くなったな〜暮井」
ニカ
「破部先生!!」
山威
「破部!なぜ?!」
破部
「そいつの手下って奴が、この場所教えてくれてな。まあ、もうちょい前に登場できたんだが。お前らの本性暴くのと、証拠が欲しくてな」
山威
「証拠?」
破部
「お前がストゥーピット使ったことは明白になった。もっと詳しく聞かせてもらおうか」
山威
「くそ!何者なんだ、お前は」
破部
「アンビヴァレントを阻止する者だ」
山威
「…くっ、こんなことになるとは」
破部
「どこまで知っている?山威。お前はアンヴィバレントの何だ?」
山威
「そ、そんなことより…悪かった…こんなつもりじゃなかったんだ」
山威が、ズボンの後ろポケットから、あの武器を取り出したのが見えた。
ニカ
「先生!危ない!」
山威が武器を握ると、少しだけ紫色の光が放出した。すかさず、破部先生の胸をめがけて突き出した。
破部
「ほう」
ギィン!
破部先生の体と接触した武器からオレンジ色の光が飛び散り、山威の武器は吹き飛んだ。
山威
「うおあ!何だ?!」
破部
「それをまだ使い慣れてないところを見ると、工作員でもなさそうだな。話してもらおうか」
山威
「……は、話して、お、俺をどうする気だ?」
破部
「お前がアンビヴァレント側なのか、それとも個人的な企みだったのか、それ次第でどうするかは決める」
山威
「と、とにかく!勘弁してくれ…こんなこと公にさらされたら、おしまいだ…」
破部
「鬼竜を犠牲にしようとしておいて、教育者のするとか?」
山威
「すまない…。どうかしてた…。でも、お願いだ!このことはバラさないでくれ!頼む!頼むよ!」
山威は、床に頭をつけて土下座している。
破部
「俺じゃねぇ、土下座すらなら、まずは暮井にだろ」
山威
「あ、ああ、そうだなっ。く、暮井!すまない!どうかしてた、許してくれ!」
ニカ
「…………。全部、話してほしい」
山威
「話す!話すから、どうか、許してくれ」
破部
「許されない行為だってこと、わかってんのか?それに、まだ救わねぇといけない生徒がいるだろ。もうほぼわかってる。山威、お前が生徒たちにストゥーピットを寄生させたんだろ。ストゥーピット寄生しているのは、渡瀬ルカ、鈴家アオイ、そして、そこにいる鬼竜。この3人。違うか?」
山威
「……そうだ」
破部
「なぜだ。なぜお前がストゥーピットを所持していて、なぜコイツらに寄生させた」
山威
「……頼まれたんだ」
破部
「頼まれた?誰に?」
山威
「ある男に」
破部
「ある男?誰にだ」
山威
「夜頭ノイドという若者だ」
ニカ
「え?!夜頭くん!?」
破部
「夜頭ノイド…。アンビヴァレント社の社長の息子だな」
山威
「知らない…そこまで知らないんだ」
破部
「順を追って説明しろ」
山威
「……」
破部
「……」
破部ヤマトは、目を瞑り一息つくと、部屋の電気をつけた。
薄暗い更衣室の光景が、ハッキリと現れた。
破部
「情けない…光景だ…」
破部は山威に近づいた。
山威は一歩後ろに下がった。
破部は山威の横を通り過ぎニカの前にしゃがんだ。
破部
「入るの遅くなってすまなかった。立てるか?」
ニカ
「はい…」
破部は立ち上がり、山威の方に振り返った。
破部
「山威先生、あなたがアンビヴァレント工作員じゃないとしたら、たぶん、個人的にアンビヴァレントの製品に手を出したってことですよね?そうだとしたら、俺はあなたも救いたい」
山威
「破部先生…あなたは一体…」
破部
「あなたも教育を志して教師になったはずだ。その心を思い出してください」
山威
「………わかった…」
山威は全身の力が抜けたかのように横にあるベンチに座り込んだ。
山威
「正確には…頼まれたことは、暮井を追い詰めること」
ニカ
「私を?!」
破部
「暮井、夜頭ノイドとは知り合いか?」
ニカ
「中学の時の同級生…です」
破部
「わりと近い位置にいるな」
ニカ
「そう…ですね…」
破部
「で、山威先生、夜頭ノイドとは?どこで知り合いました?」
山威
「そうだな…。彼との出会いから話すよ…」
山威は膝に両肘をつき、手を組み、少しだけ顔をあげながら、話し始めた。
山威
「彼に会ったのは、ちょうど文化祭準備が始まる頃だった…」




