↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
12/19

第12話 破部ヤマト登場

月光ピエロー


あの覆面の男と初めて会った路地。

なぜまた私はここに足を運んだのか、わからない。

でも私は、再びこの路地に、自らの意思で来た。思い出したくない場所。登下校の時も、わざわざここを通らないように迂回していた。

ここに来ることが、そのことに向き合う第一歩な気がした。


そこに、謎の男がいた。


背は高めで、茶色がかったセミロングの髪の毛、分けた前髪が少し両目にかかっている。黒のズボンに、黒のロングパーカー。パーカーのポケットに両手を入れて立っている。


私の記憶の中には、この人はいない。と思う。

知らない男性がなぜ、私の名前を…


「そ、そうですが、なぜ私の名前を?」


「一生懸命覚えたのよ。顔と名前を」


「どういうこと?」


「君、櫻丘第一高校の生徒さんだよね?」


「そうですが…」


「こんな時間に、ここにいるってことは、サボり?」


「もしかして、補導の人ですか?」


「補導?あー、まあ、注意、指導にはなるかな」


「学校に報告されちゃうんですか?」


「明日会ってたら、したかな」


「明日?」


「そう、明日から櫻丘第一高校の教師だからね、オレ」


「え??明日から??ホントですか?」


「ホント、ホント。ほら教職員証」


「櫻丘第一高等学校 教員。2年生副担任…副担任?…は、ぶ?ヤマト」


「そう、破部ヤマトだ。2年生の副担任になるから、よろしくね2年8組、暮井ニカさん」


「教職員証偽物じゃないんですか?」


「疑うねぇ〜、ま、明日になればわかるさ。たがら今日はまだ君の副担任でも何でもない。だから別に報告しないよ笑。ま、明日だったとしても見逃してると思うけどね、オレ不真面目だから笑」


「副担任…?そんなのあるんですか?…サボりといえば、サボりですが、一週間休んでて」


「一週間も?長いね。病気?」


「い、いえ、私……いや、何で今日会ったばっかりの人に話さなきゃなんないんですか」


「はっはっは。まあ、いいよ。信じられないよな、明日から自分の学校の副担任なんて」


というと、私の顔を覗きこんできた。

「何か、事情があるんだろ?」


「…!」


よく見ると目が澄んでいて、まつ毛が長い…

綺麗な目…

迂闊にも私は顔が赤くなるのを感じ、思わず目を背け、半歩、後ろにさがった。


「明日から学校に来な。大丈夫、君は君らしく、今のままでいい。明日からはオレは君の副担任。1人で抱え込むことはない。だから、明日の朝、勇気を出して一歩踏み出して学校に来な」


「え?」


「じゃあ。また明日、教室で会おう」


そういうと、破部ヤマトと名乗る男は背中越しに手を振って去っていった。



「破部ヤマト…聞いたことあるような、無いような…」


君は君らしく、今のままでいい。

1人で抱え込むことはない。


その言葉が、妙に心に刺さって。灯火となって、じんわりと胸に広がっていくのを感じた。




帰宅すると、母が待っていた。


「どこへ行ったかと思った。ニカ、大丈夫?」


こんな私を責めたてなりしない母が、私は好きだった。

孤独なんかじゃない。

私が心を閉ざしてただけだった。


私より苦しい人なんていくらでもいる。

それはわかっている。

それでも苦しいものは苦しい。



君は君らしく、今のままでいい…か。



「ごめんね、お母さん。気晴らしに散歩してた」


「そう、久しぶりに外へ出たわね」


「…お母さん、私、明日から学校行くね」


母は、驚いたか驚いてないかわからないくらい少し目を大きくした。


「ニカがそう思えたのなら、行ってきなさい。ニカの帰る場所はここにあるから」


と、優しく微笑んでくれた。


「うん!ありがとう!お母さん」


久しぶりに前を向けた気がする。心が前を向く。新しい明日を見つめだす。向き合いたくないことへ一歩、足を歩み始めたら、思いもよらない方向へ転がりだした。





明日、学校へ行くと思うと夜が眠れなかった。


神村くんや、小坂さん、元気かな。

久しぶりに行っても、声かけてくれるかな。


教室の皆を思い出すと、学校へ行く気持ちが不安でかき消されそうになる。



1人で抱え込むな。


勇気を出して、一歩踏み出したみな。



破部ヤマト、先生…か

本当に来るだろうか。




気がついたら寝ていて、朝を迎えた。



いつもより早く目が覚め、早めに支度をした。

  




「いってらっしゃいね」


「行ってきます!」







学校。



久しぶりの登校もあり、ジロジロ見られる。



私の、大きな壁はクラスの皆の反応。

でも、どんな反応でもいい。

無理にクラスに溶け込むのはやめよう。



教室へ入った。


皆が、驚くようにこちらを見る。


私は特に挨拶もせずに、自分の席に向かった。


「おはようございます!」


小坂さんが、横の席から立ち上がって、私の席まで来てくれた。


「おはよう」


私も笑顔で答えた。


「大丈夫ですか?ずっと心配してました」


小坂さんは、私にずっと敬語だ。


「大丈夫だよ、ありがとう、心配かけてごめんね」


神村くんが教室に入ってきた。


「暮井さん!?来たんだね!」


神村くんも私の席まで駆け寄って来てくれた。


「どうしたかと思ったよ。まさかずっとこのまま来ないのかって」


「ごめんね、心配かけて。色々ありがとうね、神村くん」


「ありがとうって言われるほど何もしてないけどね笑」



そこに、山威先生が入ってきた。



その後ろに…男性の姿が…

破部ヤマトが続いて入って来た。


ホントに、来た…。

ホントだったんだ…。


教室がざわつく。


昨日とは違う。真っ青のワイシャツに黒のスーツを着ている。ネクタイはせず、第一ボタンだけ開けている、割とラフな着こなしで、教壇の前に山威先生と並んで立つ。


破部ヤマトは、真顔で前を見ている。


山威先生

「え〜、こちら本日から櫻丘第一高校の2年生の副担任に就任することになった。破部ヤマト先生だ。私が破部先生の案内や相談者となって、一緒にやっていくことになったので、紹介する」


みんな、驚きの様子だった。


山威先生

「では、破部先生、自己紹介お願いします」


破部先生は、後ろを向いて黒板に自分の名前を大きく、書き出した。


破部ヤマト

「こういうのベタすぎるよなぁ〜。破部ヤマト。はぶ、やまとって読む。25歳だ。授業の担当は山威先生と同じ歴史だ。まあ、全教科できるから全教師のフォローもできます。勉強も得意だし、スポーツも得意だ。何でもできるのが売りです。とりあえず、今日からよろしく!」


山威先生

「なんか軽いですね。自慢も入ってます笑?」


破部ヤマト

「いやいや、そんな、謙虚がモットーですから笑」


生徒

「全然、謙虚に見えませーん笑」

「わはははは」


女子生徒

「破部先生は彼女いるんですかー?!」


破部ヤマト

「いきなりそれ聞く?いないよ。寂しいもんで」


違う女子生徒

「えー、すごいイケメンなのに?」


破部ヤマト

「ずいぶん軽い始まりだなぁ。まあ、普段はこんなスーツ着てなくて、今日は最初だからな、こんな格好で来てみたけど、これからはスーツでいくつもりだ」


生徒

「何報告ですかー笑?」


破部ヤマト

「そうそう、このクラスの学級委員は誰?」


ルカ

「はーい、私でーす」


破部ヤマト

「おお、一番端の後ろの席とは。渡瀬ルカさんね、よろしくね」


ルカ

「わー、名前知ってるんですか?」


破部ヤマト

「勘だよ、勘」


「わはははは」


「勘で的中できるんですか?」


破部ヤマト

「できる。君は越野タケオな気がする」


越野

「気がするって笑。当たってます笑。他の人は?」


破部ヤマト

「オレの勘は当たるからな、そうだなー、窓際の金髪の女子、君は暮井ニカって感じだな」


皆が、静まり返り、反応しなかった。


破部ヤマト

「あらー、はずしちゃったかな。ま、オレの勘を披露するのはここまでだな」


山威先生

「じゃあ、1時間目始まっちゃうので、ここまでにしましょう。破部先生、次のクラス行きましょう」


破部ヤマト

「わかりましたー。じゃあ、みんな生きていたらまた会おう!」


「なにそれー笑」

「わはははは」


破部先生は、教壇から移動する際、一瞬、私の方を見て少し微笑んだ気がした。

私はドキッとして目を大きくした表情が顔に出てしまった。



本当に、副担任なんだ…。



みんなの反応…関係ない、私は私。



「副担任かー、何のために来たんだろ」

「必要かなー」

「いいじゃん、イケメンだし、おもしろそうだしー」


皆が、破部先生のことでガヤついている。



確かに、何のために来たんだろう。




休み時間。山威先生に職員室に呼び出された。



山威

「暮井、一週間ぶりだな。大丈夫か?」


ニカ

「一週間も休んで、ご迷惑おかけしました」


山威

「暮井、噂になってることだが…」


ニカ

「SNSの画像のことですか?」


山威

「そうだ」


ニカ

「あれは、私ではありません。夜遊びもしてません。以上です。戻ります」


山威

「おいおい、待て。だいたいその髪の色、もどしてこないから誤解されるんだぞ?」


ニカ

「これ、戻らないって何度も言いました」


山威

「そんなのあり得るか」


そこに、破部先生が突然割り込んで来た。


破部ヤマト

「おおー、君ー、やっぱり暮井ニカって名前であってるじゃん、どうしたんだ?」


山威

「この生徒は、ちょっと前まで優秀で、最近になってこんな髪の色にして、戻せって言っても戻さないし、変な噂までたってるんですよ」


破部ヤマト

「髪の色?まあいいじゃないですか、オレも茶色いし」


山威

「教育者がそんなこと言っていいんですか?」


破部ヤマト

「オレ、生まれつきこの色なんですよ。暮井のその髪の色戻らないって話でしょ?じゃあしょうがないじゃないですか」


山威

「戻らないなんて嘘に決まってる」


破部ヤマト

「暮井、試したけど戻らないんだろ?」


ニカ

「はい。自分でも美容室でも試しました」


破部ヤマト

「戻そうとて、戻らなかった。じゃあ、どうしようもないじゃないですか」


山威

「だから、あり得ないだろ」


破部ヤマト

「信じてあげましょうよ。それと、決めつけないでちゃんと話聞いてあげない方が教育者としてどうですかねー」


山威

「髪の色戻せないなんてあるわけないだろ!」


破部ヤマト

「あり得ますよ。たとえばアンビヴァレント社ってとこが開発してる永久カラーリング剤使ったら戻りませんしね」


ニカ

「!」

永久カラーリング剤!?!

どうしてこの人が知っている??


山威は少し黙ったあと

「何だそれは、とにかく破部先生もその茶髪も黒髪にして、教育者として見本となっていかないと…!」


破部ヤマト

「教育者教育者って、今日のオレの自己紹介のとき、暮井ニカの名前言ったら静まり返ってたの見て、何も感じませんでしたか?暮井は一週間休んで久しぶりに来た、教室のクラスメイトはあんな感じ、どう見ても何か問題が起きてる。たとえば、何らかの理由で暮井が無視されてるとかね、山威先生はその辺、感じてないんですか?」


山威

「そんなことわかっている!そのために髪の毛も直せと言ってるんだ」


破部ヤマト

「わかっている?一週間休んでる生徒に、何かしてやりました?話を聞いてあげましたか?クラスの側となって暮井を追い詰めてたんじゃないんですか?」


山威

「何を言っている?!君を指導するのは私…」


破部ヤマト

「悪いが、悪意を感じることには従えません。山威先生がやらないなら、私が話を聞きます。ってことで、暮井、放課後時間作れるか?話を聞かせてくれ。もちろんオレ1人だ、安心しろ」


山威

「んくっ、もう休み時間も終わる、戻りなさい」


破部ヤマト

「そういうことだ、暮井。また放課後話そう、いいか?」


ニカ

「はい」


破部ヤマト

「よし、じゃあまたな」


私は、あっけにとられていた。

教室に戻りながら、破部先生から出た言葉に衝撃を受けていた。

永久カラーリング…

アンビヴァレント社?




彼は、何かを知っている…。













評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。