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第11話 夜明けの孤独

あれは多分、神村くんだった…!


鬼竜くんたち5人くらいいたわ。

何だろう、行かなきゃ…!


神村くんが鬼竜くん達に何かされちゃうのかもしれない…!

私は急いで靴に履き替えて、校舎の裏側に走った。

私の走る姿に、多くの人たちがこちらに目を向ける。


校舎の裏に着いた。



どこだろう…誰もいない?!

何かの間違い?

もう、上履きのまま来ればよかった…。


「どうしました?」


男子生徒が3人が声をかけてきた。


「えっと、人探してて…」


「暮井ニカさんですよね?」


「え、そうですけど?」


「うおー、本物ぉだぁ」

「サインもらおうぜ」

「何言ってんだよ、アイドルかよ!迷惑だろ」


「一年生?」


「そうです。ニカさんが走って来たから、何かあったのかと思って来てみたんです」


「そうだったんだね。この辺に鬼竜くん達いなかった?」


「鬼竜さん?!ニカさん、鬼竜さんの女ってホントなんすか?!ショック」


「え、え?!違うわよ、何のうわさ?この辺に5人くらいで来なかった?」


「違うんですか?!来てましたよ、来たから怖くて場所変えたんですよ」


「神村くんて人いなかった?えっと、スパイキーショートっぽい髪型の、、割と細めの」


「それどんな髪型?」

「神村さんて、軽音のですか?」


「そう!」


「いた気がしますけど、鬼竜さんしかわからなかったです」


「どこにいった?!」


「わかりませんけど、あんまり見てると何か言われそうだし」


「もういないのか…」


「多分もういないですね、その辺にいたと思うので」


「そっか。ありがとう」


「何かあったんスか?」


「何でもない、大丈夫」


「ニカさん…」


「ん?」


「いま学校のグループメールとかで噂になってるんすけど」


「何が?」


「ニカさんが夜の仕事してたり、ある不良グループの頭の女とか、優等生の裏の姿とかSNSで、ニカさんぽい人の画像あがってたり、見たことあるんすけど」


「え?!何それ?」


「ハッキリ顔は写ってないですけど、その赤いリボンと髪型はほぼ一緒だったから、マジかよと思って」


「私じゃないわ!」


「だって、ほら、これです」


SNS上に、顔こそハッキリ見えないけど、櫻丘第一の制服と赤いリボンの女性が数枚載っていた。

男性と腕を組んで歩いていたり、また違う男性とはしゃいでいる姿…。


「何…これ?」


「違うですか?!違って欲しいですが」

「知らないようだし、教えなくてよかったんじゃねぇの?」


「私じゃないわ…」


「なんかすみません、余計なこと教えちゃって。でもニカさんじゃなくてよかった」

「そうだよなー、これ見た時はショックだったよな」

「オレもこのうちの1人になりてーとか言ってたじゃねぇかよ笑」

「そりゃー、手が届かない存在てわかってたから、もし遊んでくれるなら嬉しいじゃねぇかよ」

「ご本人目の前にして失礼だろ」



何で…

あんな画像が…


「じゃあ戻るね…教えてくてありがとう」


「え!行っちゃうんですか?」

「そりゃそうだろ昼休み終わるだろ」

「あの!おれ、中島っていいます!」

「お前だけずりーだろ、オレ、浜田です!」

「細川です!えっと、あ、あのバスケとか、頑張ってください!」


「ありがとう…。そうだ、ちょうど学食パン3つあるからあげるよ」


「ホントですか!?ニカさんプレゼンツ!」

「クレープ食べました!美味しかったです!」


クレープ…。


「クレープ、もしお腹痛くさせてたらごめんね」


「え、ああ、大変でしたね!オレ達は大丈夫です!」


「それは良かった、じゃあね…」


「はい!また会えたら嬉しいです!」


私は、SNSでの噂のことで、全身の力が抜けたような感覚になり、戻っていった。

一年生が最後まで何か言っていた気がするけど、頭に入らなかった。


ハッキリとわかったことがある。

誰かが、私を陥れようとしている…。

もしかして、あの覆面の男が…?

だとしたら、ここまでする理由は何…?


一層、校内を歩くことが重くなった。

どれだけの人があの画像を見ているんだろう。

あれは、私じゃない…。

でも、あれだけ見れば私に見える…。


教室に戻ると、また皆がこちらを一瞬見ては目を逸らす。

きっと頭の中は、あの噂。


神村くんがまだいない。


私は席に座ると、空腹感が押し寄せてきた。

何も食べる気しなかったかのに。


机の上に、包装されたキャンディーみたいなものが3つ置かれた。


「え?」


ふと横を見ると、小坂さんだった。


「お腹、空いてそうだったんで、あげます。チョコです」


「あ、ありがとう」


お腹空いてるの、そんなに顔に出てたかな。


私は、ひとつ、チョコを食べた。

美味しい…。


横の席を見ると、小坂さんはノートに何か絵を描いてるようだった。


話しかけようとした時、神村くんが教室に入ってきた。

そして、昼休み終わりの鐘がなった。


神村くんの様子には、何も変化はなかったようだ。

もしかしたら、殴られたりしたのかと思っていたから、少しだけホッとした。



授業中。私はSNSの噂のことで頭がいっぱいだった。みんな、私をそんな目で見ている。事実ではないことで、みんなが私を軽蔑している。

あれが、私の本当の姿だって。

悔しさが込み上げてくる。


神村くんや、小坂さんもアレを見てるんだろうか。この2人には、見られたくない…。





放課後ー



部活。



一年生が知っていたほどのこと…

同学年はもちろん、部活の仲間もSNS上のことは見ているかもしれないと思うと、心が重かった。


休んでしまいたい…


そう思っていると、ロッカールーム前で、部活の顧問に呼び止められた。

女子バスケのコートにちょっとしたベンチがある。そこに座らされた。


金髪の髪を元にもどせないなら、もう来なくていいこと。最近のプレーではチームのスタメンメンバーにはなれないこと。

最近、緩み過ぎていることを感じることを伝えられつつ、何に原因があるのかと訪ねられた。


私には、もう説明する気力もなかった。

たとえ、説明してもわかってくれるはずもない。


「すみません…しばらく……休ませてください。」

そう言うと私は席を立ち、体育館の外に向かった。


先生の呼び止める声が聞こえた。

練習しているチームメンバーもこちらを見ているようだった。




私は、振り返らずに体育館をあとにした。





帰るとすぐに部屋のベッドに倒れ込んだ。


私はこれからどうなる。


とりあえず、このままずっと倒れていたい。


母が呼ぶ声が聞こえた。


階段から下を見ると、母が心配そうに立っていた。


「ニカ、どうしたの?部活は?何かあったの?」


母もあのSNSのことを知っているのだろうか。多分、まだ知らないだろう。

学校でのこと。母には言えない。

前とは別人の扱い。


まるでイジメを受けている現状を伝えることを伝える勇気も気力もなかった。


「クレープの失敗の件で、保健所の検査からは細菌は検出されなかったから少し安心したら、なんだか疲れちゃって…ちょっと休むね」


私はそう言うと部屋に戻っていった。




いつの間にか、ベッドでそのまま寝てしまっていた。


23時。


リビングに降りると、ご飯が作り置きしてあった。

食欲もない。


そのままシャワーだけ浴びて、再びベッドに倒れた。





明日なんて、来ないで欲しい。






夜明けに目が覚めた。


学校でのことを思いだすと、頭が重かった。





私はひとり、泣いた。





それでも朝が来る。



また…学校。




ようやくの思いで登校した。



クラスの皆は相変わらず。



「おはよ!暮井さん!」


神村くんだった。


「おは…どうしたのその顔?!」


「え、ああ、まあちょっとね…ケンカしちゃって、はは」


「誰と!?」


「ああ、まあ、他の学校の奴らと笑」


昨日のことが頭をよぎった。

鬼竜くんたち…?


「鬼竜くんたちじゃなくて?」


神村くんは、少し目を大きく開き

少し怒ったように

「関係ねぇよ、あんな奴」

と言って席へ戻っていってしまった。


神村くんだけが、私に普通に話しかけてくれる。

何か関係あるんだろうか…。


「おはようございます」


もうひとり、私に声をかけてくれる人がいる。

小坂ナナコさんー。


「おはよう」


小坂さんには、自然に、笑顔で応えられる。


でも、何か元気がなさそうだった。


「小坂さん、なんか元気ない?」


「え、あ、ありがとうございます。昨日、美術部でちょっとショックなことがあって…」


「ショックなこと?」


「はい…。私がいま描いていた絵が破られていて…」


「え?」


「絵はまた描き直せるんですけど、なんだかショックで…」


「顧問の先生はそれ知ってるの?」


「なんか言えなくて、描き直してますとしか…」


「言った方がいいよ」


「いや、いいんです。また描き直すから。ありがとうございます」


よくないよ。との言葉を飲み込んだ。


言えない気持ちは…何となくわかる。


でも、誰かのしわざだとしたら、許せない。


…誰かのしわざ?


私に話しかけてくれる人が、傷ついている…?


何かの偶然?


偶然とは思えない。


そう思ったとき、あることが頭をよぎった。


…だとしたら、私は。





廊下を歩いていると、ある男子生徒の顔に、殴られたようなアザができていた。


あの人…


この前、急に私に遊ぼうって言ってきた人だ…!


その男子は、私に気づくと、逃げるように去っていった。


そう言えば、男子が少し私を避けるように通り過ぎて行く気がしていた。



私に関わると、誰かに殴られる??



あ



私がパンをあげた、一年生の子たち!?



わたしは急いで一年生の教室のある3階へ向かった。


「確か……中島くん」


廊下にいる男子生徒に聞いた。


「中島くんて子、何組?!知ってる?」


「え、あ、えっと、中島、なんて名前?」


「わからない!えっと、浜田くんて人の友達かな?」


「ああ、あの3人は5組ですよ」


「ありがとう!」


5組、5組…


私は走って教室へ向かった。


一年生の生徒がチラチラこちらを見る。


「ちょっと、あれ二年の暮井ニカさんか、綺麗だな。何で3階に」

「バカ、いま関わんねー方がいい女子ナンバーワンだよ?」

「そうなの?」



5組!ここだ。



「中島くん!」


「え?あ!ニカさん!なんでここに!」


「無事かなと思って…」


「どうしたんですか?オレに会いに来てくれたんですか?!」


「良かった…なんともないね」


「え?は、はい」


「浜田くんと…、えっと細…」


「細川ですね!あいつら、仲良くトイレかも」

 

「そう、元気かな?2人とも」


「元気も元気ですよぉ、戻って来たら、ニカさんが会いに来てくれたこと自慢しちゃいますね」


「そんなことしなくていいから!」


「え?はい」


休み時間の鐘がなった。


「あ、もうこんな時間!戻るね」





2年8組。


ドアを開けると、すでに授業が始まろうとしていた。


「遅れてすみません!」


山威先生

「何やってんだ。早く席つきなさい」


「はい」


誰かがつぶまやいた。

「男と電話ですかねぇ」


「一年の校舎向かってたよねぇ」


「次は一年狙い?」


教室が意味不明にドッと湧いた。


私は席に着き、中島くんたちまでには被害がいってないことに安心していた。

でも…

教室中この対応…


山威先生

「暮井、その髪型と、その緩さじゃ、言われてもしょうがないぞ」


え?山威先生までクラス側?




この金髪、ケアレスミス連発、時間も守れない。成績も落ちている。そして、あのSNSの画像…

そりゃ…そうだよね


そして、友達は傷つけられる。


私は、ここにいない方がいい…。







帰宅すると、ベッドに倒れる。

気がつくと眠っている。

夜に起きて、シャワーを浴びる。

そして、またベッドに倒れこむ。



もう、学校へは行きたくない。



そのまま、寝てしまっていた。


そして、夜明け早くに目が覚める。


頭が重い。


また、朝が来た…。


その日、わたしは学校を休んだ。


母は心配していたけど、私の異常な弱った姿を見て、休むことは許してくれた。


夜中に、母が電話で父に相談しているようだった。きっと、私のこと。





学校を休んで一週間。




このままではいけない。

そういう思いが、少し湧いて来た。


私は、あの日、あの月光ピエロという覆面の男に会ったことを思い出していた。

あの時から。

あの日から、全てが崩れていった。


私は、昼間に、久しぶりに外にでて、あの日、「才能を奪われた」あの場所に足を運んだ。


いまだに信じられないあの出来事。


でも、確かに、その日から、わたしは、前とは違う自分になった。


なぜ、またここに足を運んだかわからない。


あの、角を曲がったところだ。



角を曲がると、黒いパーカーを着た男がしゃがんで下を見ていた。



私は一瞬、驚き、立ちすくんだ。


男

「ん?」


ニカ

「な、何、してるんですか?」


男

「ちょっと調べてものをねー、それより」


男はゆっくり立ち上がって、セミロングの茶髪を手でかき上げて、私に訪ねた。


「君は…暮井ニカさんだよね?」




え?































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