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37話 称号

【称号『勇気の力』を獲得】

【レア個体を5体倒した者に与えられる】

【特殊効果:自分より格上の相手と対峙している間、全ステータスに微補正がかかる。獲得スキル:恐怖耐性Lv1】



【称号『試練達成者』を獲得】

【取得条件:隠しボスを倒した者に与えられる】

【特殊効果:スキルの熟練度が上がりやすくなる。獲得スキル:二重起動】


スキルの熟練度が上がりやすくなるのは、かなりプラスだ。主力のスキルはどんどんスキルレベルを上げていきたい。

更に、格上の敵相手にステータスが上がる効果も、重宝しそうだ。


その次に、スキルも詳しく調べる。


【スキル『恐怖耐性Lv1』】

【恐怖・威圧による精神的動揺を軽減する】


【スキル『二重起動』】

【同一スキルを二重に発動・維持できる】



スキルも特殊効果もどれも強くなるには必要なものだった。

隠しボスを倒した報酬としては、たしかに納得できる。


特に、二重起動。


闇魔法で2つの槍を出したり、憑りつくの干渉率を高に出来なかった魔物も高に出来るかもしれない。

使い方はいくらでもある。

しかし、説明を読んだ瞬間、1番に頭に浮かんだのは憑りつきだった。


二体同時にできれば、戦い方は一気に広がる。

一体で足を止めて、もう一体で攻める。

あるいは一体を囮にして、別の一体で本命を刺す。


だが、今は試せない。


この部屋には、ボスしかおらず、通常の魔物がいない。

そして、そのボスはもう崩れ落ちて動かない。



理屈の上ではできるかもしれない。

出来れば、大きな力になる。


このスキルの本当の価値が分かるのは、次に使える場面が来てからだろう。

海はその間に、焦げた四相樹王の残骸へ歩み寄っていた。


「私はもうちょっと、この魔物を調べたいわ」


本当にぶれない。


海は左手で眼鏡を押し上げ、残骸へ青白い板を向ける。

黒く炭化した幹の中に、まだ魔石の光が残っていた。


「大きい魔石ね……

これだけ大きければ、研究には持ってこいね」


海はしゃがみ込み、慎重に魔石と素材を拾っていく。


俺は少し離れた場所で、その様子を見守った。


物に触れられない俺には手伝えない。


そう思って周囲に意識を向けた時だった。


部屋の奥、壁際に違和感を覚えた。


目に見える何かがあるわけじゃない。

けれど、魔力の残り香みたいなものが、一筋だけ流れている。


俺はそちらへ顔を向ける。


何もないように見える石壁。

だが、その前の床に、うっすらと線が浮いていた。


俺はすぐに海を呼ぶようにその場で何度も指した。


海が顔を上げる。


「何?」


俺は壁際と床を交互に指す。


海は魔石をケースへしまい、そちらへ歩いてきた。

そして、足を止める。


「……これ」


床一面に、淡い青白い線が広がっていた。


円形の紋様。

中央に小さな陣。

その周囲を幾重もの輪が囲み、文字とも紋様ともつかないものが走っている。


海が解析を使う。


「転送陣……?」


その言葉に応じるように、青白い板が再び浮かぶ。


【ボスの討伐を確認しました】

【帰還用転送陣が起動しました】


帰還用。


俺はその文字を見たまま、少しだけ固まった。


帰れる。

本当に。


海も同じだったらしい。

しばらく板を見つめてから、ふっと小さく笑う。


「なるほどね。

五階層のボス戦で一区切りってことね」


五階層に降りる。

素材を取る。

試練を越える。

そして初めて、地上へ戻る道が開く。


最初からそのつもりで作られた階層だったわけだ。


海は一度だけ、焦げた四相樹王の残骸を振り返る。


「ほんとはもっと調べたいけど……

今は戻った方がいいわね」


その判断の早さはありがたい。

海らしくもあった。


持てるだけの素材は回収した。

回復薬の材料もある。

四相樹王の魔石と素材もある。


これ以上ここに残る理由は薄い。


俺だって、気になることはあった。

地上でどれだけ時間が経ったのか。

新宿はどうなっているのか。

外は今、どんな空気なのか。


海が転送陣の前に立つ。


「行くわよ」


俺は頷いた。


海が陣の中央へ足を踏み入れる。

俺もその上へ浮かぶ。


光が強くなる。

床に走る線が、順に明るさを増していく。

冷たいような、引っ張られるような感覚が足元から這い上がった。


その時、海がぽつりと呟く。


「地上に戻ったら、整理しないと

報告も、検証も、山ほどあるわ」


戦いの直後だというのに、もう次のことを考えている。

その図太さに、少しだけ救われた。


光が視界いっぱいに広がる。


湿った地下の匂いが、遠ざかる。


次の瞬間。


空気が変わった。


土と草の匂い。

外の風。

そして、どこか懐かしい地上の冷たさ。


光が晴れた先で、俺たちはようやく、ダンジョンの外へ戻ってきた。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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