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29話 錬金

俺は迷わず、海の体に憑りついた。


魔物とは全然違った。

熱がある。鼓動がある。息がある。

胸が上下し、肺に空気が入って、抜けていく懐かしい感覚。


人間の体だ。


その事実に、一瞬だけ意識が揺れる。


青白い板が浮かぶ。


【スキル『憑りつくLv3』】

【対象:岩神 海】

【干渉率:高】


海が自分から受け入れたからか、抵抗はほとんどなかった。


そのままステータスが開く。


【対象ステータス】


名前:岩神 海

種族:人間

Lv:4


HP:5/16

MP:32/50

攻撃力:11(+4)

防御力:10(+4)

俊敏:35(+29)

魔力:26(+24)


スキル:錬金Lv2/解析Lv2/分解Lv1/合成レシピ

称号:開発王


【称号『開発王』】

【取得条件:最も錬金を多く行っているものへ与えられる】

【特殊効果:錬金が大成功しやすくなる。MP+20獲得スキル合成レシピ】


ステータスは、全体的に低いが、MPが高い。

しかも、何だこの称号は。



そんなことを考えていると、水弾が飛んできた。


俺は反射的に横へ避けた。

さっきまで負傷者だったはずの体が、信じられないほど軽く動く。

俊敏の上昇が、そのまま乗っている。


リザードマンの目がわずかに細まった。


右腕を動かすと怪我が悪化してしまうかもしれない。

なら左だ。


俺はケースの中身を探り、何か錬金できるものはないか確かめる。

【合成レシピを発動しました】

作成可能レシピ

閃光弾

止血剤

携帯食料

爆弾(小)

包帯


戦闘に役に立ちそうな閃光弾を選択する。

【錬金を発動しました】

ケースの中で材料が光り、小さな銀色の球になる。


戦闘の準備は完了した。次は相手の戦力分析だ。


【解析を発動しました】

種族:リザードマン

ダンジョンに生息する人型の爬虫類。

剣術だけではなく、水弾を補助的に使う。

しっぽの攻撃も強力なので、注意が必要。


解析を使うと、ステータスは分からないが、その魔物の情報を得られるみたいだ。


俺の憑りつきで得る、ステータスの情報だけでは分からない、戦い方なども分かり、かなり助けになる。


そして、リザードマンが持っている、剣を解析する。


鉄でできた剣。

分解可能。


リザードマンが詰めてくる。

剣を構え、水弾も撃てる距離を維持したまま、じわじわ圧をかけてくる。


嫌な相手だ。


距離を詰めるために、俺は閃光弾を投げた。


リザードマンが反応する。

だが遅い。


炸裂。

白い光が弾ける。


縦長の瞳が細まる。


その一瞬で、俺は踏み込んだ。


速い。

海の体とは思えないほど、足が軽い。


相手は、目が見えなくなり、乱暴に剣を振り回す。

だが、こんな適当に振った剣には当たらない。


そして、刃が振り抜かれるその途中、柄元へ左手を叩きつけた。


【分解を発動しました】


ひびが走る。


次の瞬間、剣が半ばから砕けた。


リザードマンも徐々に見えるようになってきたようだが、手元を見て目を丸くする。

当然だ。目の前が真っ白になって、見えるようになったら、剣がなくなっているんだから。


これで、厄介な剣は消えた。


リザードマンはすぐに後ろへ跳び、水弾の構えを取る。

やはりだ。

剣を失った瞬間、選択肢が魔法寄りに偏った。


魔法だけなら、狙いが分かりやすい。


水弾は速い。

威力もある。

だが、作る時に左手と胸元へ魔力が集まる。


来る。


俺は一歩だけ内へ入った。

撃たれる前。

魔力が形になる、その直前。


左手首を蹴り上げる。


水弾が逸れ、天井へ叩きつけられる。

岩が砕け、石片が散る。


リザードマンが舌打ちのように喉を鳴らし、今度は尾撃で距離を取ろうとする。


影が伸びた。


【影縫いを発動しました】


足が揺らぐ。

踏み込みが一瞬だけ止まる。


そのズレで十分だった。


俺は一気に懐へ入る。

ケースから抜いた細い金属杭を、今度は魔石の欠片ごと練り上げた。


【錬金を発動しました】


即席の爆弾(小)。


リザードマンがもう一度、水弾を作ろうと左手を上げる。


遅い。


俺はリザードマンに向かって爆弾を放り投げた。


小と書かれていたが、威力は十分だった。爆風を受けたリザードマンの体勢がわずかに崩れ、動きが鈍る。確実に効いている。


一歩飛び退く。


リザードマンが大きく吠えた。


俺は残った距離を一気に詰めた。


リザードマンが噛みつくように口を開く。

爪を振るう。

尾を打つ。


だが、全部遅い。


俺は砕けた剣の破片を拾い上げ、そのまま喉元へ突き立てた。

【錬金を発動しました】

刺し込んだ鉄片が一気に伸び、喉の奥を内側から貫いた。


リザードマンの体が震える。

縦長の瞳が揺れる。

口から血が溢れ、そのまま膝をついた。


そして、前のめりに崩れ落ちた。


【レベルが上がりました】


【ステータス】


名前:霊山 新 Lv05/20 → Lv06/20

種族:ゴースト


HP:18/18 → 20/20

MP:30/30 → 36/36

攻撃力:4 → 5

防御力:4 → 5

俊敏:29 → 33

魔力:25 → 28


リザードマンを倒したことで、レベルが上がったようだ。5階層を目指すうえでレベルは高いにこしたことはない。


俺はゆっくりと、海への憑りつきを解いた。


ぬるり、と意識が抜ける。


海の体がふらつく。

だが、壁に手をついて踏みとどまった。


海は荒い息を整えながら、倒れたリザードマンを見た。


それから、少しだけ笑う。


「……中に入っている間は、私のスキルも使えるのね。意識をしっかりしてたけど、体だけが自由が利かないような感じね」


俺は何も言えない。

だから、少しだけ肩をすくめるように浮いた。


海は痛む右腕を押さえたまま、なおもリザードマンを見下ろしている。

その目には恐怖より、やはり好奇心の方が強かった。


「今の、すごかったわ。私には絶対できない動きをしてて、笑っちゃったわ」

海はふっと笑った。


「面白いじゃない」


面白いで済ませるのかよ、と思ったが、否定はできなかった。


海は続ける。


「でも、もっと面白いのはそこじゃない

分解した剣の破片を使って、体内に鉄の剣を錬金した」


呆れ半分、感心半分の声だった。


「かなり性格悪い戦い方ね」


俺は内心で少しだけ疲れた。

勝てばいいんだよ。


海は小さく笑う。


「でも、嫌いじゃないわ。むしろ最高よ」




ここまで読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
ワープ系とか見るたびに体を分断する位置に飛ばせないのかとむず痒くなってたところだ!最高よ!
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