23話 結果発表
新に手を合わせてから数日経つと、案の定冒険者の募集が始まった。
グレーな形で、ダンジョンに潜っている人が増え、それを取り締まることが出来ないため、公式に募集して管理しようというのが、国の方針らしい。
もちろん、俺たち2人も応募した。
今は結果が出るのを待っている状況だ。
受かっていたら、国の人と一緒にダンジョンに潜りステータスを手に入れる。
そのあとは自由にダンジョンに潜っていいらしい。
しかし、ダンジョンで得た素材の半分近くは国に持って行かれるらしい。
柳葉剣は結果が出るまでの間ダンジョンについての情報収集をしていた。
スマホを横向きにしたままソファへ深く沈み込み、ため息を吐いた。
ダンTUBE。
今、一番勢いのある動画投稿サイトだ。
誰が立ち上げたは知らないが、ダンジョン動画専用配信サイトで、どこを見てもダンジョンと魔物と探索者だらけだった。
ダンジョンの発生が多すぎて、警察も人手が足りないらしく、都心部以外だと案外簡単には居れるらしい。
『2階層到達者が語る! 生還率を上げる3つのコツ』
『レア個体に遭遇した時、絶対にやってはいけないこと』
『都内ダンジョン封鎖まとめ 今入れる場所はあるのか?』
『ステータス出現は本物? 検証動画』
剣は次々に動画を開いては閉じる。
胡散臭いのも多い。
明らかに話を盛ってるやつもいる。
サムネだけ派手で中身がないやつも山ほどある。
けれど、全部が嘘ってわけでもない。
人気なチャンネルなどもある。
特に有名なのは剣鬼と死線というチャンネルである。
剣鬼チャンネルは爆笑シリーズで人気になった配信者だ。
『ゴブリンを虐殺して爆笑する剣鬼』、『レア個体を倒して爆笑する剣鬼』など戦闘をしながら爆笑する戦闘狂だ。
死線はどんな危機的状況からも、やばくねーよと敵を嘲笑うように倒す姿を生配信することから、熱狂的な人気を博している。
今は小学生もやばくねーよと言っているという噂ある。
ニュースよりダンTUBEの方が現場の温度は分かりやすかった。
画面の中では、顔を隠した男が洞窟の壁を背にして早口で喋っている。
『あと、これはまだ確定情報ってほどじゃないけど、探索者の間では“レア個体”って呼ばれてるやつがいる』
画面の中で、ぶれた映像が止まる。
暗い洞窟の奥。普通の魔物よりひと回り大きい影が、こちらを睨んでいた。
『同じ種族のはずなのに、明らかに強さがおかしい個体だ。動きが速いとか、魔法が強いとか、単純にタフだとか、とにかく普通のやつとは別物らしい』
『だから今の攻略勢だと、“見つけても相手にするな”が基本だな。倒せりゃデカいのかもしれねえけど、強すぎて割に合わないって言われてる』
コメント欄にも似たような言葉が並んでいた。
“通常個体のつもりで行くと死ぬ”
“同じコボルトでも別物だった”
“その階層のハズレ枠”
“レアに当たったら逃げろ”
剣はそこで動画を止め、無意識に眉をひそめた。
合理的ではある。
たぶん普通なら、それが正しい。
今生き残ってる連中は、そうやって危ない橋を避けてきたんだろう。
でも、新の顔が頭をよぎる。
あいつはたぶん、こういう情報をしらない。
そのくらいの強さが普通だと思い込んでしまってる可能性もある。
早く情報を伝えないと少し焦りだす。
玄関のチャイムが鳴ったのは、その時だった。
剣はスマホを伏せ、立ち上がる。
ドアを開けると、そこには青桐茜が立っていた。
「入っていい?」
「いいけど、来るなら連絡しろよ」
「した」
剣は自分のスマホを見た。
確かにメッセージが送られていた。
「焦りすぎて、周り見えなくなりすぎよ」
「もう応募の結果出てるわよ」
メッセージ画面から急いでメールを確認する。
『第一期調査協力候補者選考結果のお知らせ』
すぐ開こうとして指が一瞬だけ止まる。
「茜はもう合否見たのか?」
「1人で見るのが怖いから、一緒に見ようとしたのに、あんたから返信内からここ来たの!」
下手なことを聞いて、虎の尾を踏んでしまったらしい。
「悪い…じゃあ一緒に見るか」
メールを開く。
剣はわざと少し間を置いた。
茜が向こうで息を呑むのが分かる。
「受かってた」
「なんで溜めたのよ」
「結果発表はいつだって溜めるものだろ」
「私も受かってたわ」
「二人で喜びたかったのに台無しじゃん」
茜が愚痴をこぼす。
「俺の作戦通りだな」
メールを開く指が本当は震えていたのはご愛嬌だ。
剣はもう一度画面を見る。
事前講習、簡易訓練、装備支給、行動制限。
いろいろ細かく書いてある。
だが、そんなものは今どうでもよかった。
受かった。
入口ができた。
あの門の向こうへ行くための、ちゃんとした道が。
「……これでようやくスタート地点か」
思わずそう漏らすと、茜が静かに言った。
「うん」
「でも、ほんとに行くんだね」
「今さら怖くなったか?」
「ちょっとは」
「でも、それ以上に早く行きたい」
剣はベッドの上へ仰向けに倒れた。
スマホを額に乗せる。
新は、もうずっと先にいる。
たぶん自分たちの想像より、もっと深い場所で、もっと無茶をしている。
だったら急がないといけない。
「待ってろよ」
無意識にそう呟いていた。
「何?」
「いや、独り言」
「気持ち悪い」
「うるせえ」
それでも、口元は緩んだままだった。
まったく、困った幼馴染を持つと大変だぜ。
勝手に先へ行くやつがいるから、こっちまで勝手に覚悟を決める羽目になる。
でも、それも悪くない。
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