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21話 オーク

オークを探して探索していると、少し開けた空間の中央で、巨大な体がゆっくりと向きを変える。

太い腕。厚い胸板。削り出した岩塊みたいな棍棒。

ただ立っているだけで、周囲の空気まで重くなるようだった。


霊山はゴブゴブの体で棍棒を握りながら、過去に憑りついたときのステータスを思い出す。


【対象ステータス】


種族:オーク

Lv:6

HP:38/38

MP:0/0

攻撃力:25

防御力:12

俊敏:8

魔力:0


スキル:棍棒術Lv2/怪力Lv2/頑強Lv1


強い。


だが、前と違うのは霊山の方だった。

ステータスも上がっている。

棍棒術も投擲も使える。

影縫いもある。


正面から殴り合えば負けるかもしれない。

それでも、勝ち筋はいくらでもある。


相手の能力を冷静に分析する。

俊敏は低い。

攻撃は大振り。

そして、武器を握っている。


なら、狙う場所は決まっていた。


手だ。


オークが先に動いた。


地面が鈍く鳴る。

大きく踏み込み、棍棒を頭上へ振りかぶる。

真上から叩き潰す一撃。


まともに受ければ、防御力が強化されたゴブゴブの体でもただじゃ済まない。


だが、遅い。


棍棒が振り下ろされる直前、霊山は影へ闇を突き立てた。


【影縫いを発動しました】


オークの影が一瞬石床へ縫い止められる。


ほんの一瞬。

そのズレで、踏み込みが鈍る。


十分だ。


霊山は高い俊敏を使い攻撃を避ける。

棍棒が、石床を砕く。破片が跳ねる。

その威力に身の毛がよだつ。


その横を滑るように踏み込み、ゴブリンの棍棒をオークの手首へ叩きつけた。


鈍い音。

だが、浅い。


硬い。

頑丈だ。


オークはすぐに腕を引き戻し、再度棍棒を振るう。

霊山は飛び退いた。

拳が空を裂き、風圧だけで頬が震える。


やはり一撃が重い。


こちらは派手な一撃などはない、だから削る。


霊山は棍棒を構え直した。

正面には立たない。

踏み込みの外側へ回り込む。

大振りの終わり際、棍棒を握る指へ打ち込む。


1回。

2回。

3回。


矢継ぎ早に攻撃を加える。


オークが苛立ったように吠える。

棍棒を横薙ぎに払う。

通路の壁ごと砕こうとするみたいな一撃。


霊山は低く沈み込んだ。


また影縫い。


【影縫いを発動しました】


今度は腕の影がわずかに止まる。

ほんの一瞬だけ振りが遅れる。


霊山はその内側へ滑り込み、がら空きになった肘の内側へ棍棒を突き上げた。

続けて返す手で、握っている親指の付け根を狙う。


鈍い感触。

オークの手がわずかに開く。


惜しい。

だが、まだ落ちない。


オークは唸りながら後ろへ下がり、棍棒を握り直した。

手の甲が赤く腫れている。

効いてはいる。


もっとだ。


オークが突っ込んでくる。

棍棒ではなく体ごと押し潰すような突進。

大きいが、直線的だ。


真正面から受ける気はない。


霊山は少しだけ引きつけた。

ぎりぎりまで待つ。

そのあまりの威圧感に、死の文字が脳裏をよぎる。

オークの右手が前へ出る。

相手の棍棒を握る力が最も乗る瞬間。


そこで、思いっきりカウンターを決める。


棍棒が、オークの手の甲を横殴りに打つ。

握りが乱れる。


オークの棍棒が、ついにぐらりと傾いた。


「……落ちろ」


誰にも聞こえない声で、霊山はそう呟く。


オークが怒鳴る。

だが、その怒鳴りと同時に指の力が緩む。


巨大な棍棒が、石床へ落ちた。


重い音が洞窟に響く。


奪った。


霊山はすぐに飛びついた。

両手で持ち上げる。


重い。

ゴブリンの体には明らかに重すぎる。

だが、今はステータスが上がっている。

持てる。

振れる。


影縫いはもう使わない。

残りMPを計算する。

ここからは、一気に押し切る。


霊山はオークの棍棒を低く構え、その膝へ横殴りに叩きつけた。


骨まで響くような重い音。

オークの巨体がぐらつく。


次は脇腹。

さらに返す手で肩口。


今まで霊山が使っていた小さな棍棒とは、威力がまるで違う。

自分が奪った武器が、そのまま相手の弱点になる。


オークが拳を振るう。

速くはないが、当たれば終わりだ。


霊山は身を捻って避けた。

拳が頬をかすめる。

風圧だけで耳の奥が鳴る。


危ない。


だが、止まらない。


オークの体勢が流れた瞬間、霊山は踏み込んだ。

全身を使って、巨大な棍棒を振り上げる。


狙いは頭じゃない。

まずは手。

拳での攻撃さえ出来なくすればいい。


絶叫。

オークの右手が潰れたみたいに開く。


次で終わらせる。


オークが片膝をついた。

それでも睨みは消えていない。

まだ来る。

まだ立つ。


なら、こっちも容赦しない。


霊山は大きく息を吸うように意識を整え、オークの棍棒を頭上へ振りかぶった。


一番重い一撃。

一番大きい振り。


そして、そのまま真正面から叩き落とす。


轟音。


オークの頭部が揺れ、巨体が石床へ沈む。

しばらく、ぴくりとも動かなかった。


静かになった。


霊山はその場に立ち尽くしたまま、荒い息を吐くみたいに意識を揺らした。


勝った。


格上相手の、下剋上だった。


立ちのぼる残滓が、静かに霊山へ吸い込まれていく。

冷たいのに、体の奥が熱くなるような感覚。


霊山は、足元に転がるオークの棍棒を見下ろした。


ゴブリンで、オークに勝った。

しかも、無傷でだ。

これは、かなり自信にも繋がる勝利だ。

この階層にもうかなわない敵は居なくなって、心置きなく3階層に進むことが出来る。


取り憑いているゴブゴブの嬉しい気持ちが伝わってくる。


達成感を胸に、取り憑きを解除する。


ゴブゴブは嬉しそうに、マッスルポーズのジェスチャーをした。

3階層に降りる前に、今はこの勝利を2人で分かち合おう。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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