表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/26

18話 干渉率

岩陰から単独のオークを見送ったあと、霊山はふと足を止め先ほどのことを思い返す。


ワイルドウルフへの初期干渉率が、中だった。


前は低だったはずだ。

それが今は、闇魔法を使う前から中まで届いていた。


レベル。

魔力。

憑りつくそのものの熟練。

理由は断定できない。けれど、自分が前より深く干渉できるようになっているのは確かだ。


だったら。


霊山は通路の奥でうろついていたゴブリンへ視線を向けた。


ワイルドウルフが最初から中なら、ゴブリンに闇魔法を重ねれば――高まで届くんじゃないか。


憶測だ。

でも、試す価値はあった。


霊山は単独のゴブリンへ憑りつきを使った。


ぬるり、と意識が沈む。


【スキル『憑りつくLv2』】

【対象:ゴブリン】

【干渉率:中】


いつも通り。

ここまでは予想通りだった。


霊山はすぐに闇を流し込む。

意識の奥へ、黒い靄を深く沈め、抵抗を鈍らせる。


【闇魔法を発動しました】


ずしりとあった重さが、するりと剥がれた。


【干渉率:中 → 高】


高。


霊山は一瞬、息を忘れたような感覚に襲われた。


中のときとは比べものにならない。

腕を動かそうと念じる前に、もう思った通りに動いている。

足の踏み込みも、肩の捻りも、棍棒を握る手の角度も、全部が自然だった。


そして、その瞬間だった。


【使用可能スキル】

棍棒術Lv1/投擲Lv1


見えた文字に、霊山は目を見開く。


やはりだ。


高まで届けば、相手のスキルが使える。


霊山はすぐ近くに転がっていた棍棒を拾わせた。

振る。


違った。


今までみたいに無理やり腕を動かしているだけじゃない。

腰から肩へ、肩から腕へ、棍棒の重さまで含めて動きがつながっている。

雑な一振りではなく、ちゃんと“当てるための振り”になっていた。


そこへ、近くにいた別のゴブリン2体が気づいて駆け寄ってくる。


霊山は一歩踏み込み、棍棒を横薙ぎに払った。


1体目のこめかみに直撃。

倒れる。


振り返るより先に、もう1体へ踏み込む。

下からすくい上げるような一撃で顎を跳ね上げ、そのまま追撃。石床へ叩きつける。


早い。


強い。


高干渉のゴブリンは、もう別物だった。


霊山はそのまま足元の石を拾わせ、通路の先へ投げた。

きれいな弧を描いて飛んだ石が、狙い通りの場所の岩壁へ乾いた音を立てる。


投擲も使える。


戦い方の幅が、一気に広がった。


立ちのぼる残滓が霊山へ吸い込まれ、MPがわずかに戻る。

その感覚を確かめながら、霊山は口元のない顔で笑うように意識を震わせた。


霊山は倒れたゴブリンの足元に転がっていた、もう1本の棍棒にも目を留めた。


今の体なら扱える。

霊山はそれを拾い上げ、背に引っかけるように持たせた。


投げる分と、殴る分を分けて持っておけばいい。

そうしておけば、投擲に1本使っても、踏み込んだ後の手が空かない。


行ける。


この状態なら、2階層の通常コボルトにも届くかもしれない。


霊山は憑りついたまま、通路を進んだ。


しばらくして、探していた相手を見つける。


コボルト。


単独。

壁際を警戒しながら進む、その小柄な背中。


前に見た2階層通常個体だ。

1階層で死闘を演じたあのコボルトほどの強さではない。

それでも、油断すればやられる相手に変わりはない。


コボルトがこちらへ気づく。

同時に、口が開く。

火球の詠唱。


速い。

だが、知っている。


霊山は拾っておいた棍棒を投げた。


投擲Lv1。


棍棒は狙い通りコボルトの口元と肩口のあたりへ叩きつけられた。

詠唱が途切れる。

火球が散る。


今だ。


霊山は一気に踏み込ませた。

高干渉のゴブリンが、棍棒術の軌道そのままにコボルトの脇腹を打つ。


鈍い衝撃。

コボルトがよろめく。


さらに2撃目。

肩。

3撃目。

手首。


短剣を抜こうとした手が弾かれ、コボルトの動きが乱れる。


前と違う。

今回は見える。


スキル。

魔法。

近接。

どう来るかを知ったうえで戦える。


それでも、コボルトも簡単には崩れない。


短剣を拾い直し、踏み込みに合わせて鋭く切り返してくる。

その刃が、通り過ぎざまにゴブリンの脇腹を浅く裂いた。


痛みの一部が霊山へ返る。


【HP:16/16 → 15/16】


かすり傷。


だが、被弾は被弾だ。


霊山はすぐに闇を広げ、コボルトの視界を曇らせた。

完全に奪うほどではない。

それでも、狙いを少し鈍らせるには十分だった。


コボルトがまた火球を作ろうとする。


遅い。


霊山は棍棒術の踏み込みで間合いを潰し、顎を跳ね上げるように1撃。

火球がまた散る。


この形なら押し切れる。


高干渉のゴブリン。

棍棒術。

投擲。

自分自身の闇魔法。

そして、相手のステータスを知っているという情報優位。


今の霊山は、前とはもう違う。


コボルトが距離を取ろうと下がる。

霊山は追った。

棍棒を振り下ろす。

受ける。

崩れる。

そこに闇攻撃魔法の黒い槍で貫く。


コボルトが崩れる。


今度こそ動かない。


勝った。


霊山は数字を見て、短く意識を吐いた。


前よりずっと楽だった。


もちろん、無傷ではない。

でも、1階層のレア個体との死闘とは比べものにならない。


2階層の通常コボルトだからこそ勝てた。

そして、高干渉のゴブリンと、闇魔法と、情報優位を全部使ったから勝てた。


逆に言えば。


MPを惜しまなければ、通常コボルト単体くらいなら割と余裕で押し切れる。


その実感は大きかった。


立ちのぼる残滓が霊山へ吸い込まれていく。

冷たい感覚と一緒に、青白い板が割り込んだ。


【スキル熟練度が一定に達しました】

【闇魔法Lv1 → Lv2】

ここまで読んでいただきありがとうございます。

すこしでも面白いと思っていただけたら、ブックマークや評価をしていただけるととても励みになります。


感想なんでも大歓迎です。誤字脱字、矛盾などでも、どしどし送ってください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ