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世界の淡路島ですけど、何か?  作者: 双鶴


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第8話 和の凛、淡路を魅せる

土曜日の午後。

湊の家に集まった五人は、凛の姿を見て固まった。


「……え?」

陽斗が口を開けたまま動かない。


「凛……?」

紗季が目を丸くする。


そこに立っていたのは、

いつもの凛ではなかった。


淡い藍色の着物に身を包み、

髪はすっきりとまとめられ、

白い肌が柔らかい光を受けてほのかに輝いている。


まるで、

和人形がそのまま歩き出したような美しさだった。


凛は少し照れながらも、

「茶道部の先輩に借りた。

今日のテーマ、“和の淡路島”やから」

と静かに言った。


湊は思わず息を呑んだ。

(……綺麗すぎるやろ)




凛が案内したのは、学校の茶道部が使う和室だった。

畳の香り、障子越しの柔らかい光、

静けさの中にある凛の佇まい。


「今日は、淡路焼と藍染を紹介する」

凛が湯呑みをそっと持ち上げる。


「まずは淡路焼。

淡路島の土を使って作られる陶器で、

淡い青と白のグラデーションが特徴」


湯呑みの表面には、

海の波のような淡い青が静かに広がっていた。


「これ……めっちゃ綺麗やん」

紗季が思わず見惚れる。


「淡路島の海みたいやな」

陽斗が呟く。


凛は微笑んだ。

「そう。

“海の色を閉じ込めた陶器”って言われてる」


湊はその言葉に、

淡路島の海を思い出した。


(凛の声って……こんなに柔らかかったんや)




凛は次に、小さな藍色の袋を取り出した。


「これは、淡路の藍染で作った匂袋。

中には淡路島の線香が入ってる」


「線香?」

陽斗が首をかしげる。


「淡路島は線香の生産量、日本一。

藍染と線香、どっちも淡路島の伝統なんよ」


凛は匂袋をそっと手のひらに乗せ、

カメラに向けてゆっくりと回す。


藍の深い青が光を吸い込み、

まるで夜の海のように静かに輝いていた。


「……ええ匂い」

紗季が目を閉じる。


「落ち着くな」

湊も思わず呟く。


凛は少し誇らしげに微笑んだ。

「淡路島って、海だけやない。

こういう“静かな美しさ”もあるんよ」




撮影が終わると、

悠真が編集した動画を全員で確認した。


画面の中の凛は、

着物の裾を揺らしながら淡路焼を紹介し、

藍染の匂袋をそっと手に取る。


その動きは静かで、

でもどこか凛としていて、

まるで淡路島の“静かな光”そのものだった。


「……すご」

陽斗が呟く。


「凛、めっちゃ綺麗やん」

紗季が素直に言う。


湊は言葉が出なかった。

(こんな凛、初めて見た)


凛は照れながらも、

「まあ……今日の私は、ちょっと上品やろ?」

と自画自賛した。


「ちょっとどころやないわ!」

陽斗が笑う。


「これ、絶対バズるで」

湊が確信を込めて言った。


凛は少しだけ頬を赤くしながら、

「淡路島の“静かな美しさ”も、ちゃんと伝えたいから」

と呟いた。


その言葉に、

五人は自然と頷いた。


淡路島の魅力は、

海や夕陽だけじゃない。


静けさ、伝統、手仕事の美しさ──

それを凛が見事に映し出した回だった。




こうして、

『世界の淡路島 非公式アカウント』は、

またひとつ新しい“淡路島の顔”を世界に届けた。


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