第7話 洲本城を駆け上がれ!
SNSのフォロワー数は「12」。
湊、陽斗、紗季、凛、悠真の5人。
義理でフォローしてくれたクラスメイト6人。
そして──
「西村先生、ほんまにフォローしてくれたんやな」
湊がスマホを見ながら呟く。
「“問題ある投稿をしたら即連絡する”って言われた」
凛が苦笑する。
「監視やん!」
陽斗が叫ぶ。
「でも、先生なりの応援やと思うで」
紗季が笑う。
悠真は画面を見つめながら、
「……1週間で12人なら悪くない」
と静かに言った。
湊は頷く。
「せやな。ここから増やしていけばええんや」
五人は顔を見合わせ、自然と笑った。
(ここからや。淡路島を世界に──)
次の土曜日。
五人は洲本市の中心部に集合した。
「今日は洲本城やな!」
陽斗がやる気満々で言う。
湊がリュックから何かを取り出した。
「はい、これ」
「ん?……ピロピロ?」
陽斗が目を丸くする。
淡路島名物、紙製の吹き戻し。
吹くと“ピロ〜ッ”と伸びる、あれだ。
「城門と天守閣で吹いて、
息切れ具合を“ピロピロの伸び具合”で表現するんや」
湊が笑う。
「高校生の発想やなぁ!」
紗季が爆笑する。
凛も笑いながら、
「でもSNS的には絶対ウケると思う」
悠真は淡々とスマホを構えた。
「……走ってる姿、撮る」
陽斗は慌てて言う。
「顔アップはやめろよ!汗で死ぬほどブサイクになるから!」
「そこは撮る」
悠真が即答した。
「やめろぉぉぉ!」
陽斗が叫ぶ。
洲本城は、三熊山の山頂に築かれた城。
海と街を見下ろすその姿は、淡路島の歴史を象徴している。
「よし、行くで!」
陽斗が階段を駆け上がり始めた。
凛がスマホを構えながら並走する。
「陽斗、リポートしながらやで!」
「任せろって!
ここ洲本城は、淡路島の……歴史ある山城で……
上からは……洲本の街と海が……全部見えるんや!」
息はまだ切れていない。
野球部の底力が光る。
「テンポええな」
湊が感心する。
「よし、城門着いたで!」
陽斗が振り返る。
「じゃあ、体力測定いこか」
湊がピロピロを差し出す。
陽斗は深呼吸して──
「ふぅぅぅぅぅぅぅぅっ!」
ピロピロは勢いよく伸び、
先端が“ピシッ”と音を立てた。
「おお、まだ余裕あるやん!」
紗季が拍手する。
凛が笑いながら言う。
「“ピロピロレベル:まだまだ元気”って字幕入れよ」
悠真は淡々と撮影しながら、
「……音、綺麗に入った」
と満足げに頷いた。
ここからが本番だった。
階段は急で、石段は不揃い。
陽斗の息が少しずつ荒くなる。
「はぁ……はぁ……
ここ……マジでキツい……!」
「陽斗、頑張れ!」
紗季が後ろから声をかける。
「もうちょいや!」
湊も叫ぶ。
凛はスマホを構えながら、
「汗の光、めっちゃ綺麗に映ってる」
と実況する。
「褒め方おかしいやろ!」
陽斗が叫ぶ。
天守閣前に、ついに到着。
洲本の街と海が、
まるで絵画のように広がっていた。
瀬戸内海はガラスのように静かで、
その上を光が細い道のように走っている。
街の屋根は陽光を受けてきらきらと輝き、
遠くの山並みは淡く霞んでいた。
風が吹き、
汗ばんだ陽斗の頬を冷やす。
「……すげぇ」
陽斗が呟いた。
「淡路島って、こんな綺麗なんやな」
紗季が息を呑む。
「ここ、ほんまに淡路島なん?」
凛が見惚れる。
湊は静かに言った。
「淡路島には城址多いんやで。
洲本城、由良城、富島城……
昔は安宅水軍がこの辺りを守っとったんや」
「海の武士団やろ?」
陽斗が息を整えながら言う。
「せや。
淡路島は海の要所やったから、
城も多かったんや」
悠真は石垣を撮りながら、
「……CGに使える」
と呟いた。
「またそれか!」
陽斗が笑う。
湊がピロピロを差し出す。
「じゃあ、最後の体力測定いこか」
陽斗は深呼吸して──
「ふぅぅぅ……っ……ふぅ……っ」
ピロピロは途中で“くにゃっ”と折れた。
「うわ、伸びひん!」
紗季が爆笑する。
凛がスマホを見ながら言う。
「“ピロピロレベル:瀕死”って字幕入れよ」
「やめろぉぉぉ!」
陽斗が叫ぶ。
湊は笑いながら、
「これ絶対バズるわ」
と確信した。
陽斗は汗だくで笑い、
「よし、次はどこ行く?」
と聞く。
湊は空を見上げた。
「淡路島全部や。
全部、俺らの足で紹介するんや」
五人は笑い合い、
洲本城の風がその笑い声を運んでいった。
淡路島を世界に知らしめる旅は、
まだ始まったばかりだった。




