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世界の淡路島ですけど、何か?  作者: 双鶴


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第69話 SNS休止

春の気配が少しずつ近づいていた。

海沿いの風はまだ冷たいけれど、

どこか柔らかい匂いを含んでいる。


卒業式から数日後。

六人は、いつもの海沿いのベンチに集まっていた。


「……なんか、久しぶりやな」

陽斗が空を見上げながら言った。


「ほんまやな。

卒業してから、まだ数日しか経ってへんのに」

紗季が笑う。


凛はマフラーを整えながら、

「でも、なんか“高校生の時間”が終わったって感じするね」

と静かに言った。


美咲は手袋の中で指を組み、

「うん……

なんか、胸の奥がぽっかりしてる」

と呟いた。


湊は海を見つめたまま、

「せやな……

でも、こうして集まれたら十分や」

と静かに言った。


悠真は少しだけ顔を上げ、

「……話、ある」

と短く言った。


六人の視線が、自然と彼に向いた。



「SNS……どうする?」


その言葉は、

風よりも静かに落ちた。


紗季が息を呑む。

「……どうって?」


「続けるんか、やめるんか。

卒業したし、

進路もバラバラやし……

どうしたいんか、決めなあかん」


陽斗はスマホを握りしめた。

「俺は……正直、ちょっとしんどかった。

バズったときも、嬉しいけど怖かったし」


凛は小さく頷いた。

「うん……

“見られてる”って意識が強くなって、

楽しさより責任のほうが大きくなってた」


美咲は胸の奥がざわつくのを感じながら言った。

「でも……

やめたくはない。

六人で歩いた記録やし……

大事にしたい」


紗季は唇を噛んだ。

「うちも……

好きやで、あのアカウント。

淡路島のこと発信できるの、嬉しかったし」


湊は深く息を吸い込み、

「せやけど……

無理して続けるもんちゃうやろ」

と静かに言った。


悠真は短く言った。


「……休止でええと思う」


その言葉は、

“終わり”ではなく“選択”だった。



沈黙が落ちた。

でも、重くはなかった。


紗季がゆっくり口を開いた。

「……休止、か。

なんか、それが一番しっくりくる気する」


陽斗が頷く。

「せやな。

閉鎖は違うし、

続けるって感じでもないし」


凛は微笑んだ。

「“無理しない”って大事だよね。

私たち、ずっと頑張ってきたし」


美咲は胸の奥が少し軽くなるのを感じた。

「うん……

中途半端にしたくないって思ってたけど、

“休む”って選択は、中途半端じゃないよね」


湊は海を見つめたまま言った。

「せやな。

淡路島のこと、嫌いになりたくないし」


悠真は静かに言った。


「……六人で決めたなら、それでええ」


その言葉に、

六人は自然と頷いた。



夕陽が海に沈み始め、

光が金色に変わっていく。


紗季が言う。

「なあ……

休止って言っても、

またいつか投稿するかもしれんよな?」


陽斗が笑う。

「そらそうやろ。

淡路島は逃げへんし」


凛は優しく言った。

「うん。

“また歩きたくなったら歩く”でいいんだよ」


美咲は夕陽を見つめながら言った。

「六人のペースで、

六人の淡路島を続けたい」


湊は深く息を吸い込み、

「せやな。

止まるんやなくて、

いったん置いとくだけや」

と静かに言った。


悠真は夕陽のほうを向いたまま言った。


「……六人で決めた休止や。

それで十分や」


夕陽が海に沈み、

光がゆっくりと薄れていく。


六人の歩く速度は、

これからも六人で決めればいい。


休止は終わりじゃない。

ただの、

静かな呼吸だった。


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