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世界の淡路島ですけど、何か?  作者: 双鶴


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第61話 進路希望の紙の前で

「じゃあ、次の人どうぞ」


職員室前の廊下。

順番を待つ生徒たちのざわめきの中で、

六人はそれぞれの紙を手にしていた。


湊がため息をつく。

「はぁ……面談ってなんか苦手やわ」


紗季が笑う。

「湊ってさ、普段は落ち着いてるのに、

こういうのだけめっちゃ弱いよな」


「うるさいわ」


陽斗は紙をくしゃっと握りしめていた。

「俺、まだ決まってへんねんけど……

どうしたらええんやろ」


凛は静かに言った。

「決まってないなら、それでいいんだよ。

先生も分かってくれるよ」


美咲は自分の紙を見つめながら呟いた。

「私も……まだはっきりはしてない。

でも、なんか書かなあかんよね」


悠真は紙を折りながら言った。

「……書いても、書かんでも、

結局、自分で決めるしかない」


その言葉に、

六人は少しだけ黙った。


湊の面談…


「湊くんは……地元の大学を考えてるの?」


「はい。

淡路島から通えるとこがいいかなって」


「理由は?」


「……家のこともあるし、

島のこと、もっと知りたいんです」


先生は微笑んだ。

「いいね。

“地元を大事にしたい”って気持ち、すごく素敵だよ」


湊は少し照れた。


紗季の面談…


「紗季さんは……観光系の専門学校?」


「はい!

淡路島のこと、もっと勉強したいんです!」


「元気でいいねぇ。

でも、ちゃんと調べてる?」


「えっと……まだ途中です!」


先生は苦笑しながらも、

「紗季さんらしいね」と言ってくれた。


凛の面談…


「凛さんは……看護?」


「はい。

小さい頃から、なんとなく……」


「なんとなく、でいいんだよ。

その“なんとなく”が大事なんだから」


凛は静かに頷いた。


陽斗の面談…


「陽斗くんは……まだ空欄か」


「すんません……」


「焦らなくていいよ。

君は人と関わるのが得意だから、

それを活かせる道を探してみたら?」


陽斗は少しだけ顔を上げた。

「……はい」


美咲の面談…


「美咲さんは……文学部?」


「はい。でも……

自信はないです」


「自信なんていらないよ。

“好き”って気持ちが一番強いんだから」


美咲は胸の奥が少し温かくなった。


悠真の面談…


「悠真くんは……映像系の大学?」


「……はい」


「いいね。

君の映像は、言葉以上に伝わるものがある」


悠真は少しだけ目を伏せた。

「……ありがとうございます」



放課後。

六人は海沿いのベンチに集まった。


紗季が言う。

「なんかさ……

面談って、思ってたよりしんどいな」


陽斗がうなだれる。

「俺、まだ何も決まってへん……」


凛が優しく言った。

「決まってないのは悪いことじゃないよ」


湊が続ける。

「せやせや。

焦って決めても、後でしんどいだけやし」


美咲は海を見ながら言った。

「でも……

“未来”って言われると、

なんか急に怖くなるよね」


悠真は短く言った。

「……六人で歩いてても、

未来は別々やから」


その言葉に、

六人は静かに息を呑んだ。


でも、

誰も否定しなかった。



帰り道。

夕方の空がゆっくり色を変えていく。


紗季が言う。

「なんかさ……

今日、ちょっとだけ大人になった気するわ」


陽斗が笑う。

「俺はまだ子どものままやけどな」


凛が微笑む。

「それでいいんだよ。

ゆっくりで」


美咲は小さく言った。

「うん……

ゆっくりでいいよね」


悠真は静かに言った。


「……六人で、まだ歩ける」


その言葉に、

六人は自然と頷いた。


進路はバラバラでも、

今はまだ、

六人で淡路島を歩いている。


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