第57話 自由でいたい理由
「なあ……これ、どう思う?」
放課後の空き教室。
湊がスマホを見せながら、少し言いにくそうに切り出した。
紗季が覗き込む。
「ん?観光案内所のサイトやん」
「うん。
ここの人が、うちらのSNSにリンク貼りたいって言ってくれてて」
陽斗が目を丸くする。
「え、マジで!?
それってめっちゃすごいやん!」
凛は少し考え込むように言った。
「でも……リンク貼られるってことは、
“公式っぽくなる”ってことだよね?」
美咲はノートを閉じながら言う。
「なんか……嬉しいけど、ちょっと緊張するかも」
悠真は短く言った。
「……自由じゃなくなる」
その言葉に、
六人は一瞬だけ黙った。
紗季が口を開く。
「でもさ、淡路島の人が応援してくれてるってことやん?
それは嬉しいよな」
陽斗も頷く。
「せやせや。
地元の人に認められるって、なんか誇らしいやん」
凛はゆっくり言った。
「うん……気持ちは分かるよ。
でも、公式に近づくと“責任”が出てくる気がする」
湊が腕を組む。
「そうなんよな。
今までみたいに、気軽に歩いて撮って……ってのが
やりにくくなるかもしれん」
美咲は少しだけ視線を落とした。
「“好きでやってる”って感じが、
薄くなるのは嫌かも」
悠真は静かに言った。
「……俺は、今のままがいい」
その言葉は短かったけれど、
六人の中で一番重かった。
しばらく沈黙が続いたあと、
湊が息を吐いた。
「……やめとこか。
リンク貼られたら、うちらのペースじゃなくなる気がする」
紗季が頷く。
「うん。
“高校生の自由さ”がなくなるのは嫌やな」
陽斗も苦笑しながら言った。
「せやな。
なんか、仕事みたいになるのは違うわ」
凛は安心したように微笑む。
「私も、今のままが好き」
美咲は小さく言った。
「うん……
“自由に歩く淡路島”って感じがいいよね」
悠真は短く言った。
「……それが、うちら」
六人の意見は自然と揃っていた。
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帰り道。
夕方の風が少し冷たかった。
紗季が言う。
「なんかさ……
大人の世界に片足突っ込みそうになったよな」
陽斗が笑う。
「危なかったわ。
俺ら、まだ高校生やしな」
凛は海を見ながら言った。
「でも、ちゃんと話し合えてよかった」
湊が頷く。
「せやな。
“自由でいたい”って気持ち、大事にしたいわ」
美咲は少し照れながら言った。
「うん……
六人で歩くの、好きやし」
悠真は静かに言った。
「……自由やから、続けられる」
六人の影が並んで伸びていく。
選ばなかった道があった。
でも、
“自由でいたい”という選択は、
六人にとって正しかった。




