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世界の淡路島ですけど、何か?  作者: 双鶴


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第55話 言葉と映像のあいだで

「なあ、美咲。

ちょっと見てほしいんやけど」


放課後の図書室横。

編集作業をしていた悠真が、

珍しく自分から声をかけてきた。


美咲は少し驚きながら顔を上げる。

「どうしたん?」


悠真はタブレットを差し出した。

「この前の森の動画……

文章、どこに入れたらええか分からん」


美咲は隣に座り、

画面を覗き込んだ。


「えっと……

この流れなら、最初じゃなくて途中のほうがいいかも。

“歩いてる感じ”が伝わるし」


悠真は小さく頷く。

「……途中、か」


「うん。

なんか、静かに始まって、

ちょっとだけ言葉が入るほうが好き」


美咲は自分でも驚くほど自然に言っていた。


悠真は画面を見つめたまま、

ぽつりと言った。


「……美咲の言葉、

映像に合う」


美咲は一瞬固まり、

耳まで赤くなった。


「え、あ……ありがと。

でも、そんな大したもんじゃないよ」


「大したもんや」


悠真は、

いつもより少しだけ強い声で言った。


美咲は照れくさくて、

ノートを閉じた。


「じゃあ……

もうちょっと考えてみるね。

短いほうがいいよね?」


「……うん。

短いほうが、残る」


その言葉に、

美咲は小さく笑った。



作業を続けていると、

外から風の音が聞こえた。


美咲がふと呟く。

「なんか……落ち着くね、ここ」


悠真は手を止めずに言った。

「……美咲とやと、落ち着く」


美咲は一瞬だけ息を呑んだ。


「え……なんで?」


「分からん。

でも……

言葉が静かやから、かな」


美咲は照れながら笑った。

「静かって……褒めてる?」


「褒めてる」


即答だった。


美咲はノートを抱えながら、

少しだけ視線を落とした。


「悠真くんの映像も、好きやで。

なんか……

“見てるだけで分かる”って感じする」


悠真はその言葉に、

ほんの少しだけ目を見開いた。


「……分かる?」


「うん。

言葉にしなくても、伝わる感じ」


悠真はゆっくりと頷いた。


「……美咲も、そうや」


美咲は顔を上げた。

「え?」


「言葉、短いのに……

ちゃんと伝わる」


美咲は照れくさくて、

机の端を指でなぞった。


「なんか……嬉しいな、それ」



帰り道。

夕方の空が少しずつ暗くなっていく。


美咲が言う。

「今日、ありがとね。

一緒に作業できて楽しかった」


悠真は短く言った。

「……俺も」


「また一緒にやろ?」


「……うん。

美咲の言葉、もっと聞きたい」


美咲は思わず笑ってしまった。

「そんな言われたら、照れるやん」


悠真は前を向いたまま、

小さく言った。


「……俺も」


二人の歩幅は、

自然と揃っていた。


言葉は少ない。

でも、

“距離が縮まった”ことだけは、

二人とも気づいていた。


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