第53話 地元テレビがやってきた
「え、取材……?」
月曜の放課後。
図書室横の空き教室で編集作業をしていた六人の前に、
先生がひょっこり顔を出した。
「地元のケーブルテレビさんがね、
君らのSNS見て興味持ったらしくて。
“ちょっと話聞かせてほしい”って」
紗季が目を丸くする。
「え、うちらが?なんで?」
先生は笑った。
「淡路島をこんなに丁寧に紹介してる高校生、珍しいんやって」
陽斗が椅子から立ち上がる。
「マジかよ!テレビってあのテレビ!?」
湊が苦笑する。
「他にどのテレビがあるねん」
凛は少し緊張したように言った。
「でも……私たち、そんな大したことしてないよ?」
美咲はノートを閉じながら言う。
「うん。
ただ歩いて、撮って、書いてるだけやし……」
悠真は静かに呟いた。
「……それが、ええんやと思う」
先生が続ける。
「明日の放課後、学校に来てくれるって。
無理なら断ってもええけど、どうする?」
六人は顔を見合わせた。
紗季が最初に口を開く。
「……やってみよ。
せっかくやし、淡路島のこともっと知ってもらいたいし」
陽斗が拳を握る。
「よっしゃ!出るしかないやろ!」
凛が微笑む。
「じゃあ、みんなで頑張ろう」
湊が頷く。
「変に気張らんでええ。いつも通りでいこ」
美咲は少し照れながら言った。
「緊張するけど……みんなとなら大丈夫やと思う」
悠真は短く言った。
「……うん」
こうして、
六人は取材を受けることになった。
翌日。
放課後の教室に、
小さなカメラとマイクを持ったスタッフがやってきた。
「こんにちはー。
淡路島ケーブルネットの者です。
今日はよろしくお願いしますね」
スタッフは柔らかい笑顔で、
まるで近所のお兄さんのようだった。
紗季が小声で言う。
「なんか……思ってたより優しそうな人やな」
陽斗が頷く。
「もっとガチガチの人来るんかと思ったわ」
凛は深呼吸して、
「落ち着こう……」と自分に言い聞かせていた。
湊は代表して挨拶する。
「よろしくお願いします」
美咲は緊張で手が少し震えていたが、
スタッフの柔らかい雰囲気に少し安心した。
悠真はカメラを見つめながら、
いつもより少しだけ背筋を伸ばしていた。
取材は思ったよりも和やかだった。
「どうして淡路島を撮ろうと思ったんですか?」
「六人で歩くと、景色が変わって見えるんです」
「SNSの文章、すごく綺麗ですね」
「いえ……みんなの写真があるからです」
「動画、すごく上手ですね」
「……好きで、撮ってるだけです」
スタッフは終始優しく、
六人の言葉を丁寧に拾ってくれた。
紗季は笑いながら話し、
陽斗はちょっと調子に乗り、
凛は落ち着いて答え、
湊はまとめ役に回り、
美咲は照れながら話し、
悠真は短い言葉で誠実に答えた。
取材が終わる頃には、
緊張はすっかり消えていた。
帰り道。
紗季が言う。
「なんか……めっちゃ楽しかったな!」
陽斗が胸を張る。
「俺、テレビ映るんか……やばっ!」
凛が笑う。
「陽斗くん、絶対調子乗るでしょ」
湊は肩をすくめる。
「まあ、ええ経験やったな」
美咲は少し照れながら言った。
「なんか……不思議な感じやった。
でも、嬉しかった」
悠真は静かに言った。
「……見てくれる人、増えるかも」
六人の歩く音が、
夕方の校舎にゆっくり響いていた。
この日を境に、
彼らのSNSは少しずつ、
新しい波を受け始めることになる。




