第49話 森の静けさに耳をすませて
「たまには森、歩いてみん?」
土曜の朝、凛がぽつりと言った。
陽斗が顔を上げる。
「森?なんでまた急に?」
「昨日の雨で、森がきっと綺麗だと思って。
静かで、落ち着くし」
紗季がすぐに反応する。
「ええやん!森の匂い好きやわ。行こ行こ!」
湊は地図を見ながら言う。
「この辺の遊歩道、歩きやすいで。
雨上がりやし、景色も変わってるはずや」
美咲は少し考えてから言った。
「森って、音が優しいよね。
なんか、落ち着く」
悠真はその言葉に静かに頷いた。
「……撮りたい」
陽斗が笑う。
「よっしゃ決まりや!森探検や!」
森に入ると、
空気が一気に変わった。
湿った土の匂い。
葉が揺れる音。
小さな水滴が落ちる音。
「うわ……めっちゃ静かやな」
紗季が声を落とす。
凛は木々を見上げながら言う。
「雨上がりの森って、なんか柔らかいよね」
陽斗は足元を見て驚く。
「苔、ふっかふかやん……これ踏むの気持ちええ」
湊は木の幹を触りながら言った。
「湿度がええ感じやな。
森って、呼吸してるみたいや」
美咲は耳を澄ませて、
小さく呟いた。
「……音、きれいやな。
雨の残りみたいな感じ」
悠真はその言葉に反応し、
木の葉から落ちる水滴をじっと撮っていた。
少し歩くと、
小さな沢が流れていた。
「うわ、めっちゃ綺麗!」
紗季が駆け寄る。
凛がしゃがんで水を触る。
「冷たくて気持ちいい……」
陽斗は石の上に座りながら言う。
「こういうとこ来ると、なんかリセットされるな」
湊は流れを見つめながら言った。
「森の音って、ずっと聞いてられるわ」
美咲は沢の流れを見ながら、
少し照れたように言った。
「こういう場所、好きやな。
なんか、落ち着くし……
頭の中が静かになる感じ」
悠真はその横で、
沢の流れを撮りながら言った。
「……分かる。
静かやけど、ちゃんと動いてる」
美咲は笑った。
「それ、なんかいいね」
帰り道、
森の出口に近づくと、
風が少しだけ強く吹いた。
紗季が言う。
「今日の森、めっちゃ良かったなぁ」
陽斗が伸びをしながら言う。
「なんかスッキリしたわ。
森ってええな」
凛が微笑む。
「また来たいね。
季節で全然違う景色になるし」
湊が言う。
「SNS、今日は“森の音”でまとめよか。
写真より、雰囲気伝わりそうや」
美咲は軽く手を挙げた。
「じゃあ、文章ちょっと考えるね。
森って言葉にしやすいし」
悠真はその言葉に、
静かに微笑んだ。
六人の足音が、
森の出口へ向かってゆっくりと響いていた。




