第41話 言葉が景色を変える
「なあ……SNSの文章、もうちょい丁寧にしたいと思わへん?」
昼休み、凛がぽつりと言った。
陽斗がパンをかじりながら首をかしげる。
「文章?今のままでええんちゃうん?」
紗季が笑う。
「陽斗の“最高!”とか“やばい!”ばっかりやもんな」
「ええやん!分かりやすいやろ!」
「分かりやすいけど、雑やねん」
湊が苦笑しながら言う。
「確かに……写真とか動画は綺麗になってきたし、
文章ももうちょい工夫してもええかもな」
そのとき、美咲が静かに言った。
「もしよかったら……私も手伝っていい?」
全員が一瞬だけ驚いたが、
すぐに紗季が笑顔で言った。
「もちろんやん!美咲、文章得意やろ?」
美咲は少し照れながら頷いた。
「文芸部で文章書いてるから……
淡路島の景色、言葉にするの好きなんだ」
悠真はその言葉に、
ほんの少しだけ目を見開いた。
放課後、六人は海沿いのベンチに座り、
今日撮った写真を見比べていた。
「この写真、めっちゃ綺麗やん」
紗季が言う。
湊が説明する。
「悠真が撮ったやつや。
光の入り方がええ感じやろ」
陽斗がスマホを覗き込む。
「これに文章つけるんやろ?
どんな感じにするん?」
凛が言う。
「淡路島の“空気”が伝わるような……
そんな文章がいいな」
美咲はしばらく写真を見つめ、
静かに言葉を紡いだ。
「……“風が海を撫でていく音がした。
淡路島の午後は、いつも優しい。”」
紗季が息を呑む。
「え……めっちゃええやん……」
湊も驚いたように言う。
「文章ひとつで、景色の見え方変わるんやな……」
陽斗が感心したように頷く。
「なんか……急にオシャレになったな」
凛は微笑んだ。
「美咲ちゃんの言葉、すごく綺麗だね」
悠真は写真を見つめながら、
小さく呟いた。
「……光と、合う」
美咲が少し照れたように笑う。
「ありがとう。
でも、私が主役じゃないよ。
みんなの写真や動画があるから、
言葉が生きるんだと思う」
その言葉に、
五人は自然と微笑んだ。
帰り道、
夕日が海を金色に染めていた。
紗季が言う。
「なんか……六人になったって感じするな」
陽斗が笑う。
「文章担当が入ったら、急に本格的になったわ」
凛が静かに言う。
「でも、美咲ちゃんは“整えてくれる”って感じだね。
前に出るんじゃなくて、後ろから支えるみたいな」
湊が頷く。
「せやな。
ええ風が吹いたって感じや」
悠真は美咲の横を歩きながら、
少しだけ声を落として言った。
「……ありがとう」
美咲は優しく微笑んだ。
「こちらこそ。
一緒に、淡路島を見せてね」
六人の影が並んで伸びていく。
淡路島の風が、
新しい物語をそっと運んでいた。




