第39話 帰ってきた風(美咲)
「……え、ほんまに?美咲、帰ってきたん?」
紗季が驚いた声を上げた。
「うん。昨日、東京から戻ってきたって」
凛がスマホを見せる。
陽斗が目を丸くする。
「マジか!あいつ、何年ぶりや?」
湊が指を折って数える。
「中一の途中で転校したから……五年ぶりか」
そのとき、
教室の扉が静かに開いた。
「……久しぶり」
そこに立っていたのは、
少し大人びた雰囲気をまとった少女──美咲。
黒髪を耳にかけ、
落ち着いた瞳。
でも笑うと、昔と同じ人懐っこさが滲む。
「みんな、覚えてる……よね?」
紗季が真っ先に駆け寄る。
「当たり前やん!美咲、帰ってきたんやなぁ!」
陽斗も笑う。
「おお、元気そうやん!」
凛が優しく言う。
「おかえり、美咲ちゃん」
湊は少し照れながら。
「久しぶり。
なんか……大人になったな」
そして──
悠真だけが、
少しだけ固まっていた。
美咲が気づいて微笑む。
「悠真くんも……変わってないね」
悠真は小さく、
「……うん」とだけ答えた。
その様子を見て、
他の四人は“気づいていた”。
悠真がずっと、美咲に憧れていたことを。
休み時間。
美咲は五人の机にやってきた。
「ねえ……みんなの動画、見たよ。
淡路島のこと、すごく丁寧に撮ってて……
私も、ああいうのやってみたいなって思った」
紗季が目を輝かせる。
「え、ほんまに!?
美咲、うちらの仲間入りしたいん?」
「うん。
文芸部に入ったんだけど……
文章だけじゃなくて、
“島の物語”を一緒に作ってみたい」
凛が微笑む。
「美咲ちゃんの文章、絶対いいよ。
世界観が広がると思う」
陽斗が笑う。
「仲間増えるの、めっちゃ嬉しいわ!」
湊が頷く。
「もちろん歓迎や。
美咲が入ってくれたら、
もっと“深い淡路島”撮れそうやし」
そして悠真は──
少しだけ俯きながら、
でも確かに言った。
「……一緒に、やろう」
美咲は嬉しそうに微笑んだ。
「うん。よろしくね、悠真くん」
その瞬間、
悠真の耳まで赤くなったのを、
四人は見逃さなかった。




