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世界の淡路島ですけど、何か?  作者: 双鶴


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第35話 風の道を歩いて(成ヶ島)

「なあ、成ヶ島って知っとる?」

凛が地図を広げながら言った。


陽斗が首をかしげる。

「なんやそれ。島の名前?」


「うん。“淡路島のガラパゴス”って呼ばれてるんだよ。

珍しい植物とか、静かな砂州とか……

自然がそのまま残ってる場所」


紗季が目を輝かせる。

「めっちゃ行きたい!

自然の中歩くの、好きやねん」


湊が頷く。

「ええな。

淡路島の“自然の深層”って感じや」


悠真は静かに言った。

「……風、撮りたい」


こうして五人は、

成ヶ島へ向かう小さな船に乗り込んだ。



船が岸を離れると、

風がふわりと頬を撫でた。


海は穏やかで、

光が水面に細かく揺れている。


「なんか……旅してるって感じするなぁ」

紗季が笑う。


陽斗は潮風を吸い込みながら言う。

「空気うまっ。

ここ、めっちゃ気持ちええわ」


湊は遠くに見える細長い砂州を見つめた。

「あれが成ヶ島か……

ほんまに細いな」


凛が説明する。

「砂州がずっと続いてて、

潮の満ち引きで形が変わるんだって」


悠真はカメラを構え、

「……光、柔らかい」と呟いた。



島に上陸すると、

まず“静けさ”が広がった。


波の音だけが聞こえる。

風が草を揺らす音だけが響く。


「うわ……めっちゃ静か……」

紗季が思わず声を落とす。


凛が微笑む。

「ここ、ほんとに“自然のまま”なんだよ」


陽斗は深呼吸した。

「なんか……心が軽くなるわ」


湊は砂州を歩きながら言う。

「淡路島って、こんな場所もあるんやな……

観光地とは全然違う」


悠真は風に揺れる草をずっと撮っていた。

「……風の形、撮れる」


その言葉に、

四人はふっと笑った。



少し歩くと、

珍しい植物が群生している場所に出た。


凛が説明する。

「これ、“ハマボウフウ”っていう植物。

昔は食用にもされてたんだよ」


紗季がしゃがみ込む。

「かわいい形してるなぁ……」


陽斗が言う。

「なんか、島の宝物って感じやな」


湊は植物の影を見つめながら呟いた。

「自然って、光の当たり方で表情変わるんやな」


悠真はその影を撮りながら、

「……風と光、両方撮れる」と小さく言った。



砂州の先端に着くと、

海が左右に広がり、

風が一気に強くなった。


「ここ……すご……」

紗季が息を呑む。


「海の真ん中に立ってるみたいやな」

陽斗が言う。


湊は遠くの水平線を見つめた。

「淡路島って、

ほんまに“海と風の島”なんやな」


凛が静かに言う。

「こういう場所、ずっと残ってほしいね」


悠真は風に吹かれながら、

「……また来たい」と呟いた。



帰りの船の中、

五人はほとんど喋らなかった。


でもその沈黙は、

心が満たされたときの静けさだった。


紗季がぽつりと言う。

「今日の風、忘れられへんわ」


陽斗が頷く。

「なんか……浄化された気分や」


凛が微笑む。

「自然って、すごいよね」


湊は海を見ながら言った。

「淡路島の“奥”に触れた気がする」


悠真はカメラを抱えたまま、

「……風、また撮りたい」と呟いた。


夕方の光が海を照らし、

五人の影が揺れていた。


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