第33話 古民家に流れる時間
「最近、淡路島の“音”とか“光”とか……
そういうの撮るの、めっちゃ楽しいな」
紗季がそう言った朝、
凛がふと思い出したように言った。
「じゃあさ……古民家、行ってみない?
淡路島って、昔の家がそのまま残ってる場所あるんだよ」
陽斗が目を丸くする。
「古民家って、あの“ザ・田舎の家”みたいなやつ?」
湊が笑う。
「せや。
でも、ああいう場所って“時間”が見えるんや」
悠真は静かに言った。
「……撮りたい」
こうして五人は、
島の山あいにある古民家カフェへ向かった。
古民家に着くと、
まず“匂い”が違った。
木の匂い。
土間の匂い。
少し湿った畳の匂い。
「うわ……なんか落ち着く……」
紗季が思わず声を漏らす。
凛は梁を見上げながら言った。
「この家、百年以上前の建物なんだって」
陽斗が驚く。
「百年!?
俺らの学校より古いやん!」
湊は土間に置かれた古い道具を見つめる。
「これ、昔のかまどやな……
今でも使ってるんやろか」
悠真は光の入り方をじっと見ていた。
「……影が綺麗」
店主のおばあさんが、
優しい笑顔で迎えてくれた。
「よう来たねぇ。
ここは昔、うちの祖父母が住んどった家なんよ」
湊が聞く。
「この家、ずっと残してるんですか?」
「うん。
壊すのは簡単やけどねぇ……
“時間”って、壊したら戻らんのよ」
その言葉に、
五人は自然と黙った。
凛が小さく呟く。
「……素敵だね」
縁側に座って、
五人はそれぞれ飲み物を頼んだ。
外では風が竹林を揺らし、
カサカサと優しい音を立てている。
「なんか……時間がゆっくり流れてる気する」
紗季が言う。
「せやな。
ここだけ別世界みたいや」
湊が頷く。
陽斗は畳に寝転びながら言う。
「俺、ここ住みたいわ……」
凛が笑う。
「陽斗くん、絶対すぐ飽きるよ」
悠真は縁側の影を撮りながら呟いた。
「……光が、昔のまま」
その言葉に、
四人はふっと微笑んだ。
帰り道、
古民家を振り返ると、
夕方の光が屋根を柔らかく照らしていた。
紗季が言う。
「なんか……あの家、また来たいな」
凛が頷く。
「うん。
“暮らしの時間”って、すごく大事だよね」
陽斗が伸びをしながら言う。
「淡路島って、ほんまに奥深いわ……」
湊は静かに言った。
「こういう場所、もっと探したいな」
悠真はカメラを抱えながら、
「……また撮りたい」と呟いた。
五人の歩く影が、
夕方の道に長く伸びていた。
淡路島の“時間”は、
今日も静かに流れていた。




