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世界の淡路島ですけど、何か?  作者: 双鶴


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33/55

第32話 朝の音を拾いに

「淡路島って、音も綺麗だよね」


凛がぽつりと言ったのは、

アワイチの疲れがようやく抜けてきた頃だった。


「音?」

陽斗が首をかしげる。


「うん。

波の音、風の音、朝の生活の音……

そういうの、ちゃんと撮ってみたいなって」


湊は少し考えてから頷いた。

「ええな。

“音の淡路島”って、まだ撮ってへんかったし」


紗季が笑う。

「よっしゃ、早朝の漁村行こ!

朝の音って言ったら、あそこやろ!」


悠真は静かに言った。

「……音、撮りたい」


こうして五人は、

まだ薄暗い時間に集合した。



海沿いの道を歩くと、

空気がひんやりしていて、

遠くで波が寄せる音が聞こえた。


漁村に着くと、

朝の音が一気に広がった。


ガラガラ……

網を引く音。


ドンッ……

船のエンジンがかかる音。


カァァァ……

カモメの鳴き声。


トントントン……

どこかの家のまな板の音。


「うわ……めっちゃええ音やな」

紗季が目を輝かせる。


凛は静かに耳を澄ませた。

「なんか……生活のリズムって感じがする」


陽斗は船を見ながら言う。

「朝からこんなに動いとるんやなぁ……

俺、絶対起きられへんわ」


湊が笑う。

「漁村の朝は早いんや」


悠真はマイクを構え、

音を拾うようにゆっくり歩いていた。


「……波の音、綺麗」

「……網の音、好き」

「……風の音、柔らかい」


その声は小さいけれど、

確かに“感動”が混ざっていた。



少し歩くと、

古い木造の倉庫の前で、

おじいさんが網を直していた。


トントン……

トントン……


その音が、

朝の空気に溶けていく。


凛が小声で言う。

「この音、すごく好き……」


紗季が頷く。

「なんか……淡路島の“時間”って感じするな」


湊は録音している悠真を見て、

「音って、景色と同じくらい大事なんやな」と呟いた。


陽斗は笑う。

「悠真、今日めっちゃ楽しそうやん」


悠真は少し照れながら言った。

「……音、光と似てる。

形がないのに、綺麗」


その言葉に、

四人は思わず微笑んだ。



帰り道、

朝日が海からゆっくり昇ってきた。


波の音。

風の音。

船の音。

鳥の声。


五人はしばらく無言で歩いた。

でも、その沈黙は心地よかった。


紗季がふと呟く。

「なんか……今日の朝、忘れられへん気する」


凛が微笑む。

「うん。

“音の淡路島”って、すごくいいね」


陽斗が伸びをしながら言う。

「よっしゃ、次はどんな音撮る?」


湊が笑う。

「焦らんでええ。

ゆっくり探していこ」


悠真は録音機を抱えながら、

「……また来たい」と小さく言った。


朝の光が五人を照らし、

淡路島の一日が静かに始まった。


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