第27話 静かに積もるもの
「最近、動画のクオリティ上がってきたよな」
陽斗がそう言ったとき、
湊は嬉しい反面、胸の奥が少しだけざわついた。
紗季が笑う。
「うちら、めっちゃ頑張ってるもんな!」
凛も頷く。
「編集も撮影も、前よりずっと上手くなってるよ」
悠真は静かに言った。
「……次は、もっと綺麗に撮りたい」
その言葉に、
ほんの少しだけ空気が揺れた。
次の撮影場所を決めるために集まった日。
五人はいつものように机を囲んでいたが、
どこか落ち着かない空気が漂っていた。
「次、どこ行く?」
湊が聞く。
陽斗が言う。
「せっかくやし、インパクトある場所行きたいよな。
“バズりそうなとこ”とか」
紗季が眉を寄せる。
「バズりとか、今は気にせんでええんちゃう?」
凛が静かに言う。
「私は……“淡路島の暮らし”をもっと撮りたいな。
観光地じゃなくて、日常の風景とか」
陽斗が少し困った顔をする。
「いや、それもええけど……
なんか最近、動画のレベル上がってきたし、
もっと“すごいの”作りたいっていうか……」
悠真はノートPCを開きながら呟く。
「……クオリティ、落としたくない」
その言葉に、
紗季が少しだけ黙り込んだ。
湊はその空気を感じ取った。
しばらく沈黙が続いたあと、
凛がぽつりと言った。
「なんか……みんな、ちょっと疲れてない?」
陽斗が苦笑する。
「まあ……ちょっとだけな。
“次も良い動画作らなあかん”って思ってまうわ」
紗季も頷く。
「うちも……楽しいけど、
なんか最近“気合い入りすぎてる”気する」
悠真は画面を見つめたまま言う。
「……もっと良くしたいだけ」
その声は真剣で、
でもどこか不安も混ざっていた。
湊は深く息を吸い、
みんなの顔をゆっくり見渡した。
「なあ。
無理せんでええで」
四人が顔を上げる。
「うちら、フォロワーとかいいねとか、
そんなもん気にして始めたんちゃうやろ。
“淡路島が好き”って気持ちで始めたんや」
紗季が小さく笑う。
「……せやな」
凛も頷く。
「うん。
焦らなくていいよね」
陽斗が肩を回す。
「なんか、ちょっと楽になったわ」
悠真は静かに言った。
「……自然体で、撮りたい」
湊は微笑む。
「それでええねん。
うちらはうちらのペースで行こ」
帰り道、
五人はいつものように並んで歩いた。
特別な会話はなかったけれど、
空気は少しだけ軽くなっていた。
紗季がふと呟く。
「なんか……初心に戻った気するな」
陽斗が笑う。
「よっしゃ、次も自然体で行くで!」
凛が言う。
「淡路島の“普通の良さ”を撮ろうね」
悠真はカメラを抱えながら、
「……光、探す」と呟いた。
湊は空を見上げた。
雲の隙間から差し込む光が、
まるで五人をそっと照らしているようだった。
焦らなくていい。
無理しなくていい。
五人の旅は、
ゆっくり、確かに進んでいく。




