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世界の淡路島ですけど、何か?  作者: 双鶴


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第16話 糸の先に宿るもの

「そろそろ“文化”も紹介したいよな」


湊がそう言うと、凛がすぐに頷いた。

「淡路島って、実は伝統芸能がすごいんだよね。

淡路人形浄瑠璃とか」


「それや!」

紗季が手を叩いた。

「淡路人形座、行ってみよ!

うち、まだちゃんと見たことないねん」


陽斗は「人形劇って子ども向けちゃうん?」と首をかしげたが、

悠真がスマホを見ながら静かに言った。

「……300年以上の歴史。

日本最古級の人形浄瑠璃」


その一言で、空気が変わった。

「行こ」

湊が短く言い、5人は淡路人形座へ向かった。


中に入ると、空気がひんやりしていて、

木の匂いと舞台の静けさが、まるで時間を巻き戻したようだった。

ガラスケースの中の人形は、どれも表情が細かくて、

紗季は思わず「うわ……綺麗……」と呟いた。


案内の人が優しく説明してくれる。

「淡路の人形は“三人遣い”です。

頭と右手、左手、足。

三人が息を合わせて、ひとつの命を動かします」


「三人で……ひとつの命……」

凛が小さく繰り返すと、

悠真が静かに頷いた。

「……CGと似てる。

ひとつの動きに、いくつもの作業が重なる」


湊は笑った。

「悠真、なんか分かる気するわ」


やがて公演が始まった。

太夫の声が響き、三味線の音が空気を震わせる。

舞台の上で人形がゆっくりと歩き出した瞬間、

紗季が息を呑んだ。


「……生きてるみたいや……」


陽斗も思わず前のめりになる。

「人形やのに……なんでこんな動くんや……」


凛は目を輝かせていた。

「表情……変わって見える……すごい……」


湊は太夫の声に聞き入っていた。

「声だけで、情景が浮かぶんやな……」


悠真は舞台をじっと見つめ、

「……美しい」

と小さく呟いた。

その声は、誰にも聞こえないほど静かだった。


公演後の体験コーナーで、紗季が人形を持たせてもらうと、

「うわっ……重っ……!」と驚いた。

「これ動かすの、めっちゃ大変やん!」

ぎこちなく動かすと、カクッ、カクッと不自然な動きになり、

陽斗が「ゾンビやん!」と爆笑した。


「うるさいわ!」

紗季が怒る横で、凛も挑戦した。

凛の動きは妙に繊細で、

「なんか……悲劇のヒロインみたいやな」

湊が言うと、

「褒めてるの?」と凛が笑った。


悠真は静かに言った。

「……凛の動き、綺麗」

その一言で凛は固まり、耳まで赤くなった。


帰り道、湊が言った。

「今日の動画、どうまとめる?」

紗季は「うちは“人形の重さにびっくりする女子”でええで!」と笑い、

陽斗は「ゾンビ紗季推しやな!」と茶化し、

凛は「淡路島の伝統が、こんなに美しいって伝わればいいな」と微笑んだ。


悠真はスマホを見ながら静かに言った。

「……舞台の音、綺麗に録れてる。

編集、任せて」


湊は頷いた。

「よし。

淡路島の“魂”を紹介する動画にしよ」


外に出ると、夕暮れの空が淡い橙色に染まっていた。

静かで、深くて、どこか温かい。

五人はその空を見上げながら歩いた。


淡路島を世界に知らしめる旅は、

またひとつ、大切な光を手に入れた。


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