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世界の淡路島ですけど、何か?  作者: 双鶴


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第13話 渦をつくる、渦に巻かれる

「先生、ちょっと聞きたいことがあるんです」


放課後の理科室。

湊は、科学部の顧問・前田先生のところへ向かった。


「淡路島って、渦潮が有名じゃないですか。

鳴門海峡のあれです。

あれ、実験で再現できませんか?」


前田先生は目を丸くした。

「渦潮を?なんでまた急に」


「淡路島の魅力を動画で紹介してて……

渦潮って“世界最大級”って言われるくらいすごいのに、

仕組みを知らん人も多いんですよ。

だから、分かりやすく見せたいんです」


前田先生は腕を組み、

少し考えてから言った。


「……できるかもしれんな。

規模は小さいけど、原理は再現できる」


湊の目が輝いた。


「ほんまですか!」


「鳴門海峡は、淡路島と四国の間の狭い海峡やろ。

満潮と干潮の時間差で“流れの速さ”が変わる。

その差がぶつかって渦ができるんや」


湊はノートを開き、

必死にメモを取った。


「よし、やってみよか。

科学は“やってみる”が一番や」


前田先生のその言葉に、

湊は胸が熱くなった。



家に帰ると、湊はすぐにPCを開いた。


「鳴門海峡 流速」

「渦潮 世界最大級」

「淡路島 渦潮 仕組み」


検索結果を読み漁り、

潮の流れの図を描き、

満潮と干潮の時間差を調べ、

渦ができる条件をまとめていく。


(淡路島の渦潮って……

こんなに科学的で、こんなに面白いんや)


気づけば夜遅くまで夢中になっていた。



翌日、理科室。


水槽に水を張り、

片側に塩水を入れ、

回転装置で流れの差を作る。


「じゃあ、いくで」

湊がスイッチを入れる。


水が動き、

流れがぶつかり、

小さな渦が生まれた。


「できた……!」

紗季が声を上げる。


「これ、めっちゃ分かりやすいやん!」

陽斗が興奮する。


凛はスマホで撮影しながら、

「湊、説明うまいよ」

と微笑む。


悠真は渦をじっと見つめ、

「……CG、作れる」

と呟いた。


湊は笑った。

「頼むわ、悠真」



その日の夜。

悠真はPCの前で黙々と作業していた。


・潮の流れ

・海峡の地形

・満潮と干潮の時間差

・流速の変化

・渦の発生ポイント


ひとつひとつ丁寧に組み上げ、

実験映像と重ねる。


画面の中で、

鳴門海峡の渦がゆっくりと形を作り、

力強く回転し始めた。


「……できた」


その声は小さかったが、

確かな手応えがあった。



いよいよ投稿。


翌日、五人は湊の家に集まり、

動画を編集して投稿した。


タイトルは──

「淡路島の渦潮を、実験で再現してみた」


「これ、絶対伸びるやろ!」

陽斗が言う。


「いや、伸びへんと思う」

湊が冷静に言う。


「言うなや!」

紗季が笑う。


凛は画面を見つめながら、

「でも、すごく分かりやすい動画になったよ」

と微笑む。


悠真は静かに言った。

「……今までで一番良い」


五人はその言葉に、

自然と笑った。




数時間後…


「……コメント、来てる」


湊の声に、

全員が一斉にスマホを覗き込んだ。


『大学で海洋学やってます。

実験の再現度が高くて驚きました。

CGも分かりやすいです。』


「えっ……大学生!?」

紗季が叫ぶ。


「淡路島関係ないのに……

見てくれたんや」

凛が呟く。


陽斗は興奮して跳ねた。

「すげぇ!

誰かが見てくれてるってことやん!」


悠真は画面を見つめたまま、

小さく言った。


「……嬉しい」


湊は胸が熱くなった。


「フォローもされてへんし、

バズってもない。

でも──

誰かが見てくれた」


紗季が笑う。

「それだけで十分やん!」


陽斗が拳を握る。

「よっしゃ、次も作るぞ!」


凛が静かに言う。

「うん。

淡路島、もっと伝えたいね」


悠真が頷く。

「……次は、もっと良いの作る」


湊はスマホを握りしめた。


「よし。

ここからや。

淡路島を世界に知らしめる旅、

まだまだ続くで」


五人の胸に、

小さな渦のように希望が巻き起こっていた。


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