第11話 小豆島に、ちょっと浮気
「ところでさ──」
陽斗がふと呟いた。
「小豆島には……追いついてきたんかな、俺ら?」
その一言に、
湊も、凛も、紗季も、悠真も、
一瞬だけ動きを止めた。
「……どうなんやろな」
湊が正直に言う。
「淡路島の良さは伝えられてるけど……
小豆島は“加工品”が強いよね」
凛がパンフレットを見ながら言った。
「オリーブオイル、醤油、佃煮、素麺……
ブランド化がめっちゃ上手い」
紗季が指を折って数える。
陽斗が腕を組む。
「淡路島は“素材”が強いよな。
玉ねぎ、レタス、牛乳、魚……
そのままでも勝負できる感じ」
湊が頷く。
「せやな。
小豆島は“加工の島”、
淡路島は“素材の島”って感じする」
悠真が静かに言う。
「……どっちも良い。
でも、違う」
その言葉に、
五人は自然と笑った。
「よし。
たまには気分転換で行ってみよか」
湊が言った。
「敵情視察や!」
陽斗が叫ぶ。
「敵言うな」
全員が突っ込んだ。
朝のフェリー。
海風が心地よく、
瀬戸内海は穏やかで、
水面がきらきらと揺れていた。
「なんか……修学旅行みたいやな」
紗季が笑う。
「いや、普通に楽しいなこれ」
陽斗がはしゃぐ。
凛は潮風に髪を揺らしながら、
「小豆島って、淡路島より“静かで柔らかい”感じする」
と呟いた。
湊は海を見つめながら、
「淡路島は“明るくて賑やか”って感じやもんな」
と言った。
悠真は海を撮りながら、
「……空気が違う」
と呟いた。
小豆島に着くと、
五人は観光案内所へ向かった。
「資料、めっちゃあるやん!」
陽斗が驚く。
「オリーブ、映画村、寒霞渓……
“観光の見せ方”が上手いなぁ」
紗季が感心する。
凛はパンフレットをめくりながら、
「淡路島は“広くて多様”やけど、
小豆島は“まとまりがある”って感じ」
と分析する。
湊は地図を見ながら、
「今日は日帰りやし、
行けるとこだけ行ってみよか」
と提案した。
そして、いよいよ小豆島を歩きだした。
オリーブ公園。
白い風車。
海沿いの道。
エンジェルロードの砂の道。
どこも美しく、
どこも淡路島とは違う“柔らかい観光地感”があった。
「……めっちゃええやん、小豆島」
陽斗が素直に言う。
「オリーブの香りがする……
淡路島にはない雰囲気やね」
凛が微笑む。
紗季はオリーブソフトを食べながら、
「なんか悔しいけど……
小豆島もすごい好きになってきた」
と笑った。
悠真は海を撮りながら、
「……落ち着く島やな」
と呟いた。
湊は静かに言った。
「小豆島、すごいな。
でも──」
四人が振り返る。
「淡路島も、負けてへん。
“素材の強さ”は絶対にある」
凛が頷く。
「うん。
淡路島は“食材の宝庫”やし」
紗季が拳を握る。
「料理も負けへんし!」
陽斗が胸を叩く。
「自然のスケールも負けへん!」
悠真が静かに言う。
「……動画の幅も、淡路島のほうが広い」
湊は笑った。
「よし。
小豆島に来て分かった。
俺ら、もっと頑張れる」
五人は海を見つめた。
小豆島の柔らかい空気。
淡路島の力強い空気。
どちらも美しい。
どちらも瀬戸内の宝。
そして五人は、
自分たちの島をもっと好きになっていた。
帰りのフェリー…
夕陽が海に沈む。
空は金色から桃色へ、
そして淡い紫へと変わっていく。
「今日、来てよかったな」
湊が言う。
「うん。
小豆島、すごいええ島やった」
凛が微笑む。
「でも──」
紗季が言う。
「淡路島も、やっぱ大好きやな」
陽斗が笑う。
「せやな。俺らの島やし!」
悠真が静かに呟く。
「……淡路島の良さ、もっと見せたい」
湊は夕陽を見つめながら言った。
「よし。
明日からまた頑張ろう。
淡路島を世界に知らしめるために」
五人の決意を乗せて、
フェリーは静かに淡路島へ向かっていった。




