第10話 悠真、弥生を蘇らせる
「次は……悠真の番やな」
湊がそう言うと、
悠真は静かに頷いた。
「……行きたい場所、ある」
「どこ?」
紗季が首をかしげる。
「ごっさかい遺跡。
弥生後期の……国内最大規模の集落跡」
凛が目を丸くした。
「五斗長垣内遺跡……?
あそこ、すごい広いよね」
陽斗は腕を組んで言う。
「悠真、歴史とか興味あったん?」
悠真は少しだけ視線を落とし、
「……あの場所、光が綺麗。
CGにしたら……絶対映える」
と呟いた。
その言葉に、
四人は自然と笑った。
「よし、行こか」
湊が言った。
五斗長垣内遺跡は
淡路島の山あいに広がる、
静かで、どこか神秘的な場所。
風が吹くと、
草原が波のように揺れ、
遠くの山並みが淡く霞む。
「ここ……めっちゃ広いな」
陽斗が呆然とする。
「弥生時代の集落跡やで。
国内最大級」
湊が説明する。
凛は草の匂いを吸い込みながら、
「なんか……時間が止まってるみたい」
と呟いた。
紗季は周囲を見渡し、
「ここに……昔の人が住んでたんやなぁ」
としみじみ言う。
悠真は、
静かにスマホを構えた。
風が吹き、
草が揺れ、
光が斜面を滑る。
「……光、完璧」
陽斗がすかさず突っ込む。
「またそれ!
ここでの“光”はなんやねん!」
悠真は珍しく、少しだけ笑った。
「弥生の……時間が見える光」
四人は一瞬、言葉を失った。
悠真はカメラの前に立つと、
いつもより少しだけ声を張った。
「ここは……五斗長垣内遺跡。
弥生後期の……国内最大級の集落跡」
風が草を揺らし、
その音が悠真の声に重なる。
「ここには……
高床倉庫が……何十棟もあったと言われてる。
穀物を守るための……大きな建物」
湊が小声で言う。
「悠真、めっちゃ喋ってる……!」
凛が微笑む。
「今日の悠真、すごくいいよ」
紗季は感心して言う。
「なんか……悠真の声、落ち着くなぁ」
陽斗は腕を組んで頷く。
「悠真、案外リポート向いてるんちゃう?」
悠真は照れたように視線をそらした。
「……CGで、全部再現する」
その日の夜。
湊の家に集まった五人は、
悠真のノートPCを囲んでいた。
画面には、
五斗長垣内遺跡の地形データが映っている。
「ここに……高床倉庫を置く」
悠真が静かに言う。
カチ、カチ、とマウスが動くたび、
弥生の建物がひとつ、またひとつと立ち上がる。
「すご……」
凛が息を呑む。
「これ……ゲームの世界みたいやん」
陽斗が感動する。
「いや、ゲームよりリアルやろ」
湊が言う。
紗季は画面に見入ったまま、
「悠真……天才やん……」
と呟いた。
悠真は淡々と作業を続ける。
「光源……調整する。
弥生の……朝の光にする」
画面の中で、
高床倉庫の影が長く伸び、
草原が金色に染まる。
「……光、完璧」
今度は誰も突っ込まなかった。
その光は、
本当に“完璧”だったから。
完成したCGの中で、
弥生の集落が息を吹き返す。
高床倉庫が立ち並び、
草原が風に揺れ、
朝の光が建物の影を伸ばす。
まるで、
2000年前の淡路島が蘇ったようだった。
「これ……投稿したら絶対伸びるやろ」
陽斗が言う。
「いや、まだ伸びへんと思う」
湊が冷静に言う。
「でも……
これを積み重ねたら、いつか絶対届く」
凛が微笑む。
紗季も頷いた。
「うん。
淡路島の歴史、こんなに綺麗なんやって
絶対誰かに伝わる」
悠真は画面を見つめたまま、
小さく呟いた。
「……淡路島の光、全部集めたい」
四人はその言葉に、
胸の奥がじんわりと熱くなるのを感じた。
淡路島を世界に知らしめる旅は、
またひとつ、新しい扉を開いた。




