第31話 邪教の村その6 完
「まさか儂の一撃を防ぐとはな」
村長は口ではそう言っているが余裕の表情。
「アレジオさん!? やっちゃってもいいんですか?!」
アレジオはぼーっと一点を見つめていて、当てにならなりそうもない。というか最初から当てにするつもりもなんかこれっぽっちもないけど。
せっかくの俺の渾身の嫌味攻撃も上の空で全然効いてないし……仕方ない俺がやるしかないか……
ということで俺は足に力を込めて、一気に村長の間合いを詰める。
歳のいっている村長に俺のこの速さは見えないはず。このまま殴り飛ばせば俺の勝ち。あの目から怪光線も別に大した技じゃない。俺なら避けられるし盾でも防げる。
そんなことを考えているそばから村長の目が光る。すっと首を曲げてその光線を躱し、おもいっきりボディを殴る。
あ……
俺の右拳はなんの抵抗もなく村長の体を貫く?……いや俺の右拳は村長の体を貫いたというより、空を切ったというような手ごたえといったほうが正しい。
村長の体を貫いた拳を見ると、俺の拳は一見すると村長の体を貫いてはいるのだが、村長の体は触れることなく、その拳が埋まる部分だけ闇の空間ようになっており村長に拳は届いていない。
「当たるまで殴る!」
両方の拳で数十発乱れ打ちするがどれもさっきと同じ状態になって村長に全くダメージが入っていない。
「ひゃっひゃっひゃ。無駄じゃ無駄! 儂の体には何人たりとも触れることはできんぞ!」
……ありゃなんだよ……攻撃が全く効かねーじゃねーか……
「おぬし……疾風のシュウを破り、サイクロプスを破ったその強さ気に入った。儂らの仲間にならぬか? おぬしに闇の衣で守られた儂を倒すことなどできんぞ」
俺はその言葉聞いてニヤリと笑う。
「……ばかめ。自分の能力を言うとはな。お前の負けだ」
そういうと村長は目を丸くする。
「おぬしにこの闇の衣が破れるわけなかろうが!」
余裕の表情をしている村長にもう一度間合いを詰める。そして今度は「光属性付与」と呟いて、右の拳で村長を殴りつける。
俺の拳が闇の衣に触れた瞬間、眩い光を発する。
そして俺の拳は村長の体に当たり、村長は吹っ飛んで壁に体をぶつける。
「ま、まさか……ガシャデール様より頂いたこの闇の衣が……」
「俺の光属性付与は(上)お前の闇程度じゃ遮れない!」
村長はそのまま気を失ったようでピクリともしない。
俺が村長に近づこうとすると突然アレジオが大声を出す。
「どういうことだこれは! 俺に邪教徒は報告といっただろ!」
えぇぇぇ……
「報告してましたが……」
「この馬鹿が! 俺が奴らの術にやられて意識を失ったのが分からんのか! 本当ににお前は使え無いやつだな!! 早く俺の手足の縄を解け!」
「……はいはい」
「『はい』は1回だろうが!」
手足の縄を解くとアレジオは目蓋を腫らしたまま怒りの表情を作って地団駄を踏みながらこう言った。
「この邪教徒め! この俺様をコケにしやがって! ここで叩き斬ってやるからな! おい俺の活躍をみてろよ!」
アレジオはそう言って村長のもとに歩き出す。
「部下の手柄は上司の手柄、三司祭のうちの一人のクビを取ったとなれば特別勲章だって貰えるな。そうなればこのところの失敗は帳消しだな。フフフ」
などとブツブツと呟きながら、肩を回して剣を抜いて村長に近づく。
「この邪教徒め! 俺が首を撥ねてやるからお前はそこでみておけ!」
アレジオが剣を振りかぶろうしたその時……
「儂を斬るというのかぁぁぁぁぁこの小童がぁぁぁぁぁぁ!!」
村長はそう言ってその目をカッと開く、すると「ひぃっ!」と目にも留まらぬ速さで屈むアレジオ。
「アレジオさんどうしたんですか?」
俺がそう問うと「だ、駄目だ……急に腹が……昨日夜の食事だ……平民の食事は俺の腹に合わないんだ……この腹さえなければ……今すぐにでもそいつを叩き斬るところだったのにぃぃぃ悔しいぃぃぃ!! この腹痛なら仕方ない今回はお前に譲る」そう言って腹を抑えている。
「は、はぁ……」
ということで、村長との間合いを詰めようとした時だった。背後になにか気配感じた瞬間……体を大きな手で鷲掴みにされる。そしてその手の主が雄たけびを上げた。
「オオオオオオオオオオオオオ!!」
ま、まさかサイクロプス……こんな時に限って第6感強化が仕事しないなんて……(上)なのに……
「クククク……どうやらサイクロプスはまだ生きておったようじゃな……」
村長はそう言って立ち上がると勝ち誇ったような顔をしている。
「お前は今ここで死ね!」
村長はそう言うと目から光線を発射する。
嘘だろ! 必死で身体を抜けだそうとしたが、サイクロプスの握力は非常に強く、瞬間的に抜け出すことはできそうにもない。当然、左手の盾も使えない。
村長の目から出た光線は俺の左胸を確実に貫く……
もう勝ったつもりなのだろう。光線を発射した村長は勝ち誇った感じでこういった。
「冥土の土産に教えてやろう。サイクロプスは弱点を攻撃しない限り超回復でどんなダメージを与えようが復活するのじゃ!」
「ふーん。そうなんだ」
村長の横に立っている俺はそう言った。
「な……どうやって抜け出したんじゃ……」
「冥土の土産に教えてやろう。俺は瞬間移動が使える」
「やれ、サイクロプス!」
そう言うとサイクロプスは俺との間合いを詰めてくる。
「どうせサイクロプスの弱点なんてそのつぶらなお目々だろ!」
サイクロプスが殴りかかってきてその一撃を躱すと雷属性付与と呟いて、目を思いっきり殴る。するとドーンと雷が落ちたような音がし、サイクロプスは身体を震わせながらその場に倒れる。
振り返ると村長の姿とアレジオの姿がない。
アレジオの叫ぶ声が聞こえてくる。
「おい! こっちだ馬鹿!!」
声の方を向くと村長がアレジオの喉元ににナイフを突きつけ石でできた祭壇の中央に立っている。
村長がブツブツ呟く声が聞こえてくる。
「本来ならば新月の夜にその血を捧げるのが一番じゃが……仕方ないここで此奴の血を捧げ、新たなる力を得て彼奴を殺す……」
村長がブツブツ言っている声を聞いてアレジオは青い顔で俺の顔を見ている。そして……村長が喉元にナイフを押し当てる。
アレジオは目から涙を零しながら「た、助けて……助けてください……」と口がそう動いた瞬間、俺は瞬間移動を使って光属性を付与した拳で村長をぶん殴った。
そのまま村長は吹っ飛んで再び壁に身体をぶつけ動かなくなった。
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