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第25話 幽霊

 王宮のトイレに瞬間移動で戻った俺は「はぁぁぁぁ」と深いため息をつく。


 次のお給料までまた雑草で飢えを凌ぐ日々が始まる……身から出た錆とは言え、出たばかりの給料全部突っ込むやつがいるか?


「はぁぁぁぁぁぁぁ……」


 いや……まてよ? 銀貨30枚で引くことはできたんだ。むしろラッキーじゃないか? もし銀貨30枚入れて何の成果も得られなかったときのことを考えてみろ……


 背中がゾッと寒くなる感じがする。当たったんだ。そう当たった。当たったんだからこれで良しだ!!



 さあ気分を入れ替えて……俺に新しい力を見てみよう。紙を見てみると

『★★★★★無限収納、右のズボンのポケットが無限に収納できるようになる』と書かれている。


 おお! 流石銀貨30枚入れただけのことはある! すげぇ使え……って今は甲冑着てるからズボンのポケットがない……


 この場合はやっぱり無限収納できないよな。せっかくの新スキルなのに使えないのは残念……


 色々と試したかったのに。ポケットより大きいものは入るのかとか。ポケットが無いのは仕方ない。


 もう一つの分身の方は使えるだろう。


 ふふ実は★★★★★の無限収納よりもこっちの方が期待してる。


 分身ということは俺がもう一人増えるということだろ? そうなれば……


 分身! と念じてみる。すると半透明な甲冑を着た人間が目の前に現れる。


 え……なんで半透明なの?


 はぁぁぁぁぁつっかえねぇぇ……


 クソが! 半透明じゃなけりゃ俺の代わりに色々と面倒くさいことやらせんのに……


 ……こんな半透明じゃバレるよな……絶対……


 そんなことを考えているとアレジオの怒鳴り声が聞こえてきた。

「おい! いつまでこもってるつもりだ!」


 ……そういえば仕事中でした……


 俺はトイレの出口に向かう。

「すいません……なかなか出なくて」


 穴からなかなか出なかったのは本当のことだしな。


「ったく30分もトイレに篭るアホがいるか!」


「すいません……」


「お前のような者が騎士とされることが迷惑だ! 即刻辞めてもいいんだぞ!」


「……」


「今回の件、本部に報告させてもらうからな!」


 ……ウェブ・ステイが大を漏らしかけてトイレに駆け込んで30分こもってました。って報告するつもりなの? こいつ……


 そう考えると笑いがこみ上げてくるのを必死に我慢して肩を震わせる。


「騎士がそんなことで動揺するな! この件も含めて報告するからな! 覚悟しとけよ!」


 なんとか笑いを堪えてアレジオに謝罪をする。

「す、すいません」


「行くぞ」


 アレジオに付いて王宮の見廻りの任務に戻る。

 すっかり日も落ちて、昼間見た王宮とは異なり少しあちこちに火が灯され少し幻想的な雰囲気となる。


 見廻りを終え騎士の屯所に戻ると他の騎士達が話しをしているのが聞こえてくる。


「俺見たんだよ……」

「何を?」


「幽霊……半透明の甲冑姿の騎士がさ……王宮西のトイレに……」


「それ見廻りの騎士じゃねーの?」


「いや、その騎士は半透明で向こう側が透けて見えてるんだ」


「そんなバカな」


「俺が嘘を言ってるように見えるか? 俺さっきトイレに行こうとしたら居たんだよ! 半透明の騎士が!」


 アレジオはフンッと鼻を鳴らすとその騎士達に聞こえるような大声でこう言った。


「幽霊如きで騎士が騒ぐとはみっともない! 俺の目の前に幽霊が現れたらそのクビを我が手で撥ねてやる!」


 アレジオがそう言うと、騎士達は俯いて黙ってなにも言わなくなったがしかし……


 半透明の騎士を見たという騎士はアレジオに食い下がった。

「だったら、アレジオさんがその騎士のクビを撥ねて来て下さいよ」


 アレジオは自信満々と言った感じで答える。

「容易いことだ。場所は王宮西のトイレだな……」


 なんか忘れてる気が……王宮西トイレ……王宮西トイレ……半透明の騎士……



 あ! 分身…… 元に戻すの忘れてた…すぐに分身を解除しないと……って面白いことを思いついちゃった……


「幽霊退治、ご一緒しますよアレジオさん」


 俺がそう言うとアレジオは得意気に話す。

「俺の幽霊退治は後世に語り継がれるものとなる。平民のお前が俺の活躍を後世に伝えるんだいいな」


 そしてアレジオと一緒に王宮西トイレに向かうこととなった。


 分身の方に意識を集中させると薄暗いトイレの中でぼーっと立っている分身に意識が行く。分身に指示をだしてトイレで待機させる。


 数分で王宮西のトイレにたどり着く。王族が使うトイレではないので照明などはなく薄暗い。


「ウェブ、先に見てこい」


「……俺が首を撥ねてもよろしいので?」

「いるか居ないか分からんだろうが!! 居もしないのにこの貴族である俺様がトイレに入るなどおかしいであろうが!」


「はいはい」

 心のなかでそう返事をして俺はトイレの中に入っていく。


 トイレの中に入ると俺は声を上げる。


「い、いました!! アレジオさん!!」


「わかった! 俺が首を撥ねる。いいな!」


 悠然とトイレに入ってくるアレジオ。


 その天井には俺の分身が……逆さになって宙づり、状態でアレジオの目の前にドンと落ちる。


「……」


 アレジオは何も言わず、剣も抜かずずっとそのぶら下がっている俺の分身を眺めている。


 ……バレた? いや薄暗いから俺って分からない筈だけれど……


「アレジオさん?」

 返事がない……


 分身がアレジオとの間にいるのでアレジオの顔がよく見えない。分身を消すとアレジオが目を開けているということは分かる。


 あれ? なんで返事しないんだろう……そう思って近づいてみると白目を剥いて立ったまま気絶している人間を俺は生まれて始めてみることになった。












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― 新着の感想 ―
[一言] なるほど、本体が真人間なら分身も真人間なのか
[気になる点] 甲冑を装備したままトイレなんて出来ないだろうし、甲冑を外したり装備したりするには時間が掛かるだろうから、 普通に考えたら、30分位掛かっても何もおかしくない気がするけど。
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