第24話 初任給。
騎士団に入って一週間が経った。アレジオは相変わらず偉そうで重箱の隅をつつくようなことをわーわーと喚いているが3日目辺りから俺は特に気にしてない。
朝起きるとデュークが話しかけてくる。
「今日は給料日ですね!」
デュークがそう言ってウキウキしている。
「入って1週間だけど貰えるの俺?」
「そりゃ貰えますよ。騎士団入団の支度金と一緒になってますし、僕たちと同じ額もらえるんじゃないですか? 貴族が多いですからね、あんまりお金の細かい事は気にしないんですよ騎士団って」
ああそうなんだ確かに貴族は細かい事気にしないもんな……確か……騎士見習いが貰える額は……
「銀貨30枚ですからね! 騎士見習いのお給料」
「うん」
「美味しいものでも食べに行きますか? 近くに美味しい店あるんですよね」
「あ……ごめん。初任給貰ったら使いたいことがあるんだよね」
「あっ! そうですよね。親孝行なんですねウェブさんって、まあ今度行きましょう。僕も初任給は親にプレゼントを上げましたよ」
「……うん。今度行こう」
すまない……デューク。俺の両親は既に他界している。そう俺は初めての給料の使いみちは決めているんだ。
今日は期間限定の★★★★★無限収納と★★★★分身の最終日……諦めていたけどまさか今日、給料が貰えるなんてな……
今まで俺を挑発するのかのように、期間限定、あと何日とかいう文字が俺の目の前に現れては消えていた……最終日の今日に給料が貰えるなんて運がAなだけはある。
もちろん、給料全部を穴に入れるなんてことはしない。銀貨3枚分だけだ。3枚分30枚分の紙が引ければそれでいい。それで★★★★★が引けなけりゃ縁がなかったと諦めるのみ。
ずっと草ばっか食うのも流石に飽きてきたし……貧民街のクトリフにも貧乏くさいと言われるぐらいだからな。もう草を食うのはやめよう!
ウキウキする気持ちを抑えて、いつものように受付に行ってアレジオを待つ。早速やってきたアレジオが俺にこう言った。
「今日は王宮の警護の任務だ。明日の朝までは帰れんぞ」と……
は? なんで急にそんなの任務が入るんだよ!! 運Aだろ俺!! と心の中で叫ぶ。
「お前も入って一週間だからな。そろそろ警護の任務についてもいい頃合いだ。それじゃ着替えにいくぞ」
そう言われ、更衣室に向かう。王宮の中で騎士は甲冑を纏うという不文律があるということで頭以外の全身を金属の甲冑で覆ってアレジオと一緒に渋々王宮に向かう。
黒い制服を着るのが騎士というイメージがあるが、この甲冑も騎士っぽくっていいなと歩くたびにカチャカチャと音を立てる足の音を聞きながら思った。
王宮は王様が住む宮殿で、玉ねぎのような形をした屋根が特徴的な真っ白な壁の建物が連って建っている。この国を象徴のする建築物で、この騎士団本部から徒歩3分でたどり着けるほど近い場所に建てられている。
王宮の門を守る衛兵に挨拶をしてから王宮の中に正面から入れるわけではなく、近くにある小さな扉から中に入る。
中に入って直ぐに騎士がいる詰め所に入る。すると金色の甲冑姿のオールバックにした黒髪に白い物が混じった50代ぐらいの男が詰め所に座っている。
その姿をみてアレジオは直立しこう言った。
「お、おはようございます! キングズガード!」
「うむ。おはよう。ファフナー公。今日は貴公が警護かね」
「はい!」
「隣のは噂の新人騎士か」
「ウェブ・ステイです」
「私がキングズガードのフォーサイトだよろしく」
フォーサイトさんはそう言うと立ち上がって詰め所を後にした。
王様の最後の盾と呼ばれるキングズガード。騎士団の中でも最も腕が立つ貴族の人間が、国王を護る任を与えられる。それがキングズガードと呼ばれるさっきのおじさんだ。
その腕前は剣聖にも並ぶとされるほどというのを聞いたことがある。
キングズガードが向こうにいったのを見てホッとしたような表情を見せるアレジオ。それからは王宮の中を見廻ったりする。
王宮の中では20名前後の騎士と200名程度の衛兵が毎日王宮の中で見回りなどの仕事をしている。
騎士は王様や王妃様、大臣などと言った重要人物の近くで警護ということらしい。
今日は初めてということで場所の説明などで終始し、次回から要人の警護任務ということらしい。
そして夕方になる。
突然の腹痛が俺を襲う。
「す、すいません……腹が……」
俺がそう言うとアレジオは不機嫌そうな表情で「あ? 腹だと? たるんでるからそんなことになるんだ!!」と怒鳴りつける。
「す、すいません……でも王宮の中で流石に漏らすわけにも……」
「行ってこい! お前がこんなところで粗相をすると教育係である俺が恥をかくことになるんだからな!」
「あ、ありがとうございます」
ということで俺は腹を抑えながらカチャカチャと音を立て走って騎士団本部の受付に瞬間移動をする。
「ウェブ・ステイですけど。お給料もらいに来ました」
「はい」
そういうと受付のおばちゃんはウェブ・ステイと書かれた小袋を俺に渡す。
ということで俺は甲冑を纏った姿で久しぶりに穴の前に立つ。
はやる気持ちを抑えながら俺は銀貨3枚だけを穴に入れる。すると『銅貨300枚分の入金がありました。10連引きますか』という表示が現れる。
うんと頷く。
最初の10枚は★★★★以上を引くことはできなかった。大丈夫、あと20枚ある。20枚。ということで次の10枚……分かってる。分かってるまだ最後の10枚がある……
……俺は甲冑を纏った状態で頭を抱える。
これは期間限定なんだ……いくか? あと銀貨3枚……そう銀貨3枚を使ってもまだ24枚残ってる! 大丈夫まだ草を食わなくてもいい。それにあと30枚で★★★★以上を引けばいいだけ。
――10分後
……え……もう残り銀貨3枚しかないんだけど……もう銀貨3枚なんか残しても仕方ない! 明日からまた草を食えばいいだけのこといつもと同じだ。
ということで銀貨3枚を穴に入れる。すると穴から金色に輝く光が……
ん? なんだこれは……ということで穴から紙を引っ張り出した1枚目……
まじか……★★★★分身……いただきました……そして最後の10枚目……え? こんなことってあるの? 俺の目に★★★★★無限収納の文字が見えたのだった。
まだ借金してないので真人間です。




