第26話 邪教の村その1
「幽霊のやつめ……俺に妖術を掛けやがって……」
アレジオは幽霊の妖術で立ったまま寝ていたと苦しい言い訳をし、俺はそれをニヤニヤしながら見ていた。
俺の便所の件は何故か報告をされなかった。
それから3日後。
副団長に俺とアレジオが呼び出される。
副団長室に入ると机に向かっていた副団長が顔を上げて話しかけてくる。
「ここから西に一昼夜のところにあるアリアダス村で邪教徒による蛮行が行われているらしい。お前たち二人にはその調査に向かって欲しい」
邪教徒か。邪神ガシャデールを崇拝してる連中だったっけ……この邪教徒の掃討も騎士団の仕事。確か人間を邪神の生贄するために人をさらったりしているとんでもない連中。
腕が鳴るぜ! 暗黒教団をぶっ潰した俺が今度は邪教集団をぶっ飛ばす! と意気込んでいると……俺の横に居るアレジオは肩をすくめながら答えた。
「邪教徒の調査? そんな下らない任務をこのアレジオにさせるというおつもりなのですか? 副団長は」
……一体この人は何様なんだ……
そう言ったアレジオに副団長はニコッと笑いかける。
「最近アレジオくんの元気がないなと思ってね。この名誉ある任務を二人に任せようと団長に進言したんだよ。アレジオ君が断ると言うなら別の人に任せようかな」
そういいながら立ち上がった副団長はアレジオの肩を叩きながら耳打ちをする。
聴覚強化(特)になっている所為で副団長がアレジオに何を言っているのかはっきりと聞こえてくる。
(最近、ミス続きだしここらで汚名を挽回しないと君の立場危うくなるよ。君のお兄さんも君の失態は知っているしね)
副団長がそう言うとアレジオは真っ赤な顔をしている。
「し、仕方ありませんな……副団長がそこまでいうならこのアレジオ、必ず役に立てて見せましょう」
「それじゃ期待してるよ。アレジオ君にウェブ君」
ということで俺達は馬車にのってアリアダス村というところに向かっている。騎士団という身分がバレると連中は姿を隠す。そのため自分たちはその身分を偽って村に潜入するということになる。
そのためのシナリオはアレジオが貴族で俺がそのお供をしている従者という設定で村に迷い込み村を調査するというものだ。
アリアダス村に向かう馬車の中、アレジオが俺に話しかけてくる。
「わかってるよなウェブ。邪教徒を見つけ次第、俺に報告。俺が邪教徒を全員叩き斬るからな。腰抜け副団長は調査だと抜かしやがったが、俺様による掃討作戦に変更をする」
「はい。逐一報告して遠巻きに見ています」
「俺の活躍をしかとその目に焼き付けておけ。そしてそれを本部に全て報告するんだいいな」
「分かりました。アレジオさんの活躍を逐一報告します」
「違うだろ? お前は俺の従者なんだからアレジオ様だろ?」
偉そうに怒りながらアレジオは言った。
夕方頃に馬車がアリアダス村の全景がみえる場所に辿り着く。馬車から降りると眼下に村の中央に教会らしき白い建物見え俺が指を差す。
「あそこの村ですね」
「ではいくぞ」
近くに馬車を止めて、俺が荷物を背負って二人で村に向かう。
村はずれにある家の扉をノックする。
「私、フォーデ家の従者をしているものですが、馬車が故障してしまって……ここまで歩いてきたのですが泊めていただけませんか?」
俺がそういうとドアが開き、中からくたびれた男の人の顔が見える。
「それは大変でしたね。どうぞおはいり下さい」
「ありがとうございます。こちらが我が主人のアレジオ・フォーデ様です」
アレジオは貴族らしい尊大な態度で家の中に入っていく。
「庶民の家は狭っ苦しくて息が詰まる」
貴族らしい嫌味を言うアレジオ。
家の中にはこの男性の妻なのだろうか、くたびれた表情をした女性と幼い子供たちが3人いる。
その表情と着ているものから明日食べるもの困っているというような貧しさが漂っている。
それでも気にかけてくれるのか女性が声を掛けてくる。
「お夕飯はどうなさいましょう」
「まだですがお構いなく……」
と俺が答えるとアレジオがさも当然とばかりに口を開く。
「庶民が貴族の俺様をもてなすのは当たり前こと。この家で一番の酒と馳走でもてなせ」
偉そうにアレジオが言うと奥さんは嫌な顔一つもせずに「はい。分かりました」と答え台所に入って行く。
ドアをノックする音が聞こえ、3人の男達が手に食材や酒瓶を持って訪れる。
「儂はこの村の村長ですじゃ。フォーデ家の方がこの村に訪れたと聞いたので、是非おもてなしをと思い馳せ参じた次第ですじゃ」
アレジオも偽名なのに悪い気はしなかったようで、満更でもない表情をしている。
そして次々人々が手に食材を持ってやってくる。
そして料理が並び、アレジオと村長を囲んで宴が始まってしまった。




