決意
「あぁ、どこだここ?見覚えがない部屋だ」
家にまで連れてきた男が起きたのであろう声を聞いて、寝室の方へ向かう。
「やあ、起きたのか。それにしても何もないようでよかったよ」
「・・・君は僕の知り合いかい?すまないけど、俺の記憶では君のことを全く知らないんだ。」
「いやいや、君の記憶は正しいよ。倒れていたところを偶然見つけてね。要約して言えば、そこら辺にいる学生が倒れている人を見つけ、勝手に正義面で助けようとしたって事かな」
「見た目によらず、かなりいい人なんだね」
いや見た目によらずって何だよ、という愚痴が出そうになったが、髪は茶髪に染め、両耳にピアスをつけている人が、真面目で堅実的に見えるはずもないので口を紡ぐ。
(だけど、初対面なのに失礼なやつだ。)
「そういや、お礼がまだだったね。ありがとう。僕は、河佐遙人。君の名を聞いても良いかい」
「大城雄馬っていいます。雄の馬で雄馬です」
「・・・そうか」といって遙人は、ベットから立ち上がり、全身を覆うほどでかいコートを着る。別にだじゃれを言ったわけではないが、滑り倒した後のような静けさだ。
しかしそんなこと、今の雄馬には気にもとめることはなかった。
雄馬は遙人が起きて数回の会話で、不思議な異様な感覚に包まれる。別に強さがわかるとか、そんなことはないのだが、超有名なプロの選手に会ったみたいに、どっかの大企業の社長に会ったみたいに、何か特別なものを感じる。
それはまるで、この出会いが最後のチャンスであるかのように。
「では、退出するとしよう。長居するのも迷惑だろうしね。今日は世話になった、ありがとう」
「ちょっと待ってください」
気づけば遙人を止めていた。まだ聞くべき事がある。これを逃せば必ず後悔する、と直感がいっている。
「うん?なんだい」
「最後に質問させてほしいことがあります」
「応えられる範囲のことであれば、答えよう」
遙人は、こちらに振り向く。正面から見ると、気圧されてしまうと錯覚するほどのなにかがある。
「今この世界の状況をどう感じますか。ハルトさん」
一瞬考えるようなそぶりをする。
「・・・そうだね、このままでは人類は終わるだろうね。外的要因、内的要因含めてね。そう遠くない未来、人類は最悪な状況になるだろうね」
「・・・・・」自分が思っていたとおり、いや自分なんかより何かを持つ遙人にいわれることで、ことの重大さがわかる。
「では君は、僕の回答を聞いてどう思う。なにをすれば、人類が、我々が平和に暮らせる世界になると思う」
わからない。これまでどうすべきなのか、考えてきたからこそ解決策が見当たらない。いや、元々答えなんてないのだろう。悪魔の証明だ。
あらゆる天才たちがたどり着けない答えに、凡人の俺がたどり着けることなどできないのだ。
だからこそ、これまで考えすらしなかった回答に導けた。
あまりにも馬鹿馬鹿しく、幼稚で素敵な回答に。
「・・・それは、この世界を支配する事だと思います」




