始まり
遙人は目を見開いた。
俺の顔を見て冗談などではなく、本気で考えているのだと知って。そして―――――
「おまえ、マジでそんなこと考えてんのか。そんな、子供の夢のような、幼稚な発想によくいたったな」
笑われた。いや、笑われた程度ではない。大爆笑だ。
これまで抱いていた遙人へのクールなイメージを払拭してしまうほど笑っている。
なんかここまで笑われると、恥ずかしさよりも、俺はお笑い芸人に向いているのかもしれないと思ってしまう。
「たしかに、馬鹿なこと言ってるなと思ってますけど、今のって、そういったシリアスな展開だったじゃないですか!」
「くくっっ、いや、確かにそうだな。俺が悪かった。今のはそういう展開だな。さー、雄馬くん。もう一度仕切り直しだ」
こいつ、明らかに茶化してやがる。後悔先に立たず。この言葉が、今日から俺の教訓として生きていこう。
「まぁ、でも・・・」遙人は再び笑みを向ける。今度は、侮辱したような笑みではなく、よくやったと褒め称えているような温かい笑みだった。
「おまえの野望、俺も付き合おう」
♢
きらびやかな装飾品がこれでもかと言うぐらい使用し、作られているJAGGの総本部。
誰もが一度、自分がJAGGの一員となり、本部の中で歩いている姿を想像する夢見る場所だ。
その栄光と名誉の具現化した建物の中を見下すかのように歩く男―――――神崎涙は、今日も大陸に単騎でいき、≪厄災の獣を≫殺しまくった。
彼がこの組織にいるのも、人助けや恨み、金などではなく、ただ生きているものを壊したいだけであった。
戦いたいのではなく、壊す。形あるものが見るに堪えない姿にさせることこそが彼の生きる意味であり、すべてであった。
かなり思考が危ない人のように感じるが、JAGG構成員の人格破綻者はかなりいるため、神崎が組織内で怖がられたりすることは、意外と少なかった。
それに、JAGG内の序列でもかなり上位に位置する神崎に、どうこういえるような人間はいないに等しいだろう。
「おい神崎、もう遊びから帰ったのかよ」
声のかかった方を向けば、髪は肩までバッサリ切った、かなり運動得意そうな女がいた。
「・・・なんだ、結衣か。帰ってきてたのか」
結衣と呼ばれた少女は、満点の笑顔を神崎に向ける。
「うん、正直ボスや幹部級の敵が来ないと楽勝だよ。面白みに欠けること地元一だよ」
「意味のわからん例えはやめろ。もう大体のやつはそろってんのかよ」
「JAGGに呼び出されてる上位のものたちは集まってるよ。あと、かんちゃんだけ」
「あっそ、なら待たなくてラッキーだぜ」
早くこないとみんなの迷惑だよ、お母さんのように注意してくる。
だからこの女は苦手なんだ。
実力者の中でも、上位にものたちが集まる会議が今から行われる。
これからの会議で、面倒事が起こるのは確実だろう。
個性の塊のような連中だ。人の話を聞くわけがない。
大変な未来を想像した神崎は、いち早く会議が終わることを願い、会場に向かうのだった。




