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完璧な王弟殿下には可愛さがあふれている  作者: 桃田産


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8/21

第8話 王弟殿下の奇術

 ある日、ジュリエットのお陰で体調がよくなったルミリオは、ノエルを伴って王室騎士団の様子を見に行った。


 訓練所では、真面目に鍛錬を続けている者と、隅に座り込んでだらだらと喋っている者に分かれていた。

 真面目に訓練している者の中には、ジュリエットの兄であるエリクの姿もあった。汗を流しながら、真剣な表情で剣を振っている。ルミリオは、その姿に安堵した。


「……あまり良い状況とは言えませんね」

「ああ」


 ルミリオは頷いた。


 ルミリオが長年、能力に苦しんでいたせいで、王室騎士団は副団長であるボーランジェ卿の独壇場だった。国王の息のかかっている者なのだから、好き勝手してきたのだろうと容易に想像がつく。


 ルミリオは副団長の執務室を訪ねた。

 扉を開けた騎士は、ルミリオの姿に目を丸くした。ボーランジェ卿に確認を取った後、部屋の中へ案内される。


 革張りの椅子に座っていたのは、腹の出た太った男だった。副団長の座に就いているとは到底思えないほど、鍛錬とは無縁そうな体つきだった。


「これはこれは、ルミリオ殿下。何か御用でしょうか?」


 取って付けたような礼儀正しい態度にイラっとしながら、ルミリオは微笑んだ。


「今まで体調が悪くて顔合わせもできなかったからね。ぜひ、騎士団員たちに挨拶をしたい」

「……そうですか」


「なぜ今さら」と疑問に思っていることが、ボーランジェの顔に書いてあった。

 とはいえ、王族であるルミリオの申し出を断ることはできず、騎士たちを集めることになった。


 副団長の部屋で待っている間、ルミリオは辺りを見回した。


 豪華な絵画に、高価そうな壺。

 どう見ても騎士団の副団長が使う部屋とは思えないほど、贅を尽くしている。


「ノエル、後で調べておけ」

「かしこまりました」


 しばらくして、騎士たちが集まったと報告を受け、ルミリオたちは移動した。


 ルミリオはじっくりと彼らを見渡した。真面目に前を向く者から、ルミリオを侮り、周りの者と喋っている者まで様々だ。

 無理もない。ルミリオは、まだぼさぼさの髪に痩せ細った体のままだった。


「今日は、君たちに挨拶をしようと思ってね」


 ルミリオは内心を隠し、笑顔を見せた。

 親睦のために素手で握手を交わそうなどと適当なことを言い、一人一人と握手を交わしていく。


「ぐぅ!」

「うっ!」


 握手を交わした騎士の身体が光ったかと思うと、胸を押さえて苦しみながら倒れた。

 騎士たちの間で動揺が走るが、ルミリオは行動を止めない。

 ルミリオの後ろでは、ノエルが身体の光った騎士の名前を紙に書き留めていた。


「殿下!!」


 異常な光景に、ボーランジェは止めようと声を上げた。


「何かな? ボーランジェ卿。邪魔だからどいてくれないかい?」


 ルミリオは冷めた目でボーランジェを見た。


「……」


 相手は腐っても王族だ。現在は見放されている状況とはいえ、無理やり止めることはできなかった。

 ボーランジェが引き下がると、ルミリオは再び騎士たちと握手を交わした。


 全員ではなく、一部の者の身体が光り、その中には倒れる者もいた。

 倒れるまでいかなくても、心臓を押さえて苦しむ者もいた。


 その光景が、何も知らない騎士たちの恐怖をさらに煽った。


「殿下、いったい何をなさったのですか……?」


 ボーランジェが怯えた様子で尋ねた。


「なに、挨拶がてら奇術を披露しただけだ」

「奇術ですと!?」

「ああ」


 ルミリオはニヤリと口角を上げた。


「私に害をなすような真似をすれば、もっと苦しむことになる。それだけ覚えておけばいい」

「……!」


 騎士たちは青ざめた。


「それから、このことを国王陛下に報告する必要もない」


 ルミリオは冷たい目でボーランジェを見た。


「余計なことをすれば、次にどうなるかは分かるだろう?」


 誰も答えなかった。


「さて」


 ルミリオはボーランジェへ近づいた。


「あなたとも握手をしておこう」

「なっ……」


 ルミリオがボーランジェの手首を掴む。


 すると、ボーランジェの身体が光り、そのまま床へ倒れ込んだ。


「副団長!」


 騎士たちが駆け寄る。


 ルミリオは倒れたボーランジェを見下ろした。


「……こいつもガイドだったか」


 ルミリオは意外そうに片眉を上げた。


「殿下……」


 エリクが戸惑った表情でルミリオを見つめた。

 エスパーとガイドのことを知る彼だけは、ルミリオが何をしたのか知っていた。


 ルミリオはエリクに視線を向けると、人差し指を唇に当てた。

 エリクが頷いたのを確認すると、ルミリオは何事もなかったかのように踵を返した。


「行くぞ、ノエル」

「ああ」


 二人はその場を後にした。


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