↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完璧な王弟殿下には可愛さがあふれている  作者: 桃田産


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
16/21

第16話 能力者の検査

 ロヴァーン公爵が主導して進めていた能力者の調査が、貴族を対象として行われることになった。


 平民を対象とした調査では、すでにある程度のデータが集まっているらしい。今度は貴族の中に、どれほどのエスパーやガイドがいるのかを調べるのだという。


 私も検査日程を知らせる手紙を受け取り、マクシム様と共に王宮へ足を運んだ。


「個室と会場のどちらがよろしいでしょうか?」


 受付でそう尋ねられた。一瞬、予想していなかった質問に戸惑ったが、これまでの検査でも個室を希望する人がいたのだろうと納得した。


「会場でお願いします」

「かしこまりました。こちらが検査場です」


 案内された広間には、男女の騎士たちがずらりと並んでいた。

 エスパーとガイド、それぞれの能力者が集められているらしい。


「まずは、エスパーかガイドかを判定します」


 説明を受けながら様子を眺めていると、椅子から立ち上がった貴族が、ガイドと書かれた腕章をつけた騎士の手を握った。


「……あなたはエスパーです」

「次の方」


 今度の貴族は、エスパーと書かれた腕章をつけた騎士の手を握った後、ガイドと書かれた腕章をつけた騎士の手を握った。


「能力者ではありません」


 そう判定された貴族は、そのまま会場を出ていった。


 判別するための機械がないので、このような方法で振り分けているのだろう。貴族が能力者の手を触れるたび、担当者が結果を紙に書き込んでいく。


 エスパーと判定されたマクシム様は、別室での検査へ進んだ。


 どんな能力を持っているのか。能力はいくつあるのか。どれほどの強さなのか。どこまで遠くのものを感知できるのか。一人ひとり、細かく確認されていく。


 五感すべてに能力を持つ者もいれば、一つの能力しか持っていなくても、その力だけが突出している者もいるらしい。

 そうした結果をもとに、エスパーにも大まかな等級がつけられる。



 一方、私のようなガイドは、別室へ進むと実際にエスパーへガイディングを行うよう指示された。


 どの等級のエスパーまでガイディングできるのか。それによって、こちらも大まかな等級を決めるらしい。

 私の等級はA級と判定された。思っていた通りの結果だった。


 さらに問診まで行われ、その後は医師による診察も受ける。

 想像していたよりも、ずっと本格的な検査だった。


「うっ……」


 検査室を移動していると、突然、最初の広間の一角から苦しそうな声が聞こえた。


 何事かと思って目を向けると、エスパーと書かれた腕章をつけた騎士が口元を押さえている。その前には、手を差し出したまま固まっている貴族の姿があった。どうやら、ガイディング中にエスパーの騎士が気分を悪くしたらしい。


「大丈夫ですか?」

「……少し、気分が……」


 担当者の一人が騎士に付き添い、もう一人が動揺する貴族に退出を促した。


「やはり、ガイディングには相性があるみたいですね……」


 顔色の悪い騎士が連れていかれると、担当者たちは小声で話していた。


 検査が進むにつれ、この国でも『エスパー』や『ガイド』について、詳しいことが少しずつ明らかになっているようだった。

 前世で知っていたのも、あくまで作品の中での知識だ。細かな設定は作品によって違っていたし、現実のことまでは分からない。


 こうして実際に調査が進んでいることに、私は安堵した。


 検査を終えて歩いていると、ふと見覚えのある姿が目に入った。


「ベルトラード!」


 私が声をかけると、ベルトラードがこちらを振り返った。


「ジュリエット!」


 嬉しそうに駆け寄ってくる。


「ベルトラードも検査に来ていたのね」

「ええ。侯爵家も受けるようにと言われたから」


 二人で話していると、ちょうどマクシム様が姿を現した。


「マクシム様も無事に終わりましたか?」

「ああ」


 検査が終わったので、帰りの馬車を待つ間、客間の一つでお茶を用意してもらうことにした。


「今日は随分疲れましたね」


 私がそう言うと、ベルトラードが頷いた。


「思っていたより大掛かりでしたわ」

「マクシム様は?」


 私が尋ねると、マクシム様は胃の辺りをさすりながら口を開いた。


「……味覚の調査が大変だった」


 そう言った途端、マクシム様は「うぷっ」と口元を押さえた。


 一体どんな調査だったのか、聞きたいような聞きたくないような……。


「お疲れさまでした」


 私は当たり障りのないことしか言えなかった。


「私、ミントティーを頼んできますね」


 そう言って、ベルトラードは使用人のもとへ向かった。


 しばらくして運ばれてきたミントティーを飲むと、マクシム様の表情が少し柔らかくなった。


「ありがとうございます」

「いえ。無理なさらないでください」


 そう言って微笑むベルトラードの頬が、ほんのり赤く染まっていた。


 目の前で繰り広げられる青春に、なんだかむず痒い気持ちになる。

 私は二人の会話が続きやすそうな話題を一つ振った。


「ベルトラードって、何か趣味とかある?」

「趣味?」

「うん」


 マクシム様が好きなことが分からないと言っていたので、いろんな人の話を聞けば、探すのにも役立つと思ったのだ。


「そうね。本を読むことは好きよ。……子供っぽいかもしれないけど」


 そう前置きしてベルトラードが一番好きな本だと口にしたタイトルは、童話だった。


 悪いドラゴンにお姫様がさらわれ、神から力を得た勇者が助けに行く物語らしい。


「俺もその本は読んだことがあります。幼い頃に母上が読んでくださったので」

「まぁ、本当ですか?」


 ベルトラードはぱちりと手を合わせて喜び、どこが好きなのか、どんなところにわくわくしたのかを楽しそうに話し始めた。

 いつもは無口なマクシム様も、自分から話題を振っていた。私から見ると、表情もどこか楽しそうだ。


 やがて馬車が到着したと連絡があるまで、私は静かに二人の会話に耳を傾けていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。