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王妃は最初の演奏で泣き、二度目で恋をし、三度目で秘密を漏らす ②
二度目で、王妃は恋をした。
最悪である。
しかも本人、最初は認めない。
「これは芸術への敬意」
「音楽的感銘」
「魂の共鳴」
必死。
オタクが推しへの感情を“解釈”で誤魔化してる時と同じ顔してる。
だが演奏中に限界が来た。
今夜は弦楽四重奏だった。
ルシアンがチェロ奏者へ視線を送る。
それだけ。
ただそれだけなのに。
(あっ……今の目……だめ……)
王妃、終わる。
完全に。
厄介なのが、ルシアンは別に誘惑などしていない。
天然で人を狂わせてる。
歩く文化災害である。
それ以降、王妃は毎晩演奏会へ通った。
最前列。
ほぼ皆勤。
貴族たちは噂した。
「王妃様は芸術にお詳しい」
違う。
限界オタク化してるだけである。
もう演奏始まる前から呼吸浅い。
低音来るたび肩震えてる。
完全に“浴びに来てる”。
そして三度目の夜。
事件は起きた。
演奏後、王妃は完全にふわふわしていた。
魂が。
低音で。
ルシアンが静かに近づく。
「……お楽しみいただけましたか」
その声はダメ。
音楽終わったあとに“生声”出すの反則。
ライブ後MCみたいな破壊力ある。
王妃は真っ赤になった。
「あ……え、ええ、とても……」
だめだ。
語彙が死んでる。
そしてルシアンは微笑む。
「それは光栄です」
近い。
顔が。
香水の匂いがする。
いや違う。
これは楽器の木の匂いだ。
ニスと古い薔薇みたいな香り。
官能小説か?




