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王妃は最初の演奏で泣き、二度目で恋をし、三度目で秘密を漏らす ①
王妃セレスティナは、芸術を愛する女だった。
というか、芸術しか愛せなかった。
王との結婚は政略。
会話は薄い。
愛はない。
あるのは義務だけ。
まあ王侯貴族、大体そんなものである。
豪華な牢獄だ。
だから彼女は、音楽に逃げていた。
絵画。
詩。
歌劇。
「感情」というものを、安全に摂取できる唯一の場所だった。
少なくとも──
ルシアンが来るまでは。
最初の演奏で、王妃は泣いた。
静かな夜想曲だった。
ただ低音が、妙に深かった。
まるで誰かに背骨を撫でられているみたいな音。
王妃は思わず息を呑む。
(な、なに……これ……)
ヴァイオリンの低い弦が、妙に深く鳴った。
その残響が、尾てい骨に来る。
いや本当に。
比喩とかではなく。
身体の奥へ、音が入ってくるのだ。
しかもルシアン、表情が一切変わらない。
淡々と弾く。
その無機質さが逆にダメ。
“誘ってないのに色気ある人類”が一番危険である。




