正常な動作です
製作時間:三十分くらい
ジャンル:SFコメディ
――説明書にもない意外な機能です。
「はぁ~」
男はため息をつく。最近、彼女に振られた男は、ソファでうなだれている。
部屋は、ロボット掃除機の駆動音だけが響いている。電池は半分を切っていて、そろそろドックに戻るころ。
しかし、掃除機は唐突に合理的な動きを失ってソファへと勢いよく、厳密にはロボット掃除機が出せる最大速度で進む。
ぶつかったのは、ソファよりはみ出ていた腕だった。
「いった……くない!」
男は唐突にぶつかってきたロボット掃除機に困惑しながら、ソファの上に立つ。一体何があったのか、それはこのロボット掃除機の隠し機能がある。
それは、男の気持ちが証明していた。そう、さっきまで沈んでいた気持ちがとんと減っていたのだ。
男もそれを気づいていた。だからなのか、男は困惑したままロボット掃除機を追いかける。ロボット掃除機の速度で。
ロボット掃除機は何事もなかったかのようにドックに戻る。しかし、問題はそこから。溜まっていたゴミが出すとステーションに吸い上げられていく。その時、明らかにいつもはしない異音がしたのだ。
「え? 何、何を今吸ったの、ねぇ!?」
男は、ロボット掃除機の視点に合わせながらそう言う。すると、ロボット掃除機のセンサーが反応する。
ドックから、一瞬だけ離れ、男の額にぶち当たり、バックしてドックに戻る。また異音がする。
「え? 本当に何を吸ってらっしゃるの? ねぇロボット掃除機さん!?」
男は当たり前のようにロボット掃除機に話しかけ、ロボット掃除機は正常な動作をしていますと言わんばかりに沈黙をする。
実は、男は今から夕ご飯を買いに行くために外出する予定だった。その時、雨に降られてびちょぬれになる予定だったのだ。
しかし、男がそれを気づくことは永劫なかった。なにせ、今のロボット掃除機の一見不可解な行動によって消え去ったのだから。
ロボット掃除機がセンサーで検知したのは不幸の種や、心の澱だった。
「くっ! 開け、開けごまぁ!」
男はそんなこともつゆ知らず、全力でダストボックスを開けようとする。無駄である。不幸の種などを吸い込んだ場合、処理が終わるまで開かない仕様だ。特に呪文で開く仕様もない。
「い、いつかその謎動作解き明かすんだからね!」
別にツンデレ的な言動をしても空かないものは開かないのである。そんな男が、ロボット掃除機の機能を理解し、悪用とするのは、もう少し後の話。
お題:『自動掃除機ロボットの反乱(?)』
【設定】
ある家庭で健気に働く、最新型の自動掃除機ロボット。彼には、人間には見えない「あるもの」が見えていて、それを掃除することを使命としています。




