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6話 封鎖
王城からの書簡は、翌朝届いた。
封蝋は王家の紋章。
文面は礼を尽くしている。
だが、それは要請ではなかった。
意志だった。
──正式な提案を行う。
屋敷の空気が変わる。
門の警備が増える。
私の外出予定が再確認を経るようになる。
理由を問う必要はない。
誰が動いているのか、分かっている。
執務室で、ビアンカは静かに言った。
「夜間の出入りを制限いたします」
「いつから?」
「本日より」
机の上には、私の予定表。
赤線で修正が引かれている。
既に決定事項だった。
「やりすぎよ」
「王族は段階を踏みません」
視線は書類に落ちたまま。
感情を削いだ声。
「接触経路を断ちます」
「私は物じゃない」
言うと、彼女は一瞬だけ沈黙した。
「承知しております」
それ以上は続かない。
夜。
金属音が廊下で鳴る。
一度。
二度。
私は扉を開けようとする。
内側の鍵は回る。
だが、開かない。
外から固定されている。
「処置です」
扉越しの声。
冷静で、揺れない。
「王子殿下が正式に動く前に、遮断いたします」
「これは監禁よ」
「保護です」
声は低い。
感情は含まない。
足音が遠ざかる。
金属音が、最後にひとつ鳴る。
夜は、閉じた。




