25話 崩落
第一王子は理解していた。
再評価は時間の問題だと。
だがまだ、終わってはいない。
「議会を押さえろ」
低い命令。
「三家の一角を崩せ」
焦りはある。
だが理性は残っている。
だが。
三大貴族の一角が動かない。
沈黙を守る。
それは拒絶と同義だった。
王子は最後の手を打つ。
「第二王子の財務監査も行え」
矛先を向ける。
巻き込む。
均衡を壊す。
その動きが、決定的だった。
議会は即座に反応する。
「王位継承者による政治的圧力」
名目が変わる。
疑義は“財務”から“資質”へ。
非公開会議が再び開かれる。
今度は結論が出る。
議会長が告げる。
「第一王子殿下の継承順位を一時凍結する」
静かだが絶対的。
第一王子は立ち上がる。
怒鳴らない。
否定もしない。
「理由は」
低い声。
「信頼の欠如」
一言。
沈黙。
長い沈黙。
第二王子が前へ出る。
表情は変わらない。
「兄上」
短く一礼する。
勝者の顔はしない。
第一王子は理解する。
ここで抗えば、完全な失脚。
沈黙を選ぶ。
「……好きにしろ」
低く言う。
それが最後の抵抗だった。
王城を出る頃には、噂は広がっている。
「継承凍結」
それは事実上の退位。
ヴァルディエリ家。
報が届く。
「第一王子、継承順位凍結」
当主が静かに告げる。
ビアンカは目を閉じる。
安堵ではない。
終わりの確認。
私は窓辺に立つ。
一年は待たなかった。
王位が揺らげば、婚姻の話は消える。
「終わりましたか」
ビアンカが問う。
「いいえ」
私は答える。
「均衡が戻っただけ」
だが。
第一王子は、もはや王位継承者ではない。
王城の歯車が、静かに位置を変えた。




