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20話 舞台は王城

王城は静かに軋み始めていた。


表向きは平穏。


第一王子は笑顔で執務に臨み、社交界では余裕を見せる。


だが財務局では、別の空気が流れていた。




「この予算超過は何だ」


低い問いが落ちる。


私的支出。


別邸維持費。


宝石購入。


名義は側近。


だが流れは一本に繋がる。



「殿下のご指示では」


声はすぐに飲み込まれる。


だが疑念は消えない。



その報告は、やがて別の耳に届く。


第二王子。


第一王子の弟。


「兄上が焦っているな」


静かな呟き。


笑わない。


怒らない。


ただ記録を集める。




一方、ヴァルディエリ家。


港はさらに締め付けられた。


検査は倍。


商会の取引先にまで監査が入る。


露骨な圧。



焦るのは第一王子だった。


議会の視線。


財務の確認。


噂の拡散。


思惑通りに進まぬ状況。



「港を止めろ」


命令が飛ぶ。


「商会を締め上げろ」


側近が躊躇する。


「殿下、それは」


「黙れ」


短い怒声。


理性が削れている。



そして。


最後の一手。



「舞踏会を開く」


王城主催。


正式な招待。


ルチア・ヴァルディエリの名が明記される。




拒否すれば不敬。


出席すれば王子の掌。


完璧な圧。




その招待状がヴァルディエリ家に届く。


応接室。


私は封を切る。


静かに読み終える。


「罠だな」


当主が言う。


「ええ」


私は頷く。



ビアンカの指がわずかに震えている。


「危険です」


声は抑えられている。


だが瞳は揺れる。



「逃げれば殿下の勝ち」


私は即答する。


「王城で決める」




沈黙。


短いが重い。


当主が静かに言う。


「準備を整えろ」


止めない。


揺れない。




夜。


私は窓辺に立つ。


港は止まり。


噂は広がり。


王城は舞台を用意した。



だが内部は裂け始めている。


第二王子は沈黙を守りながら記録を集めている。


第一王子は焦り、圧を強める。




一年。


その猶予は、王子にとっても刃だ。

王城。


舞踏会。


王子は罠を張ったつもりだ。


だが王城は、殿下だけの舞台ではない。




私は静かに息を吐く。


「舞台は整った」


終わらせるとは言わない。


まだ宣言しない。



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