2-2-4"幕間"2-3-1
クエストを終えた「ガブリエル」は、ギルド「神の夜明け団」の専用ロビーに向かった。
「ジョージアちゃん、いるぅー?」
白銀に輝く雲の床と輝かしい空の天井、そしてシンプルなロングテーブルといくつかの椅子で構成されたそのギルド「神の夜明け」専用ロビーには既に先客がいた。
「ジョージアはここに。ガブリエルお姉様」
座って聖書を読んでいたジョージアは、立ち上がって恭しく一礼する。
「キミがぁご執心のぉ勇者ああああ、会ってきたよお」
そう言って「ガブリエル」は先ほどのクエストのデーターをジョージアに送信した。
「ありがとうございます!!!」
データーの受信を確認しやや大袈裟に頭を下げたジョージアは、再び座り受け取ったデーターを食い入るように見始めた。その表情は真剣そのものである。
「お礼はいいよお、お婆ちゃんもぉ、レアカード手に入ったしぃ〜」
「ガブリエル」は自らの神器「聖石碑テン・コマンドメンツ」から取り出した1枚のカードを見つめる。それはタロットカードの「No.16 塔」と共に勇者ああああのアバターアーマー姿が描かれたカードだ。レアリティは背景がキラキラ輝く高レアリティで、彼女の人生において「貴重な出会い」を意味するもの。しかし、その顔は嬉しそうでも残念そうでもなく、ただただ無感情に高レアカードを見つめていた。
「第八の鍵、第五の鍵……全部で九つ。レイガルダイン……レーヴァテイン……」
しかし、ジョージアは「ガブリエル」のカードには興味を示さず心牙の一挙手一投足に注目しながら、メモをとり時折他のデーターを参照しつつブツブツと独り言を言う。
「勤勉だねぇ〜……」
本当に欠伸をしながら、「ガブリエル」はやや呆れたような顔でジョージアを横目で見ている。
ふと物音があったので「ガブリエル」がそちらを見やると、人の頭ほどの大きさの人形のような人影がテーブルの上に胡座をかいて座ったところだった。
「あらぁ〜ミカエルちゃんもいたんだあ。レッドキャップちゃんだよね?」
やや遠かったからか、「ガブリエル」はやや目を細めて確認するようにその小人、あるいは妖精に話しかける。
「オイラはいたぜ、最初からな」
「ミカエル」「レッドキャップ」と呼ばれたその小人、あるいは妖精は、燃えるように赤い瞳と、赤い海賊帽を被っており、「ガブリエル」、ジョージアと同じく頭には小さいが天使の輪が浮かんでいる。
「ガブリエルまで興味を持つレベル1か。オイラもちょっと興味出てきたぜ」
少年とも少女とも区別がつかない顔付きに反して、その口振りは粗暴で男性的だ。
「レッドキャップちゃんが興味持つなんて珍しいねぇ」
「オイラも興味ありますよ、ガブリエルさん」
「レッドキャップ」に続いて小人、あるいは妖精たちがわらわらと四体ほど机の下から机の上に現れる。それらは青、緑、桃、黄と色とりどりだった。その中でも特に青い髪が特徴的な、小鳥のような翼と魚の尾ヒレを持つ者が優しくも荘厳な海風のような声で歌いあげるように告げる。
「センパイを確実に攻略するには……やっぱり、第九の鍵をもう一度見たいですね……」
データーを食い入るように見ていたジョージアが独り言を漏らした。何度データーを見返しても、レイガルダイン第九の鍵は劫火に阻まれてどうやっても解析不能だったからだ。
「第九の鍵をもう一回使ってるとこが見たいってことお? 死にかけた上で周囲のマナが十分に励起してないと使えないみたいだけどお……即死させずにって難しいんじゃない? ひ弱過ぎて強く当たると簡単に死んじゃいそお〜」
「はい……単に決闘を挑んだだけでは、逃げ回ってしまうでしょうから、シチュエーションも大事かと」
「じゃあ、今度はオイラが取材をしてみるかのう!」
緑髪が特徴的な妖精、あるいは小人が、老人のようにしわがれた声を張り上げ、その背丈に見合わぬハンマーを振りかざして言う。
「本当ですか!?ミカエルお姉様!」
「べ、別にジョージアのためってわけじゃないんだからね!」
更に桃色の髪が特徴的な妖精、あるいは小人が花のようなドレスと花の香りをふわりとさせて鼻をフンスと鳴らす。
「この前の妖精新聞の売り上げ、良かったなぁ!」
更に更に黄色の髪と髭が特徴的な妖精、あるいは小人がその樽のようにずんぐりむっくりとした体を震わせ、酒やけしたガラガラ声で、されど瞳は宝石を見るように輝かせて宣う。
「うっし!じゃ、次の取材先は決まったな!」
「レッドキャップ」が号令をかけるかのように右手を挙げる。
上官の命令に従う軍人のように、あるいはボスに従う下っ端のように他の四体が背筋を伸ばしそれぞれ決めポーズをとる。
「「「「「噂あるとこオイラあり!妖精戦団フェアリンジャー!真実求めて、いざ出陣!」」」」」
そして5つの小さな妖精が一つになった時。そこには優に3mを超える、角ばった全身鎧のような巨大な一つの存在があった。




