9日目-4
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屋上は物こそ少ないが全体的に狭かった。左右の塔を繋ぐ門上の通路は大人が三人横に並べばもう限界だ。
関所があるにもかかわらず、橋の途中に門塔を作ったのは結界柱を設置するためである。橋の真ん中に結界柱をどんと置いては通行の邪魔なので、門という形態をとって下を潜り抜けられるようにしたわけだ。この門塔は崖下の景色を楽しむための展望設備ではない。そう考えると手狭なのは当然と言えた。施設の主は人間ではなく結界柱だ。
肝心の結界柱は通路に仮置きされていた。縦長の六角錐の形をした水晶であり、継ぎ目一つない滑らかな造形と透き通るような翡翠色が美しい。
ただしその大きさは異常だ。通路の端から端まで結界柱で塞がっているのが何よりの証拠である。
風魔法で浮かせればいいとはいえこんな巨大な物をよく運んだなぁ、とユイは感心した。きっと何人もの魔法士が汗だくになりながら頑張ったに違いない。
だがそのお陰でここに結界を築ける。今は休眠状態だが、稼働させれば大橋を含んだ関所までの一帯を守護できる。魔族の襲撃から人々を守れるのだ。
ユイは逸る気持ちを押さえ、何気ない様子を装って提案した。
「ねえ、結界はいつでも稼働させられるんでしょ。なら私が今稼働させようか? そうしたらみんな安心だよね?」
「とても魅力的な提案だけど、残念。君にはまだ早いよ。それにこれはマリスレイス式だ。内部の仕組みがうちのと微妙に異なるから、教えた稼働の方法そのままは適用できないんだよ。……というか驚かないんだね。結界柱の中では小さい方とはいえ、この大きさの自然物は他にそうないのに」
「そっ、それは……そう! 元の世界には鍾乳洞があったから! 馬鹿でかい鍾乳石だと思えば!」
「鍾乳石と結界柱は全くの別物じゃないかな」
「うっ……こ、こういうのは感覚の問題でしょ!」
口に出してから気付く。合理的な根拠を求めた会話に感覚論は悪手だ。この戦いは分が悪い。下手すれば芋づる式にユイの秘密が全て暴かれかねない。
ユイは追撃を全力で警戒しながらじり、と一歩下がった。頬に冷や汗が浮く。だがレヴィンは「もっと可愛らしいところを出してくれてもいいんだよ」とだけ言い、あっさり引いた。
「魔獣の出没しやすい地域だが、ここは結界石で守られている。焦らなくてもそうそう危険は訪れないよ。もちろん作業員たちの身の安全も保障されている」
「……え。あ、うん。それなら……いいんだけど」
よくない! と声なき声で反駁する。半ば予想していたが、こうも結界の稼働は難しいものなのか。
かくなる上は強引な手段に訴えるしかない。
ユイが仄暗い覚悟を固めた、その時だった。激しい爆発音が足元を揺るがした。




