シスコン漏洩?
「要はアルバイトを使うと思えば良いんだよ。取りあえず任せられるとこは俺達に任せて、九奥は重要な部分の仕事や最終チェックをする。取りあえず、今はそれで乗り切って、後の事は後から考えれば良い。花邑も、今日は特に予定無いんだよな?」
「う、うん! 全然大丈夫やで!」
「OK。この量なら三人でやれば二、三時間も掛からないだろ」
まあ、本当のバイトの方は遅刻確定だけどな。
幸い、週初めだから店もそこまで混まないだろうし、蓮花さんや桐生さんにも、『学生は学業が最優先。学校で何かある時は、遅刻や当欠も連絡すれば問題無い』と、有り難いお言葉を頂戴している。今回は緊急事態だし、甘えさせて貰おう。
「……良いの? 本当に?」
九奥はおずおずと上目遣いに俺達の顔色を窺う。その大きな空色の瞳は潤んでいて、まるで澄んだ湖面の様だ。……うん。そうやって頼めば、大抵の奴は何頼んでも頷くと思うよ? 俺は邪な気持ちなんて一切無いけどね?
「良いも悪いも、自分の学校のことだし、人手か足りないなら手伝うのは当然だ」
「ウチも良いよ! と言うか、そもそもウチが言いだした事やし!」
「で、でも私、さっき、あなた達に八つ当たりしちゃってっ」
シワになるほど強くスカートの裾を握りながら、九奥は震える声を漏らす。
ちっ……あ〜、もうっ!
「ひゃっ!? ちょっ、何をっ!?」
俺は思わず九奥の頭に手を伸ばし、グリグリと乱暴に撫で回す。
小さい頃の泣き虫だった春香に、そうしてやった様に。まあ、春香にはもうちょっと優しくしてやったけど。同級生相手だし、こんなもんだろ。
「悪いと思ってんなら、先ず始めに言うことがあるんじゃねーの?」
「へっ!? あ……ごめん、なさい」
「ん。で? 他には?」
「うぅ……て、手伝って、下さい。お願いします」
「ん。よろしい」
やっと素直になった九奥の頭から、俺は手を離す。すると、横から妙に鋭い視線を感じた。
「じぃぃぃぃぃ」
「……何だよ? 花邑」
「べっつにぃ〜? 随分と女の子の扱いに慣れてはるなぁ、と思っただけですけど?」
「なっ!? べ、別に慣れてねーよ! 昔から妹が泣いたりした時はこうしてたから、つい手が勝手に動いただけで……」
「へ〜。ふ〜ん。ほ〜ん」
「と、とにかくそういう事だから! あ、俺バイ、じゃなくって! 遅くなるって家に電話して来るわ!」
俺は無理矢理そう締めくくり、ドアに向かって駆け出す。
「あ、ちょっ!? むぅ〜。逃げたな〜!」
「へぇ……西松くんも、妹、居るんだ」
背中で二人の声を聞き流しながら、俺は生徒会室を出て行った。
……よくよく考えたら、これから数時間、九奥の近くで過ごすんだよな。
俺が『明希』だって、死んでもバレないようにしないと。と言うか、バレたら死ぬ。
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