俺が旦那で姉が嫁?(んなわけあるか!)
「ただいま〜」
バイトを終えた俺は、いつも通り控えめな声で帰宅を知らせながら玄関のドアを開ける。
今日は休み明けで体の方はそこまで疲れていないが、学校で色々あったせいか、気疲れで頭が重い。
……起こさないようコッソリ夏鈴の寝顔でも見て癒されるか。
「おかえり、アキくん。ご飯にする? お風呂にする? それとも」
「ごめん美冬姉さん。今そういうのいいから」
「え〜? ノリ悪いなぁ〜」
「そのボケにノリが良い方が問題だろ……」
何が悲しくて姉と新婚プレイせにゃならんのだ。
「なんだか、いつもより疲れてる? じゃあ、ご飯の前にマッサージを」
「それはもういいからっ!!」
思い出させないでお願い! 気疲れ通り越して失神しちゃうから!
「あら、そう?」
「あ、ああ、大丈夫。体は何ともないから。少し気疲れしただけだよ」
「気疲れ? 変わったお客さんでも来たの?」
「うーん……まあ、あながち間違いじゃないけど」
九奥は一応、バイト先の客だしな。
もっとも、変わったお客さんと言うより、困ったお嬢様、って感じだけど。
「じゃあ、よく寝れるようにご飯の後はハーブティー淹れてあげる」
「え? いいよ、いつも通りコーヒーで。どうせ風呂入ったら勉強するし」
「だ〜め」
「っ!?」
突然視界が真っ暗になり、顔が妙に柔らかい感触で一杯にってうおおおおおおおおおおおおっ!?
「ひょっ!? ひふゆへぇひゃんっ!?(訳:ちょっ!? 美冬姉さんっ!?)」
そう、俺は美冬姉さんに頭を抱きしめられていた。
つまり、美冬姉さんの豊かなそれに、思いっきり顔を埋めていた。
「今日はご飯食べてお風呂入ったら、すぐ寝なさい。わかった?」
「ひ、ひや、へも……(訳:い、いや、でも……)」
「わ・かっ・た?」
「わ、わはっは! わはっははやははひへふへっ!?(訳:わ、分かった! 分かったから離してくれっ!?)」
「はい。良い子」
「はぁっ、はぁっ、はぁ……」
し、死ぬかと思った。肉体的にも、社会的にも。
「じゃあ、すぐ用意するから手洗ってらっしゃい」
「りょ、了解」
な、まあ、なんやかんやで心配してくれてるんだよな……。
よし。グダグダ悩むのはやめだ。第一、他人のことで悩んで自分が心配されてるんじゃ本末転倒。明日、きちんと九奥に話を聞いてみよう。
「あ、そうだ。アキくん、洗面所行くついでにバスタオル二枚用意しておいてくれない?」
「え? ああ、美冬姉さんまだ風呂入ってなかったのか? なら飯は自分で温めるから、先に入ってこいよ」
「うんう、もう入ったよ?」
「? じゃあ春香か?」
「違う違う。そうじゃなくて」
「じゃあ何でだよ? まさかこんな時間まで夏鈴が風呂入ってないわけないし」
俺が首を何度も傾げていると、美冬姉さんはどこかイタズラっぽい微笑みで、パチンとウィンクをしてこう言った。
「背中、流してあげるから♪」
「良い加減にしろぉっ!」
もうマジで、勘弁してください……。
今話もお読み頂き、ありがとうございます。




