揺れる、電車の中にて。
「アッキー、どう思う?」
「は? 何が?」
生徒会室を後にした俺と花邑は、池袋に向かう電車に揺られていた。。
因みに、今の俺は普通に制服。花邑を連れているので、恐らく怪しまれることも無いからだ。
……デ、デートとか思われてないよな? べ、別に意識してるわけじゃないんだからな!
「アッキー?」
「へっ!? な、何の話だっけ?」
「だから、九奥さん。ちょっと様子おかしなかった? それに、生徒会室も」
「ああ……確かにな」
言われて、思い返してみる。
物が散乱し、足の踏み場も怪しい生徒会室。そして、そこに一人で居た九奥カンナ。
一人二人くらいなら用事で席を外していてもおかしく無いが、会長以外の全員が居ないなんて事あるのか?
それに、話していた時は俺もテンパってて気が回らなかったが、今思えば、九奥はどことなく元気が無かった、ような気もする。
「もしかして九奥さん、あんま生徒会で上手くいってないんかな?」
「上手くって、生徒会長は選挙で選ばれるんだろ? だったら、普通は慕われてるもんなんじゃないのか?」
「それはそうやけど。ほら、選挙の時、もう一人立候補してた子おったやろ? 黒髪でメガネの、いかにも真面目そう、って感じの」
「え?」
そんな奴いたっけ? てか、選挙っていつやってたっけ?
「アッキー……学校の事に興味無さすぎやろ」
「な、何かすいません……」
「はぁ……まあええわ。そんでな? その子は一年の頃から生徒会やってたらしいねんけど、九奥さんは一年の時は留学してて、二年から編入していきなり生徒会長に立候補したんよ」
「ふむ、ナルホド。それで他の役員からはやっかまれているかも、と。でも、それならそもそも、どうしてその対立候補の子が当選しなかったんだ? 一年の時からの経験もあるんだし、本人もそこをアピールしたんじゃないか?」
「それは……まあほら、アッキー程じゃ無いけど、他の子達もそこまで生徒会選挙って興味無いと思うねんな?」
「まあ、そうだろうな。中学の時もそんな感じだった覚えがあるし、それこそ、生徒会になろうってくらい意欲があって真面目な奴くらいしか、関心は無いんじゃないか?」
「うん。正直、ウチもそうやし。せやから、選挙の時も多分、みんな適当に投票したっていうかなぁ……その、“分かり易い方”に投票したと思うねん」
「分かり易いって……ああ」
そういうことか。
「九奥さん、すっごい美人さんやし、普通にしてても派手やろ? 言っちゃあなんやけど、もう一人の子はその……ちょっと大人しい感じやったから」
「ああうん。もう大体分かったから良いよ」
多分、花邑も深く考えず九奥に投票したのだろう。
そのせいで、という訳でもないが、結果的に九奥を苦しめる一因になってしまったと、少なからず罪悪感を抱いているのかもしれない。
そんなこと言ったら、俺の方がよっぽど無責任なんだが。どちらに投票したか記憶には無いが、記憶に無いということは多分、いい加減に投票したのだと思う。
「なぁアッキー。九奥さん、もしかして今、一人で生徒会の仕事してるんやない?」
「流石にそれは無いだろ……。幾ら何でもそんな事になってたら、先生たちだって放っとかないだろうし」
「どうやろなぁ……部活の事もそうやけど、うちの高校ってあんまり学校行事とかにも力入れて無いから、割と生徒に任されてる部分多いみたいやし。それに、九奥さん留学してただけあって、めちゃめちゃ頭良いらしいから。無理すれば一人でも出来ちゃうんやない?」
「無理すれば……ね」
そう言えば、『レイブンヴィル』に来てた時も少しだけ、ほんの少しだけだが、暗い顔で愚痴を零していた気がする。
気丈に振舞っている理由は、単に心構えだけの問題じゃないのかもな。
「なんか、可哀想やな」
「は? おい、それは九奥に失礼だろ」
「へ?」
花邑に悪意は無いと分かっているが、彼女の言葉に俺は反射的に反論していた。
「もし花邑の言う通り、九奥が一人で生徒会の仕事をしているんだとしたら、そうまでして、“生徒会長であろうとしてる”ってことだろ? そんな奴を『可哀想』なんて言うのは、なんか、違う気がする」
「っ! ……そうかもやけど、せやったら、やっぱり他の役員の子らが悪いんちゃう? いくら人気投票みたいな形になったとはいえ、九奥さんはちゃんと選挙で選ばれた会長やのに、逆恨みで生徒会ボイコットとか、酷すぎるわ」
「いや、まだそうだと決まったわけじゃないだろ? 第一、その役員の連中だって生徒会に自分から入ろうと思うくらいなんだから真面目な奴らだろうし。もし本当にボイコットしてたとしても、そう長続きはしないって」
「それは、そうかもやけどさぁ……」
とは言ったものの、あの生徒会室の状況を見るに、花邑の予想は当たってそうだと、俺も考えてしまう。
しかも、もし本当に九奥が一人で生徒会の仕事を完璧にこなしているとしたら、役員の連中は余計ムキになって嫌がらせをエスカレートさせる可能性が高い。
何せ、実績の伴わない人気だけで選ばれたと思っていた生徒会長に嫌がらせをした結果、逆にその優秀さを証明し、実績を積ませることになったのだから。
「ま、まあ、そんなに気になるならさ。明日もう一度、生徒会室に行って本人に事情を聞いてみればいいだろ? どの道、同好会がきちんと受理されたのか確認するんだし」
「あ……うん。そうやね」
……あとは、お嬢様の気に入りそうなコーヒー豆でも補充しときますかね。
今話もお読み頂き、ありがとうございます。




