↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
23/41

距離感て大事?


「……ッキー? アッキーってば!」

「へ? ああ、花邑。どうした?」

「どうしたって、アッキーいつまで座ってるつもりなん? ホームルームもう終わったで?」

「え? あ、ああ」


 花邑に声をかけられ、俺は自分が呆けていたことにようやく気が付く。


「授業中もずっと上の空やったし、何かあったん?」

「いや、そんな大したことじゃない。悪いな、また余計な気を使わせたみたいで」

「そんなん、全然エエけど……」

「それじゃあ俺、バイトの時間まで図書館で勉強して行くからこれで。また明日な」

「は? ちょ、ちょっと待ってぇや!? アッキーもう忘れたん?」

「ん? 何を?」

「もう〜、言うたやん。同好会作るって」

「あ……そうだったな」


 こっちの問題もあるんだった……て言っても、今朝の失態についてあれこれ考えるよりはいくらか気楽か。現実逃避なんだよなぁ……。


「取り敢えず、担任の先生に申し込み用紙は貰っといたから、あとは“生徒会室”に提出に行くだけやし、付き合ってよ」

「ぶっ!? せ、生徒会!?」


 訂正、現実逃避どころか現実と直面していた。

 何でよりにもよって? 神様俺の事嫌いなの? 俺何かした?


「どしたん? 生徒会に何かあんの?」

「い、いや、何かって言うか」


 幾ら何でもまだ心の準備が出来て無いって言うか。


「……それ、先生に提出するんじゃダメなのか?」

「さっき先生に聞いたけど、部活動とかの管理は基本的に生徒会主体でやってて、先生たちは監督してるだけ、なんやって。まあうちの学校、部活とか同好会少ないし、生徒に任せても問題無いんちゃう?」

「な、なるほど」


 俺には問題大有りなんだよ。


「えっと、それやっぱ花邑が行ってきてくれないか? ちょっと俺、このあと用事が」

「へ? でもさっき図書館行くって言ってたやん?」

「うっ!? い、いや、それは、そのぉ……」


 しまった。見事に墓穴を掘ったというか、因果応報というか、自業自得って、これ全部ほとんど意味一緒ですね。すいませんまた現実逃避してました。し損ねましたけど。


「むぅ〜。アッキー、また何か隠してるやろ?」

「は、はひっ!? な、何をおっしゃっているのですか? ちょっと私の方では分かりかねますというかお答えできませんと言いますか何というか」

「分かりやすっ!? アッキー分かりやすっ! それもう嘘が下手とかそういうレベルですらないで!」

「うぐっ」


 な、なんだよぅ。仕方ないでしょう? 嘘つきはドロボウの始まりって小学生のとき習ったじゃん? でも俺たちにそれを教えてた大人って嘘ばっか吐いてるんだよなぁ。本当か嘘か知らないけど教師の不倫率って高いらしいし。嘘つきだから恋ドロボウになっちゃったぜ☆的な? いやそれ全然笑えねーよ。


「アッキー?」

「うっ!?」


 花邑は確かに笑顔なのだが、全然目が笑っていない。

 その上、座っている俺の顔を覗き込むように屈んでいるせいで、ブラウスの胸元から見えてはいけないものが見えそうになったり良い匂いがしたり吐息がかかったりでもうマジで勘弁してくださいお願いします!?


「わ、分かった! 話す! 話すからちょっと離れてくれ!?」

「……ふっ。アッキー、ちょろ」

「やかましいわ!」


 俺が堕ちたと見るや、花邑はスッと離れた。若干の名残惜しさを覚えた自分に腹が立つ。

 ち、違うんですよ? 別にもうちょっと良い匂いを嗅いでいたかったとか、もうちょっとで見えそうだったとかそういうことは全然無いですから! 信じてください! 俺は無実だ! ただ思春期なだけなんだ! 思春期って言葉、超便利だなぁ。


「で、何で生徒会室に行きたくないん?」

「………はぁ。生徒会に、九奥って子がいるだろ?」

「ああ、あの超絶美人の生徒会長さん?」


 やはり九奥カンナは有名らしく、名前を出しただけで花邑はすぐにピンときたようだ。

 もしかして、知らなかったの俺だけ?


「で、あの子がどしたん?」

「あ、ああ。えっと、これが結構ややこしくてな。簡潔に言うと、よく分からんが俺はあの子に目をつけられてるらしく、その上あの子はバイト先のお客さんでもあるんだ」

「えっと、ゴメン。何言ってるか全然わからへん」

「ですよねー」


 俺も分からん。寧ろ俺が一番混乱しているとすら言える。ホント、何でこんな事に?


「ええとだな、つまり、あの子は学校での『俺』と執事喫茶での『明希』を両方知ってるんだけど、同一人物だってことは知らない、てか気付いてないんだ」

「そういえばアッキー、バイトしてる時は見た目も変えてるんやっけ?」

「そういうこと。けど、今朝ちょっとトラブルがあって、普段はメガネと前髪で隠してる部分まで見られちゃって……」

「なるほど。それでバレたかもしれんから、会いたくないと」

「あ、ああ」

「う〜ん……よし! じゃあ、やっぱ一緒に行こか!」

「は?」


 あ、あれ〜? なんでその結論に? やっぱりちょっとアホなの?


「ほら! いつまで座ってんの? はよ行くで!」

「わっ!? お、おい! 俺はまだ行くとはってうおおおおおおおっ!?」


 説明しよう。俺の腕には今、未知の非常に柔らかい感触が押し付けられている。

 具体的には、俺の腕にしがみついてグイグイ引っ張る花邑のオッって説明できるかぁ!?

 何回言わせるのぉ!? 距離感! 距離感大事にしてぇっ! ていうかもうこれゼロ距離だから! 


 ………で、でも、悪くない。



今話もお読みいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。