お嬢様は待ち伏せを?
月曜日。俺は休み明けで万全の体調と、鬱気味な精神のギャップに苦しみながら、我が学び舎、『雛祭高校』にたどり着く。
はぁぁ〜、やっぱ同好会とか、面倒だなぁ………と、俺は下を向いて歩いていたのだが。
「っ……!?」
唐突に、前方からこちらを射抜くような鋭い視線を感じた。
恐る恐る顔を上げてみれば、校門の前で“見覚えのある少女”が、仁王立ちで俺の事を睨み据えている。いや回りくどい表現で自分を騙そうとしたけど無理ですね、ええ。
「よくもまあ、のこのこと顔を出せたものね、西松秋宏!」
「はぁぁ〜……そりゃ自分の学校だからなぁ」
思わずクソデカ溜息が漏れ出た。もう一個あったわ、面倒事。それもより深刻な。
見覚えのある少女、もとい『九奥カンナ』は、開口一番ビシッと俺を指差し、当て馬感満載の脇役のようなセリフを吐いた。こういう子、夏鈴が見てるアニメにも出てたなぁ。
「うっ!? そ、そういう事を言ってるんじゃないわ! 私の前によくも顔を出せたわね、って言ったの!」
「校門の前で待ち伏せしてる奴をどうやって回避しろと。なに? 俺のこと退学にしたいの?」
「へ? い、いや、そこまでは……って違ぁーうっ! そうじゃなくて、えっと、この前はよくもすっぽかしてくれたわね!?」
「ですよねー」
分かってました、ええ。でも俺にも言い分はあるんですよ?
「どうして生徒会室に来なかったのよ!?」
「いや、どうしても何も。そっちが一方的に呼びつけただけで、俺は行くとは一言も言ってないだろ?」
「え……? あれ? そうだったかしら? んん〜?」
俺の適当な反論に、九奥カンナは顎に手を当てて考え込み始める。う〜ん、もしかしなくてもやっぱりこの子、天然さんですね? 知ってるけど。
「それじゃ、俺はこれで」
「あ、ちょ、待ちなさいよ!?」
「待たない」
「待ちなさいって! うあっ!?」
「わっ、ちょっ!?」
無理やり振り切って校舎に向かおうとするが、横を通り過ぎようとしたその時、後ろから思い切り九奥に袖を引っ張られた。
だが、体重差のせいで彼女の方が前につんのめるような形になり、俺は思わず抱きかかえるようにして受け止めてしまう。
その拍子にメガネが地面に落ちたが、幸い俺も彼女も踏みつけるようなことは無かった。
「ご、ごめんなさい!? て、あれ? あなた……」
「っ!?」
だがその瞬間、九奥カンナはそのキラキラしたコバルトブルーの瞳で、下から俺の顔を覗き込んだ。
そう、瞳の色が分かるほどの距離で、前髪とメガネに隠されていない俺の素顔を、まじまじと。
「い、いいから、早く離れてくれ」
「あっ、うん……」
俺は急いで顔を背け、誤魔化すように距離をとったが、果たして間に合っただろか?
だが、今は取り敢えず逃げるしかない。
「遅刻したくないから、もう行く」
「あ、ちょっ!?」
今度こそ、俺は彼女を振り切って教室へと向かった。
………やばいなこれ、マジで。
今話もお読み頂き、ありがとうございました。




