オムライス。
「結局、出て行くどころかがっつり堪能しましたね」
注文した料理やドリンクを粗方片付け終わった頃には、店内はもう俺達だけになっていた。
定番らしい「萌え萌えじゃんけん」などのゲームでは俺がテンパって赤面したり。
姫川さんが数人のメイドさんに捕まって揉みくちゃにされ、人形の様に瞳の色を失ったり。
椎名さんがいつも以上の仏頂面でメイドさんと写真を撮ったり。
桐生さんがいつの間にか逆にメイドさんを接客してメロメロにしてたり。
……と、最早しっちゃかめっちゃかだったが、皆それなりに楽しんでいたように思う。
因みに蓮花さんはと言うと、花邑母のマンツーマン接客、という名の監視のもと、冷や汗を垂らしながらヤケクソ気味にビールを煽っていた。ざまぁみろ。
「お、お待たせしました! ご、ご主人様!」
「え?まだ何か残って……って、花邑? 何だよ? また改まって」
後ろから聞こえた恥ずかしそうな声に振り向くと、花邑がオムライスを乗せた皿を持って立っていた。
「オ、オカンがアッキーに持って行けって言うから! そ、その、うちが迷惑かけたお詫びも兼ねてって……」
「お詫びって……さっきも言ったけど、別に花邑は何も悪くないだろ? どっちかと言えば俺たちの方が」
「え、エエから! はい! ご主人様、メッセージは何とお書きしましょうか!?」
「えぇ……」
花邑はテーブルの上にオムライスを強引に乗せ、ケチャップを持ったまま前のめりに身構えている。
に、逃げ場が無い……ここは無難ににハートとか? いやいやダメだ。後で思い出して死にたくなる絵しか浮かばない。
これからもよろしく、とか? いや、う〜ん……この状況だと、常連になる気満々みたいでなんか嫌だな……。料理も美味いし、スタッフの皆さんのプロ意識も高くて良い店だと思うけど、時間的にも俺の懐具合的にも、通うのは難しい。
「じゃ、じゃあ……“お疲れ様”、とか?」
「は……? ……ぷっ!? あはははははっ!? 何やのそれ!? メイド喫茶でオムライス頼んで、お、お疲れ様って、ぷっくくくっ」
「お、俺が頼んだわけじゃないし!? 他に思い浮かばなかったんだよ!」
「あははっ……はぁ〜あ。何かもう、テンパってたうちがアホみたいやん。まあエエか。アッキーっぽい気ぃするし」
「疲れてるのが俺のアイデンティティなのか……」
「だって、アッキー教室ではいっつも眠そうやし、ため息ばっか吐いてるし?」
「うっ!? そ、そんなに分かり易いか?」
「うん。多分それで皆んな気ぃ使って話しかけ辛いんちゃう? まあでも、今日はなんやかんや楽しそうやったし、ちょっとサービスしたるわ。ご主人様♪」
そう言うと花邑は、ケチャップを手にウキウキと文字を書き始めた。
そして、明らかに俺が言った文言よりも長文が書き上げられたオムライスを見て、俺が取った反応はといえば。
「うっげっ」
「何やその反応!? もっと嬉しそうにしいや!」
「いや、だってなぁ」
そう、そこにはケチャップ文字で、こう書かれていたのだ。
『お疲れ様ですご主人様♡ また来てね♪』
「むぅ。せっかくウチが頑張って書いたのにぃ〜」
「わ、悪かったよ。頂きます!」
花邑の機嫌が悪くなる前に、急いでオムライスをかきこむ。……んんっ?
「う、美味い!」
「ホンマ!? 良かったぁ! ふふん。実はこれ、作ったのもウチなんやで?」
「マジでか!?」
い、意外だ。だが言われてみれば、花邑はどこか所帯染みた雰囲気があるし(良い意味でね?)、案外家事も得意なのかもしれない。
……花邑にしても、九奥にしても、こうして少しの時間接しただけで、第一印象とは色々と違う面が見えてきて、不思議もんだ。
もしかしたら俺に人を見る目が無いだけかもしれないが。むしろその線が濃厚。
今話もお読み頂き、ありがとうございました。




