自殺
リスカ表現あります。
瑞基は東京のアパートの隆一朗の部屋に居た。
車椅子に座り、ぼんやりとベッドを、見ている。
喪服姿の魁威は隆一朗の部屋のドアを閉めると綾子に向かって首を振った。
綾子は孝久に支えられてやっと立っていた。
瑞基はニコルに連れられ隆一朗の遺体と共に帰国した。
瑞基の精神状態は常軌を逸していた。
隆一朗の遺体をお棺に納める際、瑞基は一緒に入ると言って泣き喚きお棺にしがみついて離れようとしなかった。
魁威と樹良、麗畏の三人がかりで、やっと瑞基をお棺から引き離した。
引き離した後も瑞基の興奮状態は治まらず、泣き喚き続けるので仕方無く瑞基は葬儀の間、隆一朗の部屋で魁威に付き添われた。
落ち着いてからも、魁威が何を言おうと瑞基は反応せず、ぼんやりと隆一朗のベッドを見ているだけだった。
葬儀の後、隆一朗の遺骨と遺影は真聖が大事に抱えて帰って行った。
孝久が言った。
「一度、神経科に診せた方がいいかも知れないな」
綾子は泣き崩れた。
「どうして、こんな事に………………」
魁威が言った。
「とにかく、暫くは目を離さない方がいいですよ
隆一朗にとって瑞基は総てだった
そして瑞基にとっても隆一朗は総てだったんです」
綾子は突かれたように叫んだ。
「でも、あの二人は兄弟だったのよ!
兄弟なのにどうして!? 」
魁威は眉をしかめて言った。
「でも、二人はそれを知らずに巡り逢ってしまったんです
そしてお互いをとても必要としていたんです
本当にとても…………………
兄弟と知っても、どうする事もできず、追い詰められて逃避行しなければならないほど」
魁威の目から涙が零れた。
『水くさいぞ、隆一朗
どうして、こうなる前に言ってくれなかったんだ』
綾子は暫く瑞基とアパートに留まり瑞基の様子を見る事になった。
何を言っても瑞基はこのアパートを離れる事を受け入れなかったからだ。
瑞基は一日の殆んどを隆一朗の部屋で過ごした。
綾子は時々、隆一朗のベッドに伏しては泣いている瑞基を見掛けた。
食材が底を尽いたので、綾子は仕方無く近くのスーパーに買い物に出掛けた。
帰ると家中、苦いコロンの香りが鼻を突いた。
廊下に瑞基の車椅子が置いてあったので、瑞基は風呂に入っているようだった。
綾子はオーバーを脱いで夕食の支度に取り掛かった。
いつまでも瑞基が風呂から上がって来ないので心配になり様子を見に行った。
ドアをノックして声を掛けたが返事が無い。
「瑞基? 」
そろそろとドアを開くと、降り注ぐシャワーの下で瑞基は白いシャツとズボン姿で脚を伸ばして座り、壁に凭れ眠るように首を傾げ手首から血を流していた。
反対の手には隆一朗の手に突き刺さっていたナイフが握られている。
「瑞基! 」
慌てて綾子は瑞基に飛び付き頬を軽く叩いた。
だが瑞基は反応しなかった。
「瑞基ーーーーーっ!! 」
綾子は瑞基を抱き締めて叫んだ。
骨折した時に入院していた病院の集中治療室で瑞基は目が覚めた。
「看護婦さん! 」
傍で見守っていた綾子が叫んだ。
看護婦が入って来て脈と血圧を計り医師を呼びに行った。
「瑞基、どうしてあんな莫迦なことしたの」
綾子は責める様に言った。
瑞基は顔を背けた。
背けた先に輸血の袋が見えた。
「こんなの無駄なのに」
医師が来ると瑞基の脈を診たり、目にライトを当てたり、経過を記した書類を見たりして言った。
「戻ってくれて良かった」
医師はほっとした笑顔を見せた。
綾子は廊下に呼ばれた。
医師は言った。
「繰り返す可能性が在ります
心療内科にかかる事をお勧めします」
綾子は落ち着き無く手を擦り合わせた。
瑞基は一週間ほどで退院した。
アパートに帰ると瑞基は隆一朗の部屋に入りドアを締めて綾子を遮断した。
入院中に心療内科にかかったが、瑞基は一言も話さず担当医師もお手上げだった。
読んで下さり有り難うございます。
なんの因果か瑞基は長年隆一朗を苦しめていた彼女と同じ死に方をしたんですね。
このシーンも泣きました。
瑞基はどれほど隆一朗が恋しいだろうと思うと、もう涙が止まらなくて。
泣いても笑っても後二話で終わります。
第三章が明日終わります。
その後、終章で完結です。
長い間、ご愛読戴きましたが、後二話です。
最後までお付き合い戴きましたら嬉しいです。
夜寝るように努力しているのですが、長い間の夜更かし癖はそう簡単には治らなくて、何度も目を覚ましてしまいます。
定着するには時間がかかりそうです。
昨日は私の誕生日でピザをとってみんなで食べました。
何年振りかで、凄くいい誕生日を迎えました。




