↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/74

逃避

 読んで戴けたら嬉しいです。

 隆一朗は病院の非常階段に腰掛け、肘を膝に掛け、指を組んだまま俯き、時が経つのも忘れて考え込んでいた。


 瑞基は、面会時間が終わり綾子がホテルに帰った後、実の親だと思っていた両親がそうでは無いと云う事実、愛する隆一朗が実の兄であると云う事実に打ちのめされていた。


 消灯時間が過ぎ、病室は暗闇に包まれた。


 入り口から廊下の明かりが無機質に差し込んでいる。


 瑞基は眠ることもできず上半身で寝返りを繰り返していた。


 入り口の明かりが一瞬陰って何かが瑞基に覆い被さり口唇に触れた。


 瑞基には直ぐに解った。


 隆一朗の口唇だった。


 隆一朗は優しく瑞基に口付けていた。


『隆一朗……………』


 瑞基は口付けている間の一瞬だけ現実を忘れた。


 口唇を離すと瑞基は隆一朗にしがみついた。


 瑞基は泣いていた。


「オレ、これから何を信じて生きればいいのか解らないんだ」


 隆一朗は優しく瑞基を抱き締めた。


「瑞基、何も変わらないよ

 何も変わってない

 愛してる」


「でも、オレたち兄弟なんだよ」


「でも、ボクはキミを愛することを止める事はできないよ

 今更、弟として見るなんてできない」


「オレもそうだよ」


「じゃあ、何も変わってないよ」


「変だよ

 一番、そうゆうことに拘(こだわ)るのが隆一朗なのに」


「拘っても、どうしようも無い事もあるよ

 この気持ちは、今更変えろと言われても変えられない

 それはキミの御両親も同じだと思うよ」


「オレだけ、あの家で他人だったんだ」


「それは違うと思う

 キミが知ったと云うだけで、あの家族はキミの家族である事は何も変わってない

 キミが御両親とお姉さんを愛している事も、御両親とお姉さんがキミを愛している事も何も変わってないよ」


「隆一朗…………」


 瑞基は隆一朗の胸に顔を押し付けた。


「キミを拐(さら)っていい? 」


 瑞基は隆一朗の意外な言葉に驚いて顔をあげた。


「拐うって? 」


「とにかく、早く怪我を治してここを退院しよう

 誰もボクたちが兄弟だって知らない処で一緒に暮らすんだ」


「隆一朗から、そんな言葉が出るなんて信じられないよ

 だって、絶対隆一朗はまたオレの前からいなくなるって思ってたから」


「ボクの為に、何もかも捨てられる? 」


「いつも言ってるよ

 オレは隆一朗以外、何も要らない」


「それを聞いて安心したよ」


 隆一朗はそっと瑞基の口唇に指先で触れた。


「愛してるよ、瑞基」


 隆一朗は瑞基に、甘くとろけるような口付けをした。




 隆一朗はベッドに入って瑞基の肩を抱いて話していた。


 瑞基が言った。


「そう言えば、高校で変な噂が立った時、母さんが学校に呼ばれたんだ

 担任に、オレが知り合いの処から通ってるって言った時、母さんが毅然とした態度で絶対的に信頼できる人に預けてるって言ったんだよね


 ちょっと、引っ掛かってたんだ

 一度しか逢ってない隆一朗をどうして、そこまで信頼できるって言い切ったのか

 兄貴なんだもん、そりゃあ信頼できるよね」


 瑞基は哀しげに笑った。


「隆一朗、お母さんのことは? 」


「父はボクの母について話すことは一切無くて、ボクはボクで訊くことができなかった

 聖流(さとる)から、優しい人だったとは聞いている

 でも、ボクらが眠った後によく泣いていたそうだよ」


「母さんが言うには、オレ等の母親って云う人は愛されたいって欲求に素直な人だったって

 でも、どうなのかな

 新しい愛を見つける度に、子供捨てられるって、ちょっと理解できないよ」


「そうだね」


「今は、何処でどうしているのか解らないらしい

 オレを母さんたちに押し付けてそのまま、所在を断ったって言うから

 オレ、最悪だよ

 親父が誰なのかさえ解らないんだから」


「瑞基…………………」


 隆一朗は毛布の中の瑞基の手を握った。


「愛されたいって欲求を満たしてくれる人に出逢ったのかな」


「ボク達に、もしかしたら他にも父親の異(ちが)う兄弟がいるかもね」


「うへえ、考えたくないよ」


 瑞基は隆一朗の顔を見た。


「ねえ、拐うって何処行くの? 」


「キミが退院したらパスポート発行して貰う手続きしようって思ってる」


「パスポート?

 ってことは海外?

 大丈夫なの?

 この間の事故で散財したよね」


「大丈夫、保険会社の人が上手く交渉してくれたから

 警察には随分怒られたけど、何考えてるんだって」


 隆一朗は笑った。


 瑞基は隆一朗の頭に頭を寄せた。


「ごめん、新車がたった一年で廃車になっちゃった」


「いいよ、キミが無事なら」


 隆一朗は笑って瑞基を見た。


「もう、オレ心配しなくていいんだ

 隆一朗がオレの前から居なくなるって」


 隆一朗は黙って目を閉じ、瑞基の頭に頬ずりした。






「兄弟でしかも同性と愛し合うなんて、まともな人間のする事じゃないでしょ

 帰って来なさい、こっちの大学通うの

 とにかく、隆一朗さんとは別れなさい」


 綾子はリンゴの皮を剥きながら言った。


 瑞基は綾子の顔を見詰めた。


 とても、話を聞き入れて貰えそうもない。


「ここを退院するまで待ってよ

 それから、冷静になって考えるから」


「お父さんのお世話があるから、私は明日帰るけど

 隆一朗さんがあんないい加減な人だとは思わなかった

 そんな如何(いかが)わしい事ができるなんてね

 人は見かけに依らないのね」


「母さん、隆一朗をそんな風に悪く言わないでよ

 仮にもオレの、血を分けた兄貴だよ」


 綾子は黙った。






 退院すると隆一朗と瑞基はその足で、事前に揃えておいた書類を持ってパスポート申請の手続きをした。


 二人は逃避する為の準備を着々と進めた。






 読んで戴き有り難うございます。

 

 お酒にも色々症状がありますね。

 笑い上戸とか泣き上戸とか。

 絡み酒なんて迷惑なのもあります。

 うちの旦那のアホな話を一つ。

 酔っぱらって某フライドチキンのカーネルサンダースの人形に絡んだ挙げ句、喧嘩を売って頭に来たうちの旦那、大きな川にカーネルサンダースを沈めたそうです。

 今も何処かの川の底にカーネルサンダースが沈んでいる事でしょう。

 うちの旦那、昔訳解らなくなるまで飲んである朝目を覚ますと家の中に等身大のケロヨンが居たそうです。

 処理に困ったうちの旦那、ケロヨンを川に沈めたそうです。

 今も何処かの川の底にケロヨンが沈んでいる事でしょう。

 そして極めつけが訳解らなくなるまで飲んで、朝目を覚ますと知らない女性が居たそうで。

 化粧落とした彼女を見て、この人誰❔となったそうです。

 そして、その後その女性と同棲始めたそうです。

 何やってんだか。笑

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 何故だろう? 兄妹、姉弟では血が近すぎて障害のある子供が産まれる確率が高くなるから駄目だと思うのですが、♂&♂なら子供も生まれないので良いんじゃないのかなって思います。 そもそも兄弟なら仲良…
[一言] お母さんがあの時、認めたのはそういう理由で。 いろいろ繋がってきましたね。 私の後輩にも、普段は真面目で、おとなしいのに、酒が入ると、工事現場の赤色灯とか薬局のウサギを持ち帰ったのがいまし…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。